日付が変わってしまったが、今日は私とアニーさん(tricolor、john john festivalほか)の二人編成でのレコーディングだった。アニーさんは、細かいことを伝えていないにも関わらず、曲を作ったときから私がずっと思い描いていた音をすぐに出してくれた。そうだ、ずっとこんな音を乗せたかったんだよなぁ…と、ラフミックスの音源を聴いて、思わずニヤニヤしてしまった。そんなアニーさんには、5月27日の吉祥寺キチムと、6月28日の大阪・難波ArtYardStudio(ワンマン)でのライブ にゲストで参加していただきます。皆さん、是非遊びに来てね。



さて、話は変わって、ラッパーの話である。


5月1日からはじまった今回のレコーディングだが、本当に自分の大好きなミュージシャンの方々に囲まれて作業を進めている。スタジオも少し変わったところで録っているので、せっかくだからレコーディング中の風景や空気感を残しておきたいと思い、その様子も毎回ビデオやカメラで撮影してもらっている。
その撮影をしてくれているのはR君という青年なのだが、見た目も爽やかで非常に礼儀正しく、年下とは思えないくらい撮影も素晴らしくこなしてくれて、私はいつも尊敬の眼差しで見ている。そんなR君だが、昔は頭にバンダナを2PAC巻きにし、ブリンブリンのネックレスをつけてガチガチにラップをしていたのだと言う。マジILL。最高にILL。超KICK ASS。(言いたいだけ)いやはや、人生何がどう転ぶかわからないものである。

R君にラッパー期があったように、私にも色んな「期」があった。


「コンバースの靴ひもを根こそぎ派手なやつに変えちゃう期」

「ボブにして眉毛を薄くすればマジでカエラちゃんになれると思ってた期」

「変形アイテムをさらに自分流に変形させちゃう期」

「逆にユニクロしか行かないとやたらと言いたがる期」



そんな中でも、最もやりすぎてしまったのは、




「森ガール期」




である。「森ガール」と聞けば皆さん大体想像はつくと思うが、念のためWikipediaから引用して説明すると、


森ガール(もりガール)とは、ファンタスティックな文脈で「森にいそうな女の子」をテーマとする、ゆるく雰囲気のあるモノを好む少女趣味のありよう、またはそのようなファッションスタイルである。

コンセプトはあくまでも空想的なものであり、実際の森林での活動を指向するファッションではない。



とのことである。実際に写真が見てみたいという方は、是非「森ガール」で画像検索をしてみてほしい。

高校一年生の頃、私はまさに森ガールにどハマりしていた。茶色いボブヘアにゆるふわなパーマをかけ、ほっぺにはピンク色のチークをし、生成り色のトップスにロングスカート、ソックスとレッグウォーマーの重ね履きが定番であった。まわりにはあまりそういった格好をしている友人はいなかったため、たまに私服で遊ぶときには、よく褒められた。「すごい、花は森ガールを確立しているね」「妖精さんみたい」「今度いつも行くお店連れてって」など、それは女子高生の自分が悦に浸るには充分すぎるくらいの褒め言葉だった。
そこで満足しておけば良いものを、人間とは不思議なもので、何をするにも褒められるとさらに欲というものが出て来てしまう生き物なのである。




もっとオリジナルな森ガールになりたい――。




そこからである。深い森で迷子になってしまったのは。

手始めに私は、なぜか生成りのレースの紐をレッグウォーマーにぐるぐると巻き付けることにした。決して細いとは言えない足だったため、巻き付けるというよりもむしろ縛り上げると言った方が的確かもしれない。想像しづらいという方は、チャーシューを想像していただければ、まぁ大体事足りるだろう。

これで下半身はだいぶ派手になった。となると、次は上半身である。
下半身に負けないぐらいのパンチが欲しい。しかし、上半身も色々としてしまうと、少しごちゃごちゃしてしまう。ここは一点豪華主義で、変わったネックレスなんていかがだろうか。素材さえ決まれば、革のひもでぶら下げて、オリジナルのネックレスにしてしまえば良い。そこで森ガール関取は考えた。







鳥かごなんてどうだろうか――。






今考えると、完全に頭の大事なねじを森の奥に置いて来たとしか思えない発想である。大体私は鳥が大の苦手である。なぜ鳥かごをぶらさげたのか、まったく理解できない。しかしそこは完全に森ガール脳になっている関取、「あのね、幸せの青い鳥がね、いつでも帰ってこられるように」とか思っていたのかもしれない。ちなみに今じゃ青い鳥と聞いても、「おう、ツイッターのことだな」くらいにしか思わない。それもそれで寂しい話ではあるが。


上半身もこれで完成した。あとは首から上の部分である。顔は、メイクでどうにかなる。ではあとは何か、ヘアスタイルである。ゆるふわのパーマをかけてはいるが、+αで何かつけたい。こちらもパーツさえあれば、ヘアピンにボンドでつければ、お洒落なヘアアクセサリーになるだろう。そこで再び、森ガール関取は考えた。







どんぐりなんてどうだろうか――。






それもリアルどんぐりである。今考えると、完全に頭が麻痺してしまっていたのだろう。どんぐりのヘアピンなんて、もはや罰ゲーム以外の何ものでもない。今やれと言われたら、迅速に、そして丁重に、何より確実にお断りする。


こうして関取のオリジナル・森ガールスタイルは完成したのであった。リアルにこの格好で電車に乗っていたし、ハチ公前で待ち合わせもした。待ち合わせ場所に到着した友人の一人は言った。「ムーミン谷にいそうだね」と。そして、もう一人の友人は私の姿を見てこういった。









「いやマジのやつじゃん」










どんな言葉よりも正直なその言葉に、私はハッとした。その「マジのやつ」にどんな意味が込められていたのかはわからない。だけど、確かにハッとしたのである。「マジになりすぎた」と。それから少しして、私は森ガ―ルをやめた。



今ならわかる。引き算の美学というものが。
欲張って足し算ばかりしすぎると、本来の目的がぼやけてしまうのだ。今回のレコーディングでも、この引き算の美学は大いに役に立っている。ありがとう森ガール期。ありがとう鳥かご。ありがとうどんぐり。


おかげでとても素晴らしいアルバムになりそうだよ。