





本日は、西村プロデューサーがお疲れのため、筆休め企画をお送りします。題して不定期連載企画「○○はこうして生まれた。」です。「かぐや姫の物語」に関連する様々な物が、どのように作られたのかについて、わたくし、新人制作スタッフ(日誌の挿絵も担当)の岡田がご紹介します。
記念すべき第1回目は……、
「第一弾ポスターはこうして生まれた。」
です。
小さなお姫様が巨大な手のひらに乗って、ぼぅっと光っている、少し不思議でインパクトのあるこのポスターは一体どのようにして作られたのかをご紹介します。
あれは2012年9月6日のこと。魂が抜けたような顔で座っている西村さん。目の焦点が合っていません。なぜかというと、そろそろ第一弾ポスターを作らなくてはいけないので、考えているのだそうです。この”考える”という仕事が、私達からするともの凄く大変なのだと思いますが、けっこう間抜け面です。
間もなくして、西村さん、席を立ったかと思うと、2階にあるQAR(動きをチェックするマシン)で、あるカットを何度も見ています。そこから、とある1コマを選び、プリントアウト。続いて、男鹿さんの背景の中からお目当ての絵を見つけ、コピー機でコピー。それから何をするかと思えば、それにハサミを入れてチョキチョキチョキチョキ。テープでペタペタペタ。コピーして拡大してチョキペタチョキペタ。何度も繰り返しています。しかも何かぶつぶつ言いながら。怖いです。
西村さん「できた!」
みんな「これは……?」
西村さん「第一弾ポスター案。」
紙に印刷した素材をハサミで切り貼りし、ポスター案を作った西村さん。
な……、なんとアナログな……。というか、ジブリのポスターってプロデューサーが作るの?一流デザイナーとかじゃないの!?こんなハサミで切り貼りして、たたき台作っちゃうの!?これで決まり!?ポスター会議とかないんだ!センスいい感じの人たちが集まって、あーでもない、こーでもないとかやっちゃったりしないんだ!?すっごいアナログです。だって、紙!ハサミ!セロハンテープ!ですよ。思っていたのと全然違う。もうジブリ、よくわかんない。
ジブリ作品初体験の私にとっては刺激が強い出来事のひとつでした。私の感想は置いといて、次に行きます。
次の段階は素材を“ちゃんと”揃え、より明確な案へ。それで出来たのがこちら。
なんだか、らしくなってきました。
元の原画に少し手を加えて欲しいという西村さんの要望があり、演出の田辺さんに描いてもらいます。と、その前に西村さんからの具体的な指示が入ります。
何が描かれているかというと
・眠っているかぐや姫。
・顔の向き、これで良いと思うが、表情微笑みもう少し欲しい。かわいく。
・朝霧たちこめる竹林
・翁、奥のほうで竹を切っている
などなど。
そして作画作業に突入!
田辺さんに描いてもらった絵がこちら。
姫の顔を悩んだ跡が見えますね。この絵に作画監督の小西さんが修正を加えます。田辺さんの絵(主に姫の表情と、実線)に直しを入れていきます。直しを入れるどころか、描き直していますね。こちらが出来上がり。
紙にはこう描いてあります。
「線のザラッとした感じを出すのが重要でなく紙の上で見た目の線の持つ美しさ、空気感の持つツヤのある線として画面、ポスターに定着させるのを最大理想にしたいです。」
小西さんの線に対するこだわりを感じます。
そしてさらに顔のパターンとして……、
さらに……
これ、なんだか分かりますか?
『まゆげ』です。
この部分ひとつ違うだけで、だいぶ印象が変わるものです。
姫の着物の模様も別紙で描いています。
そして出来上がった線画がこちら。背景はまだ仮素材です。
そしていよいよ塗りに入るのですが、背景、キャラクター、すべてを美術監督の男鹿さんに塗ってもらいました。背景、素材含め10枚も!
素材素材に男鹿さんは数パターンの色や塗り方を提案してくれました。すべて美しく、正直選ぶのがもったいないどころか、すべてポスター化したいくらい。本当は一枚一枚説明していきたいところですが、割愛させていただきます。
そして決定した色、素材を合成し、絵を完成させた上で、外部のデザイナーに微修正をしてもらい、印刷所へ提出。数度の色校正を経て、2012年11月、第一弾ポスターが出来上がりました。
じゃーん!
はじまりがこちら。
いかがでしょうか。
ポスターが出来ていく過程を大雑把ながら紹介させていただきました。
各工程で関わる職人達のこだわりの集大成とも言えるポスターです。
以上「第一弾ポスターはこうしてうまれた。」でした!
ちなみに、まさに今、第二弾ポスターを制作中です。そちらも後日、「○○はこうして生まれた。」でご紹介するかも?