☆AI、バイオテクノロジー、量子コンピュータ、新素材は、私たちの常識をどう壊すか? ダボス会議に集う世界的エリートが未来を予見。

本書は、第4次産業革命の中心となるだろう量子コンピュータ、AIとロボット工学、IoT、ブロックチェーン、先進材料、3Dプリンター、バイオテクノロジー、ニューロテクノロジー、仮想現実と拡張現実、宇宙開発技術等の個々の具体的技術に詳しく触れながら、これらの技術が既存の制度を破壊し、社会を崩壊させ、無秩序状態を生み出す可能性を強く指摘している。
それは、これらの新技術を統べる指針や基準が、まだ存在しないからだ。
では、このような新たなテクノロジーを社会共通の利益となるように導くには、何をすべきなのだろう?

これに対して、著者は、次のように本書の最後にまとめている。
『第4次産業革命のガバナンス課題を解決するには、政府、企業、個人が新しい技術の開発と配備について戦略的に正しい決断を下すことが求められる。と同時に、社会的価値を優先する立場を取り、協同して行動するメカニズムをつくる能力も求められる。個人と組織は連携し、複数のステークホルダーと多国籍企業の視点を考慮に入れ、国家は公式あるいは非公式な国際協定を精力的に結んでいく必要がある。こうした責務を果たすのは容易ではない。挫折もあるだろう。しかし責任を放棄するわけにはいかない。』

AIやブロックチェーン等が既存の社会システムを大変革させる要因であることはよく述べられているが、今まで3Dプリンターがもたらす変革については、私もあまり真剣に考察したことがなかった。が、本書ではその影響も的確に記載されていた。
『3Dプリンターにより、少量を低コストで、消費者に近いところで製造できるため、配送時間が短くなり輸送費が安くなる。第1次産業革命で蒸気動力が物資の輸送費を削減して以来、製造と消費の距離は遠ざかるばかりだったが、それがひっくり返るかもしれない。近年のコンテナ輸送の進歩と技術的な協調により、労働力が豊富な開発途上国でのオフショア生産が進んで、距離は離れる傾向にあった。3Dプリンターの成長がこの調子で続けば、従来の生産システム―製造、海運、ロジスティクス、運輸、インフラ、建設、小売、航空会社―をまるごと破壊してしまう可能性がある。そうなれば先進国と開発途上国の政府、経済、労働市場は、はかりしれない影響を受けるだろう。
人件費の安さを武器に経済発展を目指す低所得国にとっては工業化のモデルが危うくなる。想定できる最大のリスクは、サプライチェーンが消滅してインターネット接続サービス業者が輸送会社と競うようになる事態だ。いずれにしろ3Dプリンターの発達は大きな課題をつきつけ、産業界と政府は細心の注意を払う必要がある。』
3Dプリンターの発達は、先進国と発展途上国との間の格差を固定化させてしまう可能性もあると指摘している。


ここまでの産業革命の変遷。
●第1次産業革命
18~19世紀にイギリスで起こった産業革命。これにより、近代資本主義経済が確立される基盤が作られた。第1次産業革命は、蒸気機関などによる技術革新が特徴だ。それまで手工業中心だったものづくりが機械化され、工場制生産へと移行した。これにより生産性が飛躍的に向上し、産業のあり方が大きく変化することになった。
●第2次産業革命
19世紀後半~20世紀初頭に起こった産業革命。主に、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスで起こり、エネルギーにおける技術革新が特徴。電力、化学、石油など、さまざまなエネルギーを利用できるようになったことで、大量生産が可能となった。現代社会の基礎となる技術が確立された。
●第3次産業革命
1970年代初頭以降に起こった産業革命。電気工学、情報技術などの技術革新が特徴。コンピュータによる生産の自動化が可能となり、従来の産業構造が大きく変化した。
そして、
●第4次産業革命とは、2011年にドイツで提唱された政府主導の国家プロジェクト「インダストリー4.0」を日本語化したもの。

