1 IPO経営者は財産分与が大きな問題となる
小川彩佳さんと豊田剛一郎さんとが離婚すると報道されています。仮に離婚となった場合、
①慰謝料は300万円前後(裁判所は不貞慰謝料を昔より下げています。)
②養育費は双方の収入によって様々ですが、少なくとも30万円以上、かつ医学部2浪までは負担する条件で子の学費と生活費を按分で。
まではおおよそ予想が付きます。
問題は「財産分与」です。豊田さんは少なくとも現時点で180億円のメドレー社の含み益があるとの報道がされていますが、これを半分取られるのでしょうか?
あくまで限られた情報からの仮定ですが、IPO経営者の方やその配偶者の方に参考のため以下検討します。決算資料も読めばより精密にわかると思いますが、あくまで報道されている情報ベースです。


2 離婚までの経緯と株価
時系列を株価と共に整理すると、
2019年7月 入籍 まだ未上場のため、小川さんが取れる最低限という意味で上場時の1223円とします。
2019年12月 マザーズ上場
2021年1月末 この時点で別居と仮定します。株価4970円
豊田さんの持株数は、記事の時期により差がありますが大体330万株から400万株です。
これで計算すると、豊田さんの含み益は約130億から150億程度です。
豊田さんの含み益が180億と報道されているのは、IPO前の金額を知っている方の計算なのかもしれません。

3 結婚前の株式は財産分与の対価となるか?
原則はなりません。なぜなら、結婚前に持っていたものは結婚相手の協力とは無関係に形成されたものだからです。なお、法人といっても「個人商店と同視できる場合や、夫婦の資産を法人に出資した場合」も財産分与の対象となりますが、今回のメドレー社は該当しないのでこの場合は除いて考えます。

原則として結婚前の株式は財産分与の対象となりませんが、例外的に「配偶者がその資産の維持や向上に貢献したことが認められた場合」には財産分与の対象となります。
この「配偶者がその資産の維持や向上に貢献したことが認められた場合」か否かは、以下のような攻防が行われることになります。
豊田氏:自分のアイディアと実現力と投資家のお金でここまできた。妻は無関係。コロナでオンライン診療の需要が伸びたことが大きく、妻の宣伝効果はない。父親が衆議院議員である方が意味がある。
小川氏:キー局のニュースキャスターと結婚したってことで信頼性も増したし有名になった。株価はコロナの状況と無関係に動いているし、(同業他社があれば)同業他社の動きと違うのは、妻のネームバリューがあってこそ。
となり、現時点の報道ベースの事情からすると、財産分与の対象にならなそうですが、小川氏の人脈でさまざまな方とのビジネスマッチングがあった等という事情があれば対象となり得ることになります。
しかし、この「対象となるか?」について裁判所の認定は年々緩くなってきている印象があります(内助の功への評価が高くなっている?)。裁判所としては、対象となるかはやや緩やかに考慮しつつ、割合で実質的に妥当な解決を調整したいという意図もあるのでしょう。

これを参考として
経営者側配偶者(豊田氏):結婚前の株式を現金化した場合は、別口座管理し、金銭の流れがわかるように準備しておく。自分がさらに出資する場合、結婚前の預金か否かがわかるように同じくする。
非経営者側配偶者(小川氏):結婚後の株式の増加や、ストックオプションの実行を記録しておく。夫婦の生活費として使用する口座から出資された場合はそれを記録する。出来るだけ経営者側配偶者の多くの口座から生活費を出し入れしておく(生活費と混同すると裁判所は財産分与の対象としやすいです)。
が教訓となります。

4 財産分与の対象となるとして半分か?
原則は半分です。
ただし、例えば医師、スポーツ選手などは、それぞれの理由(医師はなるのに努力と金銭が必要、スポーツ選手は本人の努力と、稼働期間が短いから一時的に高額な報酬となる構造)から、半分とならないことがあります。
判例上は、IPO後の上場企業において5%のみ認めた事例もあります。これは220億円のうち11億円という認定です。
ただし、小川氏側も、経営に貢献しているという事情があれば半分側に押し返すことが可能、という構造になっています。

これを参考として
経営者側配偶者(豊田氏):楽だから、安いからと安易に経理を手伝わせたりしない。させるときは、仮に相手が不貞したとしても財産分与で不利になることを覚悟する。
非経営者側配偶者(小川氏):自分の貢献をメモしておく。メール等で夫と仕事のやりとりをしたら残しておくこと。
が教訓となります。

5 小川氏の財産分与の検討
仮に財産分与の対象となると、小川氏も最低5パーセントをターゲットにして検討するとすれば、180億円の5パーセントなので9億円となります。
ただ、本件では財産分与の対象となるかの点が弱いですし、婚姻期間中に含み益が発生したとはいえ、婚姻期間が短く貢献度合いが高いと言えないでしょう。
現実的には、数億円と、養育費を高額とすることで実質的な利益を得る合意を目指すというのが目標となりそうです。