新幹線の中で食べるお弁当って異常に美味しくないですか。特に行きの新幹線。

ミュージシャンという仕事は移動が多い。特に私は先日新譜をリリースしたばかりということもあり、今月はツアーやらキャンペーン(新譜発売に伴うメディア出演などの様々な稼働)やらで、ありがたいことに毎日のように全国各地を行ったり来たりさせていただいている。

距離的に北海道や九州となると飛行機で行くことも多いのだが、それ以外は基本的に電車移動である。なかでも私は新幹線移動が大好きだ。
理由は冒頭にも述べた通り、お弁当が異常に美味しく感じられるからである。

かと言って、なにか特別なものを食べるわけではない。駅弁とか、駅中のお惣菜やさんで買ったお弁当とか、そんなものである。でもなぜか普段よりも数倍美味しく感じる。

なぜそう感じるのかここ数年割と本気で考えていたのだが、特に理由がわからないでいた。
窓の外の流れる景色のせいかと言われるとそうでもないし、あの不思議な静寂のおかげかと言われるとそれも違う。なんならテーブルは小さくて食べにくいし、車両が揺れるから飲み物も飲みづらかったりする。なぜだ。なぜなのだ。

しかし、つい先ほどその答えがわかってしまった。頭の中にピコーン!と光が一本通った感じがしたのだ。

ほらあれよ、コナン君がトリックのからくりを見破る時になるやつ。「なるほど、そういうことか……!」→ピコーン!→パシュッ→眠りの小五郎召喚→「この中に犯人がいます…」のあの時のあれよ。

そう、まさに今朝のことである。お弁当を物色していたら思いのほか時間がかかってしまい、私は新幹線内に乗り込んでから自分の座席のある車両に向かって移動していた。

すると途中で、修学旅行の団体が貸し切っている車両を通った。まだ他の色を知らない黒髪、少し丈のあまったスラックス、鮮やかな濃紺のハイソックス。少年少女たちはキャッキャと笑いながら座席をクルクルとまわして向かい合わせにして、ただ話をしたりUNOをしたりしていた。スマホをいじっている子なんて一人もいない。ゲームをやっている子もいない。私が学生の頃となにも変わらない修学旅行の景色がそこにはあった。(その子たちは14、5歳くらいに見えたので、私とは十数個歳が違うはず)

そしてどこかから、「先生ー、お弁当って何時に出るんですかー?」という声が聞こえた。
その瞬間私は、ああ、これだ! と思った。

私が新幹線でお弁当を食べた最初の記憶は、間違いなく修学旅行である。遠足や運動会の時の個性豊かなお弁当たちも好きだったが、新幹線内で支給されるいつもとは違うお弁当、あれには妙にテンションが上がった。普段食べたらなんてことないのかもしれないけれど、なぜかいつもより美味しく感じてペロリと完食していた。

お腹が空いたから食べようとかお昼の時間だから食べようというよりも、「今日一日を楽しむための腹ごしらえ」という感じが好きだった。

あれから十数年が経ち、私も28歳になった。今では一日を始める時、ついつい「今日一日をなんとか乗り切ろう」ということばかり考えてしまう。

でも、今でも行きの新幹線でお弁当を食べているとあの時の気持ちが蘇って、こう思えるのだ。「今日一日を思い切り楽しもう」と。だからきっと美味しく感じるのだ。

ということで私は席に着くなり、今朝張り切って購入したデカイおにぎりと唐揚げなどが入ったヤングなお弁当を食べはじめた。

気分はもう修学旅行である。このお弁当を食べ終わったら、あの頃聴いていた曲でも聴きながら修学旅行の思い出でも振り返ってみようかしら。そんなことを考えながら、私は箸を進めた。

そして完食。ペロリと完食と言いたいところだが、正確に言うと、なんとか完食した。


そこで気が付いてしまった。


おかしい


気持ちが悪いぞ。


正直ね、今日は結構朝早かったんですよ。

だけど張り切っちゃったんですよ、お弁当。

しかも食べながらもう気分が乗っちゃって、中学生男子ばりのわんぱくな早食いしちゃったわけですよ。

そしたらもうあれよ

なにこの

圧倒的胃もたれ

ツラさしかないんだが

朝から唐揚げとか無理するんじゃなかった

あの頃とはやっぱ違うわ

ということで音楽なんて聴く余裕もなく、とにかく何もかも忘れて仏フェイスで眠ること数十分。なんとか落ち着きました。

でもなんかいいよね、修学旅行ってハプニングもつきものだもんね。あれいちいち楽しかったなあ。

ということで、今日明日は関西キャンペーンです。気持ちだけはあの頃のフレッシュさを思い出しながら、思い切り楽しもうと思います。