ああ、ついに聞いてしまった。できることなら聞きたくなかった。この世のどこかでそのような会話が繰り広げられていることはなんとなくわかっていたが、まさかリアルに聞く日が来るとは。
 
店員A「今日のおにぎり一個だけニキ、鮭だったわ」
店員B「マジか」
 
そう、私はたしかに聞いてしまったのである。『おにぎり一個だけニキ』というワードを。ちなみに一応説明しておくと、「ニキ」とは「アニキ」のことを意味する言葉で(「ネキ」は「アネキ」)、元はネット用語らしいのだが、最近の若い人なんかは割と普通に使っている印象がある。つまり『おにぎり一個だけニキ』とは、「おにぎり一個だけアニキ」ということになる。
 
とはいえ、コンビニでおにぎり一個だけ買う人なんてまあまあいるはずである。それなのに、なぜわざわざその人にだけ『おにぎり一個だけニキ』という名前をつける必要があるのか。何がそんなに特別なのか。私はまずそこを探るべく、この会話を慎重に紐解いてみることにした。そんな暇あるなら曲でも書けって話だが、それはまあちょっと忘れてください。
 
まず、「今日のおにぎり一個だけニキ」と言っていたことから、ニキはおそらく毎日来店するお客さんだということがわかる。続いて「鮭だったわ」のところだが、ここも結構ポイントである。「今日は鮭だった」ということは、「鮭じゃない日もある」ということだ。昆布、おかか、ツナマヨ、たらこ、納豆巻きなんかもいっちゃったりして。つまりニキは、決め打ちで同じ品を毎回買うのではなく、日替わりでおにぎりの具を変えてくるということになる。「おにぎり一個だけ」という期待にはきちんと応えつつ、予想を裏切ることも忘れないその姿勢がいいじゃないか。真摯さとお茶目さのバランスが絶妙だ。もう私の頭の中ではドラマ化決定してますから。おっちょこちょいなコンビニ店員と、毎日おにぎりを一個だけ買いにくるちょっと不思議なマイペースお兄さんとのラブコメディ。新火曜ドラマ「おにぎり一個だけニキ!」、よろしくどうぞ。私は絶対見ないけど。

とかなんとか書いたけど、本当は『おにぎり一個だけニキ』がどういう人物かなんてどうでもいいのだ(ごめん)。問題は、「コンビニの店員さんはよく来るお客さんにあだ名をつける」という、あるあるっぽいが実は今までコントの中でしか見たことのなかったそれを、この耳でたしかに聞いてしまったということである。きっと私にもあだ名がついているに違いない。だとしたらどんなあだ名なのか。うっかり聞いて傷つく前に、自分で先に考えておこうと思う。

近所のファミマでは、0キロカロリーコーラとフロランタンをよく買っている。冷静に考えると太りたいのか太りたくないのかよくわからないチョイスなので、たぶん『矛盾ネキ』とでも呼ばれているのだろう。やだな。たまに行くスタジオ近くのローソンでは、Lチキともちぷよを買う。まあ順当にいけば『Lぷよネキ』といったところか。これは"ゆきぽよ"みたいでかわいい。あと昔住んでいた家近くのセブンでは、蒙古タンメン中本のカップラーメンと冷凍汁なし麻辛麺をよく買っていた。店員さん読んでますか、私があの時の『中本ネキ』です。とまあこんな感じだろうか。だったらなんだよって話だが。ちなみに私の高校生の頃のあだ名はピクミン。理由はわからん。