私は、風の谷のナウシカをきちんと見たことがない。

あれだけの名作である、テレビでも何度も放送されているし、実家にはDVDだってある。
友達の家で鍋をしながら見たこともあるし、主題歌も歌える。だけど私は、最初から最後まで、きちんと見たことがないのである。

決してつまらないからとか、途中でどうしても眠たくなってしまったとか、そういうことではない。


理由はたった一つ、




ただの嫉妬である。




姫様と呼ばれるご身分であられながら、庶民の少女達にもまるで実の姉のように接し、谷の人々からも絶大な信頼と支持を得ている。それでいて思い切りがよく行動力があり、しなやかな身のこなしでメーヴェも操る。アニメだとわかっていても思わず見とれてしまうような、凛とした実に美しい顔立ち。己の危険も顧みず王蟲を抱きしめる様はまさに圧巻。天使、女神、あるいはジャンヌダルクか!!それがナウシカ様なのである。ちなみにお胸も大きい。


はじめてナウシカ様を見た日のことは今でも割と鮮明に覚えている。恐らく小学校低学年の頃だったと記憶しているが、幼心に、「こんな完璧な人間がいるはずがねぇ…いてはならねぇんだ…」と思った。

映画を見ながら何度もナウシカ様のあら探しを試みた。でも、ナウシカ様はどこまでもナウシカ様だった。どこをどうしたって、私がナウシカ様に勝てる要素なんて、これっぽちもなかった。

ナウシカ様が王蟲を抱きしめているまさにそのシーンを横目に、私は工作のりのアラビックヤマトを瓶の蓋に塗りたくって放置しておいたものを、ぺりぺりとはがす…という実に地味な遊びに興じていたのである。

ボロボロになったナウシカ様は、もう見ていられなかった。あまりにも美しいからである。家族は皆、息を飲んでナウシカ様を見つめている。感動屋の母は、涙を流していた。
なんだか悔しくなった私は、ぺろんとはがした謎の物体をこれ見よがしに家族に見せつけた。




「見て、アラビックヤマトこんなんなった!!!」




するとどうだろう。




「うるさいぞ」


「今いいとこだったのに」




「ナウシカはそんなことしないぞ」






人生初すべりである。
ごめんね、私はナウシカみたいじゃなくて。確かに王蟲とか来たら速攻逃げるタイプだわ、姿勢悪いからメーヴェも多分乗れないし。大体あの青いスーツ着たら多分レゴみたいになるし。


それはそれはあっけなく、私はナウシカ様に完敗した。洗面所に行って、アラビックヤマトの残骸を握りしめながら、一人で泣いた。ラストシーンなんて絶対に見てやるものか、と。


それ以来、風の谷のナウシカが放送されているのを見かけると、あの時の苦い思い出が蘇り、いてもたってもいられなくなるのである。今はさすがに24歳にもなったのでナウシカ様に嫉妬することはないと思うが、偶然テレビをつけたらやっていたから、どれ見てみるか、くらいのテンションじゃないと対峙できない気はしている。
できれば、「おうナウシカ~元気だった~?いやマジあん時はごめんだわぁ。」くらいのフレンドリーさで出会いたい。

しかし、現在一人暮らしの私の部屋には、テレビがない。このままでは不戦敗である。思い切ってTSUTAYAにDVDを借りに行くか、いや、それはなんだか悔しい。でも今この年齢で、もう一度ナウシカ様ときちんと向き合いたい。だって多分、24歳ってナウシカ様と同い年くらいでしょ?


少し、嫌な予感がしたので、念のために検索をかけてみた。








「ナウシカ  年齢」 













…16歳。













明日TSUTAYA行ってきます。