胸が痛いのである。
こんな気持ちはいつぶりか、とにかく胸が痛いのである。

さかのぼる事約一週間、私は夢を見た。
長身、整ったお顔立ち、テレビで拝見しているといつも物腰柔らかで謙虚でいらっしゃる、超素敵な某俳優さんとのロマンスの夢である。そう、東出昌大さんである。(以下はあくまでも私が勝手に夢で見た内容である。どうか生温かい目で見守りながら読んでほしい。)

夢の中で私とピガシデさんは(夢の中でなぜかこう呼ばせていただいていた、失礼極まりない話である。)凱旋門の前で見つめ合っていた。
ちなみに現実ではその身長差実にぴったり40cm、149cmの私と189cmのピガシデさんがハグしようものなら非常に滑稽な絵面になるはずなのだが、そこは流石の夢である。
身長差などなんのその、きちんと良い感じで顔の位置も合っていて、その距離約20cm、15cm、10cm…迫り来るその端正な顔立ち。
バックではホイットニーヒューストンのあの歌が爆音で流れている。(エンダーーーーイヤーーー)
まさに世界は私たち2人のものといった空気の中、宇宙の果てまであと数センチという距離のところで、ピガシデさんはそれを制止するように私を抱きしめて、美しい涙を流しながらこう言ったのである。



「ごめん、俺、実は中島みゆきさんと結婚してるんだ」


?!!?!



!?!??


縦の糸はあなた、横の糸は私じゃなかったの!?!?



これはいくらなんでも花咲舞が、いや関取花が黙ってない!ニクイね三菱、いやしかし!!そんな時代もあったねといつか笑える日が来るかしら!?!?燕よ高い空から!!教えてよ!!!!地上の星を!!!!!!


混乱と悲しさと到底かなわない相手との結婚の事実を聞かされ、私は溢れる涙だけを引き連れて、凱旋門の前の道をゴロゴロと転がっていった。(森光子さんのでんぐり返しの超高速版を想像してくれ)そしてバックで流れている曲は、いつのまにか中島みゆきさんの時代に変わっていた。

映像もカラーから白黒に変わり、スローモーションになっていた。とにかくひたすら転がる私。うろたえるピガシデさん。遠ざかる凱旋門。まわるまわるよ時代はまわる。転がる転がるよ花は転がる。

そしてゴロゴロと転がっている最中で目が覚めた。はて、これは夢か…しかし寝起きで朦朧とした意識の中、それでも私は確かに思った。


「あとちょっとだったのに」


「もう一度ピガシデさんに会いたい」


私は夢の中でもう一度ピガシデさんに会うために、願わくばもっと鮮明なお姿で登場していただくために、枕の横のスマホで速攻検索を開始した。

「東出昌大」

ズラズラと画像が並んで出てきた。ちなみにこの時点でかなりドキドキしていた。完全に鼻息が荒くなっていたと思う。スクロールをしながら、より夢の中で会った時と近い姿のものを探していく。

サッ


サッ



あっ…


お一人で写っている写真の中に、続々とごちそうさんの時の画像が紛れ込んできた。

私は気付けば目をそらし、急いでホームボタンを連打して、その画面を閉じていた。



…なぜだろう、胸が痛いのである。


ピガシデさんの奥様といえば、勿論私も大好きな女優さんである。というか日本国民ならみんな大好きだと思う。そして、日本一美しく、もはや天に祝福され選ばれたお二人だと思う。

それなのに、そんな素敵な奥様とは真逆の人間の私みたいなやつが、共通点なんて哺乳類であることくらいなもんの私が、方やパリコレでランウェイを歩いていると言うのに、まるでレゴブロックみたいな体型の私が…あろうことか…少し、ヤキモチを焼いてしまっていたのである。

そこからはもう地獄の自己嫌悪タイムである。
大体私が凱旋門の前でピガシデさんといい感じになった時点でおこがましい。大体なんだ、ピガシデさんてなんだ。GONINサーガだったら速攻ぶち殺されてるぞ。

そんなわけで二度寝をすることもできず、もう二度とピガシデさんにも会えぬまま、胸の痛みだけを残して私は夢から覚めたのであった。
ちなみに一週間経った今でも、まだちょっと胸が痛い。あと全然関係ないけどうちの母親は昔オダギリジョーさんに夢の中で抱かれたことがあるらしい。


はて、次はどんな夢を見るのだろうか。最近寝る前にプロレスの動画ばかり見ているから、誰かと闘う夢でも見るかもしれない。イメトレだけでもしておくか。


クリスマスを目前に控えた都心の町並みを眺めながら、私の頭の中はブッチャーとハンセンとアンドレ・ザ・ジャイアントで埋め尽くされているのであった。