東京は新宿、雨上がりの曇天、華の金曜日。

今日は朝からバイトだった。パソコンに半日向かっていたので、身体がどうしようもなく重い。それでもこの石のようになった肩に、私はユニクロで買ったセール品をぶら下げてとぼとぼと大都会・新宿を歩いていた。(パンツ2本とTシャツ3枚で5000円くらい。激安。)

スーツを着た社会人の人々とすれ違う度に、色んなことを思う。私はどんな仕事をしている人に見えるのだろうか。プー太郎に見えるのだろうか。それとも、社会人らしく見えているのだろうか。楽器を持っていないと、いまいち自分がわからなくて、思わずうつむいてしまう。

街の端々では、これから飲みに行くのであろう新卒1年目と思しき集団が、居酒屋のキャッチにつかまっている。きっとどこに行っても楽しいよ、と思いながら、眩しすぎる彼らに目が眩みそうになり、私は逃げ込むように紀伊国屋書店に入った。

店の前に置かれたワゴンには、又吉先生の新作がズラリと並んでいた。可愛らしいお洒落な女性が、パネルの写真をスマホで撮っていた。ファンなのだろう。その横では、待ち合わせをしているのであろう、高級そうな着物にルイヴィトンのバッグを持ったホステスらしき女性が2人、何やら談笑をしていた。すれ違うと、良い香りがした。女の香りだった。

店内に入ると、一人の小綺麗なお爺さんが立ち読みをしていた。新宿飲み歩き散歩、みたいな本を、食い入るように見つめていた。妙にホッとして、私もその本を手に取ろうと、お爺さんの斜め後ろに立ったその時である。









「ブッ」







…屁であった。



それは、清々しいほどに美しい、なんの濁りもない、絵に描いたような屁の音であった。

私は感動した。こんなにも美しい屁の音があるのかと。何しろ清潔感があった。健康的なスタッカートだった。匂いもなかった。何よりお爺さんの動じなさが凄かった。確実に、誰に聞いてもそのお爺さんがこいたのに、全く動じないのである。よく見ると、若干尻が後ろに突き出ていたような気もするが、もともとややや腰が曲がっていたことあり、そんなこと今更どうでもよかった。

そして何より、私はなぜか妙に安心した。名前も知らなければ、話したこともない。何にも彼のことは知らないけれど、あぁ、きっとあのお爺さんは長生きするなぁ、と思ったのだ。本当は何かの大病を抱えているかもしれない。奥さんが亡くなっているかもしれない。それでも、私が見たお爺さんは紛れもなく人として健康だった。周りのことを気にせず、好きなことをするその姿勢は、今日の私には、どうしようもなく輝いて見えた。カッコイイと思った。


よく、友人達と飲んでいると、好きなタイプはどんな人か、という話になる。私はいつも、「心身ともに健康で、サバイバル能力のありそうな人」と答えている。しかし、「例えば?具体的にどんな人?今まで出逢ったことはあるの?」と聞かれると、うーん、となってしまっていた。しかし、今なら言える。あのお爺さんがタイプだと。というか、ああいうお爺さんになれる人がタイプだと。


華金の新宿に怖気付きそうになっていた私に、お爺さんの屁が勇気を与えてくれた。まるで音楽のようだ。思わぬところで耳にした誰かが、勝手に元気になったのだ。最高にPOPだ。これこそJ-POPだ。いや、J-PUPか。









J(爺さんの)-PUP(プップ)








うわー、全然うまくないわー、面白くないわー。でも許して、華金だし。





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今週も皆様お疲れ様でした。