そんなこんなで、10月になってしまったのである。今年も残りあと三ヶ月だと思うと、あっという間だったなぁなどと早くも今年の総括に入りたくなってしまうのだが、秋がやっとはじまったばかりだと考えると、まだそれをするには早いと気づく。何にせよ秋は好きだ。「秋」という大義名分がある。


毎年、少し肌寒くなってくるこの季節になると、私は夜な夜な芋を蒸す癖がある。「秋だし、とりあえずさつまいも行っとくか」みたいなノリではじめたのだが、蒸されて行くさつまいもの色がどんどん鮮やかになっていくのは、季節の移り変わりみたいでちょっと綺麗だったりするのだ。(まぁそんなことは今とってつけた話で、結局は「芋っしょ、食欲の秋っしょ、行っとくっしょ」、それだけである。)

そんなわけで、「来る冬に向けて栄養を蓄えるための秋なのだ。とにかく食欲の秋なのだ。」などというクズ理論で自分を甘やかしながらこれまで過ごしてきたわけだが、今年はそろそろ、なんとかせねばと思っている次第である。

先日、いつものように芸能ゴシップを求めて本屋に向かった。その本屋は、いつもは自動ドアを入ってすぐ右手に週刊誌があるのだが、配置を変えたようで、そこには女性誌が並んでいた。なんとなく流れで女性誌を立ち読みしてみると、どの雑誌にも「秋のヘアメイク特集」なるものが組まれていた。そこで気づいたのである。「そうか、世の女性は季節に応じてメイクを変えたりもするのか…」自分がいかに普段そういった女心的なものを忘れて過ごしていたかを痛感した。

しかし、まるまる雑誌に載っている秋のヘアメイクを私が真似したって、似合うわけがない。いきなりボルドーの口紅をべったり塗ったら、何の罰ゲームだよってな話である。

雑誌を読み進めると、秋のヘアケア特集というものがあった。「夏よりもトーンダウンした髪色、艶やかに見せるためには丁寧なブローが大事」と書いてあった。



はて…ブローとは…?


いや、ブローが何をすることかはわかるのである。美容院でいつもやってもらうやつだ。ロールブラシを片手に、ドライヤーをもう片手に持って、こう、なんかあれするやつだ。あれ、家でも普通やるもんなのか。

思い返せば、私はブローどころか普通に髪を梳かすことさえ、しばらくまともにしていなかった。途中にマイナーチェンジはあったにせよ、ボブヘアにしたのが15歳、かれこれ10年間、なんとなくずっと内巻きのボブヘアである。しかし、ブローなんてしなくても、それっぽくできていたつもりでいた。手櫛で充分だと思っていた。たまに梳かすにしても、ホテルにある網目の荒いほぼ気休めみたいなブラシでいいと思っていた。なんなら、ホテルのブラシで髪を梳かした日にゃ、「わたし今日ちょっと髪とか梳かして浮かれてないか…」とさえ思っていた。しかし違うのだ。10年間、わたしは楽チンなボブに甘えて何もしてこなかっただけなのだ。

これはいけないと思った。どうりで恋人ができないわけである。どうりで「べつに」ができるわけである。僻んでばかりはいられない、ここらで一発、あたい、生まれ変わる!!一念発起した私は、早速ブローブラシを買いに行くことにした。



〜いざ、ダイソーへ〜




ダイソーへ着いてすぐ、私は櫛やブラシを扱うコーナーに向かった。あるある、並んでいるではないか、ブローブラシが。よし、せっかくのブローデビューだ、ここは奮発しよう。ということで、私は200円のブラシを買った。
 
それからドラッグストアで、ブローミストも買った。そして家に帰って、これからどこに出かけるでもないのに、ブローの練習をした。

私は驚いた。200円のブローブラシを使っただけで、髪にこれまでどう頑張っても出なかった清潔感が漂った気がした。何しろロールブラシに髪がからまりながらほどけていくあの感覚には、すぐにやみつきになった。

それからというものの、私はほぼ毎日ブローをするようになった。もはや日課になりつつある。きちんと上手にできているわけではないし、おそらく周りの人には気づいてもらえない程度のことなのだが、少し生まれ変われたような気さえするのはなぜだろうか。

私みたいなやつが女性らしくすることは気持ち悪いことだと思っていたのだが、どんなに強がっても所詮ただの女なので、ちょっとしたことで気分は上がってしまうものである。ウェってなりながらも、まぁ悪くないかと思ったりする。ひどい二日酔いで目覚めた時の朝、朝日が綺麗でなんだかまぁ悪くないかな、と思う感覚に似ているのかもしれない。

とりあえずブローブラシを買うとなった時にとりあえずダイソーに行ってしまうあたりが本当にまだまだダメダメなのだが、これから少しずつ克服して行こうと思う。


と、ここまで書いたところで、以前にも同じようなことを書いたことがあったなぁと思い返したら、やっぱりあった。
そして面白いことに、やはりこれを書いている時期もまた、秋なのであった。どうやらそういう季節らしい。

いやはや人はなかなか変われないものである。しかし、私は最近スカートを履くようになった。大きな進歩である。来年も秋のせいにして、少しずつ女らしくなっていることを今から願うばかりである。