今日は入っていた仕事がなくなったので、昼間は散歩に出かけた。風に飛ばされた桜の花びらを追いかけたり、やたら早足なおじいさんになんとなく付いて行ってみたりしていたら、いつの間にかいつもと違う見慣れない道に出ていた。異様にゴミ捨て場が荒れている、なんだか不気味なマンションの前を通ると、鼻をつくような異臭がした。 

それまで、好きな音楽を聴きながら、自分でも引くくらいゴキゲンで歩いていたので、急に現実に連れ戻されたような気がして、正直、かなり気分が落ちてしまった。

はあ、とため息をついて地面に目をやると、ハルジオンの花が咲いていた。酒の空き瓶や生ごみ、泥だらけのマットレスが散乱するゴミ捨て場の隅っこ、コンクリートの隙間で、健気に咲いていた。
 



「花ちゃんの花は、何の花なの?」
 


小さい頃、母に尋ねたことがある。チューリップかな、バラかな、ガーベラかな。その時私の頭の中には、お花屋さんに並ぶ、色とりどりの華やなお花が並んでいた。母の答えはこうだった。
 


「花ちゃんはね、雑草だよ」
 


あまりにも想像と違う回答だったので、一瞬頭が真っ白になった。雑草。私は雑草なのか。母は続けてこう言った。
 


「ハルジオンって知ってる? 私あの花を見た時、いつか自分に子供ができたら、こういう子に育ってほしいって思ったの」

 
ある日、少し落ち込むことがあった母がうつむきながら歩いていると、誰にも気づかれないようなところで、ひっそり、でも懸命に根を張って咲いているハルジオンを見つけたのだと言う。
きちんと花壇に植えられている花や、華やかに束ねられた花束の花たちも綺麗だけれど、ふとした時に人の悲しみや苦しみにもそっと寄り添えるような、そんな子になってほしいと思ったのだと言う。
 

「華やかじゃなくてもいいから、泥臭くてもいいから、自分なりに一生懸命生きる人っていうのも、素敵でしょ」
 

幼心にてっきり、自分の「花」と言う名前は、「花のように誰からも愛されるような子に育ってほしい」とか、ただそう言う意味でつけられた名前だと思っていたので、驚いた。でもなんだかその理由を聞いて、想像していた以上に、ものすごくしっくり来た。そしてなんだか、とても誇らしかった。
 

「あー、だけどね」
 

母は笑った。
 

「その時は、まさか自分が関取っていう苗字の人と結婚するとは思ってなかったのよね、さすがに」
 

「関取に花だから、結果的に思った以上にどすこい感の強い仕上がりになった」
 


確かに「関取花」と聞くと、貴乃花や若乃花といった名前が自然と脳裏に浮かぶ。

今でもたまに聞かれることがある。「女の子なのに、どうしてお相撲さんの名前みたいな名前にしたんですか?」と。いえいえ、本名なんです。世界一素敵な名前だと思ってますよ。ちなみに先祖は関所の門番とかそういうあれらしいです。
 

そんな私「関取 花」のメジャーデビューミニアルバム「逆上がりの向こうがわ」が、5月8日に発売されます。たくさんの人にお水を注いでもらって、たくさんの人に光を浴びせてもらって、とても良い作品ができました。私なりに一生懸命作りました。ぜひ買ってください。

どこかの誰かの日常の隅っこで、この花が咲いてくれたら嬉しいです。