『今日、私たちが直面している幅広で数多の興味深い諸問題のなかで、最も努力を必要とし、また最も重要となるのは、新しい技術革命をどのように理解し、実現するかだ。この技術革命は、必然的に「人類文明の大変革」を伴うものとなる。私たちは、生活や仕事の仕方、さらには他者との関わり方を根本から変える大変革の入り口にいる。これは人類がこれまで経験したことのない、規模、範囲、複雑さの大変革となり、まさに「第四次産業革命」と呼ぶにふさわしい(中略)
第四次産業革命は、今世紀に入ってから始まり、デジタル革命の上に成り立っている。第四次産業革命を特徴づけるのは、これまでとは比較にならないほど偏在化しモバイル化したインターネット、小型化し強力になったセンサーの低価格化、AI、機械学習である(中略)。
だが、第四次産業革命は、相互接続されたスマートな機械やシステムのことだけに限定される話ではない。範囲ははるかに広い。いま遺伝子配列解析からナノテクノロジー、再生可能エネルギー、量子コンピュータに至る分野で新たなブレイクスルーの波が同時に起きている。第四次産業革命がこれまでの産業革命とは根本から異なるのは、これらのテクノロジーが融合し、物理的、デジタル、生物学的領域で相互作用が生じたことである。』
第3次産業革命との違いとは、
第4次産業革命と第3次産業革命はともにコンピュータが関わる点は共通している。しかし、その違いは、誰がコンピュータをコントロールするかだろう。第3次産業革命より前までは人間がコンピュータを制御していたが、第4次産業革命では、AIがコンピュータを制御することになる。
この背景には、コンピュータが自ら学習して判断できるようになったことと、ロボット技術が向上し、より複雑な作業ができるようになったことがある。人間ではなくAIが機械を自動制御することで、たとえば自動車の自動運転等が可能になる。
『すでにニューロテクノロジーとバイオテクノロジーの進歩は私たちに、人間であるとはなにかという問いをつきつけている。幸い、第四次産業革命は始まったばかりで、いまならまだ私たちが主導権をとることができる段階にある。最先端技術についての基準と規制は、いままさに生み出されようとしている(中略)
いま機会を逃してしまえば、そして新しい技術が人類全体を豊かにし、人間の尊厳を高め、環境を保護する方向に導くことに失敗すれば、現在の過酷な状況は悪化の一途をたどるかもしれない。システムの歪み、富の一極集中、不平等の拡大が正されることなく、あらゆる国で人権がないがしろにされるだろう。
第四次産業革命の重要性を正しく評価し、富や技術において特権的な立場の人々だけが恩恵をこうむることのないよう、すべての人々が利益を享受できる方向に進むためには、新しい考え方に切り替えるとともに、多様なテクノロジーが個人、コミュニティ、組織、政府に与える影響について十分に理解する必要がある。』

「第四次産業革命」を生き抜く  著者 クラウス・シュワブ

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YouTubeより

2015年という年は、宇宙飛行事業者にとっては記念すべき年だ。
その年の11月にブルーオリジン社が打ち上げたニューシェパードのブースター(第1段ロケット)が着陸に初めて成功し、翌12月にはスペースX社のファルコン9のブースターも着陸に初めて成功したからだ。
これらによって、宇宙ロケットのブースターの再利用つまり宇宙飛行にかかるコストの大幅削減の見通しが立った。
というのも、打ち上げのコストの70%はブースターで占められている。だから、このブースターの再利用ができれば、打ち上げにかかるコストは大幅に削減されるのだ。
しかし何よりも、このロケットの着陸の映像は衝撃的だった。
私も、打ち上げられたファルコン9が、地上に垂直に降り立った映像を見た時、凄いと驚いた。また何か、その映像には美しささえも感じた。

スペースX社とブルーオリジン社と言えば、米国の宇宙飛行事業を代表する民間企業であり、その企業を率いているのが、それぞれイーロン・マスクとジェフ・ベゾスという希代な経営者であることは、皆知っている。更に、宇宙飛行に関しては、その両者が、日夜、ライバルとして火星やまた月への宇宙飛行計画において、切磋琢磨して張り合っているのも、よく知られている話だ。

