58日、今日は母方の祖母の命日だ。

 

私は本当に超が何個ついても足りないくらいのおばあちゃんっ子だったので、亡くなった時は本当に一生分の涙を流したじゃないかと思うくらい泣いた。今でも一ヶ月に一回くらい、祖母とのことを思い出して涙が止まらなくなる時がある。ポロポロと泣くというより、嗚咽混じりに泣く。自分でも不思議なくらいだ。ついちょっと前も、たまらず夜中に母に電話をしてしまった。

 

私は霊感とかはまったくないのだが、祖母に関してはその死後、何度か不思議な経験をした。もしかしたらよくある話なのかもしれない。でも、普段まったくそういったことが起きない自分にとっては、やっぱり特別なことなのだ。

 

一番最初は祖母が亡くなってから、火葬場に向かう途中の車の中だった。涙が止まらず一睡もできないまま車に揺られている私を見て、「そんな顔じゃ安心してあーちゃん(私は祖母をそう呼んでいた)が天国に行けないよ」と母が言ったので、私は目を閉じた。そしてたぶん、夢を見た。でも、夢という感覚とは違う何かだった。今でも鮮明すぎるくらいに覚えている。

 

真っ暗な、穴の底みたいなところに私はいた。すると真っ白いワンピースを着た祖母がやって来て、何も言わずに私のことをギュッと抱きしめてくれた。その瞬間、今までのありとあらゆる思い出を写した写真たちが、竜巻のように私たちの周りをグルグルと物凄い速さで包み込んだ。

一緒に行った水族館、買ってもらったらっこのぬいぐるみ、ドイツ旅行、由布院の温泉、夏休みに作ったコロッケ、祖母の飼っていた金魚のむさし、他にもとにかく、たくさんの思い出がそこにはあった。一枚一枚が走馬灯のようにまぶたの裏に映っては消え、映っては消えていった。そして竜巻が穴からさす光の方へ綺麗に消えた時、祖母はいなくなっていた。その瞬間目が覚め、私はまた号泣していた。祖母が最後に会いにきてくれたのだと思う。

 

次は大学生の夏、友人の家に泊まっていた日の夜だった。

午前3時くらいだったと思う。なぜか一人目が覚めてしまった私は、急に祖母のことを思い出してまたしても突然号泣してしまった。友人は寝ているのに、声が出そうになるほどの涙が止まらず、急いでとりあえず風呂場に逃げ込んだ。なんで急に思い出したのか自分でもわけがわからず、母に電話したところ、「そっか、会いにきただね」と彼女は言った。当時の私は自分の毎日を楽しく過ごすことに必死ですっかり忘れていたのだが、その日はちょうど、お盆の時期だった。

 

そして一番最近だと、ちょうど一年前の今日。私はこの日、メジャーデビューをした。メジャーデビューの日は、本当はもう少し早い予定だった。たしか当初は3月、そして少しずついろんな事情があってずれ込んでいき、結局58、祖母の命日になった。これはスタッフさんにもちろん話したことはないし、誰も知らない。本当にたまたま、偶然。でもなぜかそうなった。私はなんだか、勝手に運命めいたものを感じた。

 

そもそもなんでメジャーデビューしたか、しようと思ったかという話は、散々インタビューなどでも話させていただいているのだが、めちゃめちゃ簡単に言うともっとお茶の間の方々に歌を届けられるミュージシャンになりたいと思ったからだ。メジャーにはいろんなチャンスが転がっているし、そこでいろんな経験をして、いい曲書いて、売れたら、紅白歌合戦にもいつか出られるかもしれない。なぜそんなに出たいかと言うと、天国の祖母に届けたいからだ。祖母は紅白が本当に大好きだったいつか紅白に出られたら、その時やっとはじめて、天国の祖母に私の歌が届くような気がしている。


祖母は、私が今こうして歌を歌っているのを知らない。「花ちゃんは将来何になるのか楽しみだ」といつも言ってくれていた祖母は、私が音楽をはじめる前に亡くなってしまった。まだバスケをやっていた頃までしか知らない。歌を歌っているんだよ。ちょっとまだ時間かかりそうだけど、いつか紅白出るから待っててね。

 

この記事を書きながら、私はまた泣いている。涙で画面が見えないとはまさにこのことかというほどに。きっと毎年こうなんだろうな。


58日は、特別な日だ。