「隠れ家レストラン」「隠れ家サロン」「隠れ家ホテル」など、世の中にはいわゆる隠れ家○○と言われる店がたくさんある。その中でも都内で最もよく見かけるのが「隠れ家カフェ」だろう。
 
私のイメージでは、メインの通りから一本入った路地にそれはある。住宅街の中でひっそりと、一見店かどうかわからないような感じで佇んでいる。偶然通りかかった人が、なんだかえらく洒落た家だなと窓を覗くと、奥の方に木でできたカウンターがあり、コーヒーを淹れている人影が見える。口周りにヒゲ、フレームだけで3〜5万はするであろうメガネ、ちょっとワークっぽいエプロン、髪はグリースで固めたツーブロック。中肉中背の、さりげないこだわりが隠しきれない、ちょっと熊っぽい男性が立っている。
 
ここは彼の家なのか、それとも。表札を確認しがてらドアの方へ向かうと、小さな看板が立っているではないか。くまのプーさんが住んでいる100エーカー森の所々に立っている、木の切れ端みたいな板に何やら書きつけてある。横文字のそれは名前ではなさそうだし、店名か。
 
などと考えているうちに、私はふと看板のところにぶら下がっている、麻紐の先の一枚の紙に気付く。手書きあるいは明朝体の、さすがにもう少し大きくてもいいんじゃないかと思うくらい小さな文字で、たっぷりの余白を開けて一つ一つメニューが書かれている。コーヒー、紅茶、手作りのチーズケーキなど、数は少ないが定番のいいところが揃っている。なるほど、ここは隠れ家カフェというわけか。


「あ、はい。こう見えて一応営業中なんです。まあでも商業目的というよりは、趣味の延長線上みたいな感じです。コーヒーが好きで色々資料とか機材とか集めていたら、ある日友人から『もうお店やっちゃえば?』って言われて。じゃあやってみるかっていう(笑)。仕事はフリーランスでデザインとかもやっているので、両立も頑張ればできますし」

たぶん彼はどこかの媒体のインタビューでこう答えたことがあるはずだ。パッと見はちょっと気難しそうに見えるが、笑うと柔らかい雰囲気で、こちらの緊張も自然と和らぐ。お酒は弱めで、生ビール一杯で顔が赤くなると同時に鼻がちょっと詰まるタイプ。ちなみに花粉症(スギ)。ネギが苦手で家系ラーメンが好き。あとこの店のお会計はipadでするのだが、「クレジットカード使いたいんですけど」と言うと、慣れた感じが一転、急にオロオロしだす。そういうとこ結構かわいい。(※完全な妄想)
 
……とまあいろいろと脱線しすぎたけれど、とりあえず隠れ家〇〇というと、私はこういう感じのところを想像する(偏り過ぎ)。聞かれたらよく話すけど、あまり前のめりな感じではないというか。あくまでもひっそりとやっています的な、そういうイメージだ。
 
しかし先日散歩をしていたら、自ら店名の前に「隠れ家」を大胆に掲げている店を発見したのである。勢い的にはドン・キホーテの「驚安の殿堂」と同じくらいの圧で掲げていた。しかも入口だからとかではなく、みんなから見える道路沿いの方の外壁にでかでかと、創英角ポップ体的なめちゃめちゃガッツのある感じのフォントで。

あれは果たして隠れ家と言えるのだろうか。そして中ではどんな人が働いているのだろうか。気になって仕方がない今日この頃なのである。