両社のスローガンは、かなり異なっている。
スペースX社は、『突き進め、限界を打ち破れ』。
それに対して、ブルーオリジン社は、『ゆっくりはスムーズ、スムーズは速い』。
これは、この両社を率いているイーロン・マスクとジェフ・ベゾスの性格をそのまま表わしているようだ。
著者は、この両社を「ウサギと亀」に例えている。スペースX社が「ウサギ」であり、ブルーオリジン社が「亀」である。実際、ブルーオリジン社のブースターには、打ち上げのたびに自社のマスコットでもある亀が描き入れられている。
だが、何よりも違うのは、両社の宇宙飛行事業の目標だろう。
スペースX社は、火星移住計画に代表されるように、人類の宇宙への移住を最終目標としている。それに対して、ブルーオリジン社は、あくまで地球は「居住と軽工業の地域」として保全しておき、宇宙は重工業やエネルギー資源の採掘の場所にするという目標なのである。
本書は、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスの他にも、バート・ルータン、リチャード・ブランソン、ポール・アレン等の人物に関しても、宇宙飛行事業へのそれぞれの野心や憧れやそれぞれの興味深い出来事等も描いている。宇宙飛行に関心がある者にとっては、楽しく読み進められる本だった。

クリスチャン・ダベンポート 著
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のんたれ より


久しぶりに、読み応えがあるAIに関する本だった。
学術的でもなく、文明論的でもない、経済的側面からのAIに関する論考だった。

最近のAIの進歩は、AIの「予測」技術の進歩と言ってもよい。
AIの予測コストが飛躍的に低下したことで、今まで以上に多くの分野で採用され、その結果として、更に日々新たにデータを獲得しながら、AIはその予測の精度を上げつつある。
また、予測のコストの低下は、「価値」のシフトも生み出している。
人間による予測の価値が下がる一方で、予測に基づく「判断」や「行動」の価値は上がっていく。
今はまだ、総合的な「判断」力において、またデータが十分に揃っていない時の「判断」力においては、人間の「判断」はAIの「判断」よりもかなり優位にあるという。
しかし、将来的には、この「判断」やそして「行動」というタスクにおいても、AIが人間に伍して働く世界またはAIが優越する世界が訪れないとは言えないかもしれない。

更に、本書は「トレードオフ」について着目している。
AIによるそれの影響をピラミッド型の五段階に分類している。
それは、1予測、2意思決定、3ツール、4戦略、5社会の五段階だ。

本文キーポイントより抜粋、
「予測は意思決定に欠かせない入力情報だ。経済学では、意思決定について理解するための枠組みが十分に発達している。まだ新しく理解が不十分な予測技術の進歩に込められた意味を理解するためには、経済学でかねてから採用されてきた意思決定理論と組み合わせればよい。
何が最善のAI戦略か、AIのツールをどう組み合わせれば最善の結果が得られるのかという問題には、正しい答えが一つだけではないことが多い。なぜなら、AIにはトレードオフが関わっているからだ。スピードを上げれば精度が落ち、自律性を重んじれば統制が利かず、データを増やせばプライバシーは失われる。」
「最近の機械学習の進歩は、しばしば人工知能の進歩として言及されるが、それには以下の3つの理由がある。
(1)この技術に立脚するシステムは学習し、時間とともに改善していく。
(2)特定の状況において、こうしたシステムはほかのアプローチよりも著しく正確な予測を行う。一部の専門家は、予測が知能の中核を成していると指摘している。
(3)こうしたシステムは予測の精度が向上した結果、翻訳や車の運転など、かつては人間の知能の独占領域と考えられていた分野のタスクをこなせるようになった。しかし、今はまだ、予測と知能の関連性について分からない部分がある。本書は知能のコスト低下ではなく、予測のコスト低下がもたらす結果に焦点を当てる。」

「予測マシンは以下の3つのデータを利用する。
(1)AIを訓練するための訓練データ (2)予測を行うための入力データ (3)予測の精度を改善するためのフィードバックデータ」

