寒い。

こうも寒いと、ただでさえ出不精なのに、ますます部屋から出たくなくなる。最近はゴミ捨て場までゴミを捨てに行くだけで、深くため息をついてしまう。そして部屋に戻って布団に再びダイブをして、こうつぶやくのだ。「遠い……」と。(その距離、玄関を出てわずか5歩)

さすがにこのままではいけないことくらい分かっている。より良い歌を歌えるようになるためにも、体力をつけなければならない。かと言って、ジムやヨガ教室なんかに通うようなお金はないので、選択肢は限られてくる。まず真っ先に浮かんだのはランニングだったのだが、以下のような理由で、多分続かない。

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いやあ、我ながらこの手の言い訳なら、本当にいくらでも出てくる。(歌詞は全然出てこないのにな!!!)

さて、そんなある日、「区民プール良いよ」と、ある人に勧められた。たしかに、屋内だから冬でも寒くないし、夏でも日に焼けることはないし、春秋の花粉も心配いらない。レッスンがあるわけでもないから、行きたい時に行けば良い。月会費もいらないし、何より安い。水着さえ自分で準備をすれば、すぐにでも行けるよ、と。素晴らしい、これは良いことを聞いた。テンションとモチベーションがわかりやすく急上昇した私は、その日の夜、早速ネットで水着を購入することにした。

いろんなサイトを見て回っていると、思っていたよりかなり安く一式揃えられることがわかった。たいして泳げるわけでもないし、いきなり高くてしっかりしたものを用意する必要もないと思ったので、私はとにかくお手頃なものを選ぶことにした。しかし、在庫の関係なのか、色によって少しずつ値段が違うようだった。まあべつに誰に見せるわけでもないし、形が変じゃないならあとはどうでも良いか、と思ったので、私はその中でも一番安くなっていたものを購入した。(画像は一番シンプルな黒いデザインのものしか載っていなかったので、あとの色はどれも詳細はわからなかった)

数日後、宅配便でその水着が届いた。ダンボールを受け取った私の胸は躍っていた。早速今日から、区民プールに通い始めよう。水着も買ったことだし、必要な条件は全て揃った。もう言い訳なんてしない。生まれ変わるの。私、生まれ変わるの。

そんな気持ちで、クリスマスプレゼントを心待ちにしていた少年の如く、私は飛びつくようにダンボールを開けた。


……

まぶしい


目に飛び込んできたのは、私が想像していたものとはだいぶ違う、とんでもなく鮮やかな色だった。


……


なんという

圧倒的オレンジ


そしてウエストあたりには黒っぽいラインが入っているではないか。なんだろう、この既視感は。少し気になったが、とりあえずまずは着てみることにした。そして鏡に映った自分の姿を見た私は、すぐに確信した。





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……





これは



完全に孫悟空 (少年期)




もしかしたら、長身の綺麗なお姉さんが着たら、スポーティでかっこよく決まるのかもしれない。しかしこちとら149cmである。生まれてこの方、なんていうかこう、ギュッとしているフォルムなのだ。昨年たしかに以前よりは少し痩せたが、ちっちゃいものクラブ特有の、このギュッっとした感じは、どんなに痩せても多分一生変わらないのだ。少年期の孫悟空のフォルムなのだ。

想像してみてほしい。


区民プールで、孫悟空みたいな水着を着た私が、ストレッチをしているところ。


孫悟空みたいな水着を着た私が、平泳ぎをしているところ。


孫悟空みたいな水着を着た私が、水から上がって、プールサイドをペチペチ歩いているところ。


無理だ。わたしが他の区民プール利用者だったら、絶対に笑ってしまう。「人生はネタ探し」とは自分でよく言ったものだが、さすがにこれは、全然HEAD-CHARAじゃない。全然へのへのカッパじゃない。恥ずかしさだけがSparking!して終了である。

そんなわけで、その水着は一度も活躍することなく、今もクローゼットの奥底で眠っている。もちろん、区民プールにも行っていない。だったらまた新しい水着を買って、仕切り直せば良いじゃないかと思うかもしれないが、私みたいなダメダメ人間は、一度タイミングを逃すと、再び重い腰をあげるのがとてつもなく難しいのである。

ああ、どうか、きちんと毎日運動しているそこのあなた。


オラにやる気をわけてくれ!たのむ!