花柳流お家騒動の判決分析については前回書きましたが、今後、貴彦氏と寛氏は花柳流の主導権争いをする方法としてお互い何を持っているでしょうか。そしてどうなるのでしょうか。が今回のテーマです。

貴彦氏と寛氏との判決後の現状
貴彦氏
・除名は無効
・今後も、花柳流の正統は自分だと述べたり、寛氏が世襲はおかしいと言いながら自分の孫に世襲させることはおかしいと述べても除名されない。
・3代目が自分を4代目と考えていたことや、自分が正統な4代目であるとは認められなかった。むしろ今回の判決は「3代目が貴彦を4代目に継承させる明確な意思があったとは認められない」と認定しており、従前の相続に関する判決より3代目の意思について後退した認定をしている。
・寛氏が4代目であることを否定する法的な権利は無いと明確に認定されてしまった。
・自らの除名原因となった仲間の花柳寿々司郎さんの行為は「除名相当」と認定されてしまった。

寛氏
・貴彦氏を今後除名することは事実上不可能
・自らの4代目の地位が認められたわけではないが、3代目が亡くなった後、事実上4代目として活動してきたことは尊重に値すると評価された
・除名処分が、自らの4代目の基盤を固め、孫に5代目を継がせるための行為であったと認定されてしまった。

書いてみると、貴彦さんは「家元を取り返す」という意味においては実質敗訴とも思えてきます。久保利弁護士のプレゼンで貴彦さんが勝ったように見えた裁判ですが、今後の家元争いについては事実上4代目を寛氏が名乗っている現状を法的に動かすことはできないことが浮き彫りになったような判決です。
これに対して寛さんは、とりあえず5代目襲名興行を成功させ、既成事実を作り続ければ良いという事になります。

貴彦氏の今後の争い方
貴彦氏の争い方はなかなか難しいものがあります。
寛氏が予定している5代目襲名興行を止めることはできませんし、実力で止めるとそれが除名事由になりかねません。
そして、裁判所は、伝統芸能の内部で家元とされて事実上家元として活動しているものの地位は尊重するという立場ですので、今後5代目襲名を強行されてしまうと止めようが無いというのが現状です。
貴彦氏としては、花柳流に復帰し、同志を増やす事で名取の多数派を握り、理事を独占し、運営を握る。そして、寛氏が何かミスを犯したら除名するという方法しか強制的に家元を取り返す方法がないように思えます。
この点、権利能力なき社団に類推適用される一般社団法人法が、正統理由があり、構成員の3分の2の賛成があれば除名ができると規定していることが参考になるでしょう。

現実的な今後の予想
ただし、寛氏としても、除名が自らの権力基盤の維持のための行為だったと判断されたことは今後貴彦氏に手出しできなくなっただけでなく、自ら、そして花柳流全体のイメージを損なう行為であったことは確かです。
今後、寛氏が5代目襲名を強行するかが一つのポイントになりますが、もうここまで来た以上、貴彦氏と何らかの水面下での合意ができなければ、今後の交渉を有利なポジションで行うことを考えてもやらざるを得ないと思います。

ただし、このような争いが続き、それが報道され、花柳流のイメージダウンに繋がり、人的・金銭的力の源泉である生徒さんや仕事依頼が減少することを考えると、双方ともにどこかで紛争を収束させることが双方の利益になる。という「最低限の信頼関係」はあるので、今後どのような話し合いがなされ、紛争が収束するのかを見守りたいです。。。
までが当たり障りのないブログですが、自らもリスクにさらされて今後を予測すると、キーパーソンは千代さんと花柳寿々司郎さんではないかと思います。

貴彦さんの記者会見の様子をみると、いい意味で優しい常識人、悪い意味で線が細くて強引さは無い印象を受けました(貴彦さんすいません。悪意はないです。)。
その貴彦さんを強くサポートしていた(とはいえ、理由は貴彦さんと違うということはまた次回)のが千代さんであり、貴彦さんが「まだ理不尽な扱いを受けている仲間」と述べていたのが寿ケ司郎さんです。
貴彦さんとしては、千代さんの理事復帰、寿々司郎さんの復帰を認めること、自らが5代目になることは最低条件でしょう。
そうなると、5代目襲名興行を行ってしまった寛氏がそれを引っ込めて何らかの対案(6代目の確約?)を出す事で貴彦さんの条件を呑むのか。が注目ポイントです。
次回は、今回の紛争を教訓に、他の5大流派(藤間流、若柳流、西川流、坂東流)を含む伝統芸能団体が取り決めておくべき規約内容と記者会見で感じた同床異夢」について書きます。