「予測マシンはスケールする。予測の頻度が増えれば、予測当たりの単位コストは下がっていく。人間の予測は同じようにスケールすることができない。しかし人間は、世の中の仕組みを解明するために役立つ認知モデルを作り出し、少量のデータに基づいて予測を立てられる。したがって、これからは人間が例外予測を行う事例が増えると予想される。この場合、機械は日常的な通常のデータに基づいてほとんどの予測を行い、稀な事象が発生すると、予測に自信を持てないことを認識し、人間の助けを求める。すると人間は、求めに応じて例外予測を行う。」
「機械は人間の判断を学習することができる。一例が車の運転だ。起こり得るあらゆる状況についての判断をコード化するのは難しい。しかし、自動運転システムに多くの事例を示し、人間の判断を予測できるように訓練することは可能だ。この状況で人間ならどうするか、予測させるのだ。」
「AIがタスクに導入されても、そのタスクの完全な自動化が必ずしも実現するわけではない。予測は、タスクを構成する要素のひとつにすぎない。人間による判断と行動が未だに必要とされるケースは多い、しかし、時には判断をハードコーディングすることが可能だし、具体例を十分に提供されれば、機械は学習を通じて判断を予測できるようになる。さらに、機械は行動をとることも可能だ。タスクを構成するすべての要素を機械が引き受けるようになれば、そのタスクは完全に自動化され、人間は蚊帳の外に置かれてすっかり排除されてしまう。」
「予測マシンをどの部分に採用できるか理解したければ、ワークフローをタスクごとに分解しよう。そうすれば、予測の改善によってもたらされる利益だけではなく、予測に伴うコストも評価できる。適切な評価を下したら、AI導入によるROI(投資対効果)をランク付けし、最上位から順番に、予想されるROIが理に適っているかぎりは実行に移せばよい。」
「AIの登場によって、社会は多くの選択肢を与えられるが、そのどれにもトレードオフがつきまとう。目下、このテクノロジーは未だに初期段階だが、社会レベルで3つの顕著なトレードオフが存在している。
●第一に、生産性と分配のトレードオフだ。AIによって私たちは貧しくなり、生活が悪くなると指摘する人たちは多いが、それは真実ではない。技術の進歩によって私たちは豊かになり、生産性は向上する―経済学者の意見はそのように一致している。AIは確実に生産性を向上させるだろう。問題は富の創造ではなく、富の分配だ。AIが所得不平等の問題を悪化させる理由は二つ考えられる。まず、AIが一部のタスクを人間から奪えば、残されたタスクを巡って人間同士の競争が激化して、賃金が低下する。しかも、資本所有者の所得に比べ、労働者の所得は減少するだろう。つぎに、コンピュータ関連のほかの技術と同様、予測マシンはスキル偏向型なので、AIツールが導入されると、高度なスキルの労働者の生産性が不相応なほど向上する。
●第二に、イノベーションと競争のトレードオフだ。ソフトウェア関連のほとんどの技術と同じく、AIでは規模の経済が働く。しかもAIツールは、しばしば見返りの増加を特徴とする。予測の精度が上がればユーザーが増え、ユーザーが増えればたくさんのデータが確保され、データが増えれば予測の精度が上がるといった具合だ。大きな支配力が手に入るのであれば、企業には競うかのように予測マシンを構築しようとすると誘因が働く。しかし規模の経済においては、独占状態が引き起こされる可能性も考えられる。急速なイノベーションは短期的には社会に利益をもたらすが、社会への長期的な影響に関しては最適とは言えないかもしれない。
●第三に、性能とプライバシーのトレードオフだ。データが増えるほどAIの性能は改善される。個人データへのアクセスが簡単になれば、個人向けの予測を立てる能力は向上するだろう。ただし個人データの提供は、しばしばプライバシーの侵害という犠牲を伴う。ヨーロッパなど一部の国では、国民のプライバシーを守る環境が整備されている。このような環境は国民に利益をもたらす可能性もある。個人情報を対象とするダイナミックな市場が生まれる条件が整い、個人データの取引や贈与に関して個人が決断しやすくなるかもしれない。しかしその一方、データにアクセスしやすいAIが競争力を持っている市場では、ヨーロッパの企業や国民はオプトイン〈企業などが個人情報を収集・利用しようとする場合、事前に本人の許可を必要とする仕組み〉にコストがかかるために不利な立場に置かれ、障害が生ずる可能性が考えられる。
●以上三つのトレードオフのすべてを考慮するなら、国家はトレードオフの両面を比較したうえで、全体的な戦略や民意に最も適した政策を考案していかなければならない。」


「予測マシンの世紀」  アジェイ・アグラワル / ジョシュア・ガンズ / アヴイ・ゴールドファーブ 共著
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マイナビニュースより

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