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強制わいせつが非親告罪なのに示談したら不起訴になる理由
山口達也さんの件でグッディでも解説しましたが、番組の感想に、強制わいせつ罪が非親告罪なのに示談したら不起訴になるのはおかしいというものがあったので、簡単に解説します。
確かに非親告罪になりましたが、法務省から通達があり、被害者のプライバシー等の権利に配慮しなければならないことになっています。また、示談している被害者が法廷で証言しないため、有罪立証に支障を来す場合もあります。
また、被害者保護の観点からも、示談しても起訴されるのであれば、加害者の示談するモチベーションは下がりますし、示談金額も下がりがちになります(良いか悪いかは別として、示談=無罪と一緒と、示談=刑が軽くなるだけ、の違いがあります)。
そのような事情を考えると、被害者の立場からも示談が成立したら不起訴という結論が望ましいことになります。
よく、金で済ませるのはおかしいという意見がありますが、最も保護されるべき被害者が許した以上、第三者の怒りを満足させるために被害者のか権利に支障を来しても起訴するという結論はやはりとりえないと言えるでしょう。
TOKIOの山口達也さんが送検された事件について
TOKIOの山口達也さんが、未成年を自分の部屋に入れ、酒を飲むことを勧め、無理やりキスをしたという容疑で送検されたというニュースが報道されています。
好青年を絵に描いたような方だったので意外ですし、示談が成立しているのに報道されることには違和感がありますが、
①どういう罪になるのか・ならないのか
②今後の処分のながれ
③逮捕されない理由
④強制わいせつ事件で未成年者を被害者とする場合の示談について
まとめます。
①どういう罪になるのか・ならないのか
報道では女子高生としか書かれていないので、18歳未満かどうかは確実ではありませんが、18歳未満であれば、問題となるのは、
1刑法の強制わいせつ罪
2東京都青少年健全育成条例(青少年に対する反倫理的な性行等の禁止)違反
3仮に23時以降であった場合には、同じく条例(青少年の連れ出し、同伴、とどめおき行為禁止)違反
4未成年者飲酒禁止法違反
がまず考えられます。
このうち、
1 無理やりキスをする行為は、刑法上の強制わいせつ罪に該当し、法定刑は6ヶ月以上10年以下の懲役です。
2 東京都青少年健全育成条例(青少年に対する反倫理的な性行等の禁止)違反については、原則としてキスのみでは、禁止されている「性的類似行為」に該当しないと考えられますが、過去にはキスのみで逮捕された事例もあります。ただし、おそらくこの点は本件では成立しないのでしょう。
3 23時以降に18歳未満を連れ出し、同伴、とどめおきしていて、それが親権者(親御さん)から頼まれたというような正当な理由がない場合には、条例違反となりますが、この点も報道されていないということは23時より前だったのでしょう
4 未成年者に酒を進める行為は、「親権者や親権者に代わって未成年を監督する者」が行った場合は未成年者飲酒禁止法違反になりますが、山口さんと未成年者とはそのような関係にないので、法律違反にはあたりません
② 今後の処分のながれ
示談が成立しているということなので、不起訴。ということになります(非親告罪となっていますが、示談が成立した場合不起訴)。
不起訴であると、当然前科はつきません。
不起訴であり、逮捕もされず前科もつかないのに報道されるというのは一般人では起こりえないので、この点は著名人であるから報道されたのでしょう。
一般人であれば著名人であれ、逮捕もされず不起訴見込みであるのに報道される点は、問題があろうかと考えます。
③逮捕されない理由
本件のような場合、逮捕されないことが通常です。
そもそも、逮捕されるには、逃げる恐れや、証拠を隠滅する恐れが必要ですが、山口さんが逃げる可能性や証拠を隠滅する(未成年者を脅したりする)ということはそれを行った場合のリスクを考えたら通常考えられないので、逮捕されないことになります。
④強制わいせつ事件で未成年者を被害者とする場合の示談について
未成年者と示談する場合には、その両親の同意も得ることが通常です。
未成年者が示談しても両親が取り消すことが可能だからです。
よって、仮に強制わいせつの被害者である未成年が納得していたとしても、ご両親の納得を得る必要があることが一般的です。