月別アーカイブ / 2021年10月




この頃

子どもの発達心理についての本を読み漁っているんですが、その中で

「性の揺らぎ」

という言葉が頭から離れずにいます。

この秋に公開された

『トムボーイ』もそんな子どもの心を描いた作品であり

話題となった『燃ゆる女の肖像』を撮ったセリーヌ・シアマ監督の

長編2作目に当たる作品です。


女の子として生まれたものの

男の子になりたいロールは

周囲の友達に男の子として見てもらうために

水遊びやトイレにいたるまで様々な無理をしていくのです。


ロールがトランスジェンダーとして

男の子になっていくという具体的な感情は描かれないのですが

確かにこの歳の頃、自分も性の揺れを経験したことを思い出したのです。


きっかけは、薬師丸ひろ子が銀幕デビューを果たし、好きになり

『セーラー服と機関銃』を真似てベリーショートにしたことでした。


そもそも両親は男の子を望んでいたので青色の服や小物、ズボンばかり私に与え

そこにショートヘアとなれば、クラスでは恰好のイジメの対象となり

「オトコオンナ」とあだ名が付く中で

クラスメイトの女の子からキスをされ

自分の心は男の子かもしれない

自分は女の子が好きかもしれない

と誰にも言えずに悩んだ遠い記憶を。


性教育者の村瀬先生の本によると

胎内では遺伝子により男女の形に変化していき、

その後、脳が男女に形成されていくのだそう。


だから、脳と身体が合致しない人だって生まれるという。


これを知るだけで無知による偏見がはびこっているのが分かるのです。


そう考えるとこの映画のこともより理解出来ると思うんです。

では自分は偏見をまったく持っていないか?


そこは意外なところから首を傾げることにもなり。


6歳になった娘は、最近、「ボク」と自分のことを言い始め

自分の中で小さな衝撃が走ったのは事実だから。


それでも「女の子はワタシと言わなくちゃ」と伝えるのも違う気がして

「どうしてボクと言い始めたの?」とふんわり聞くと

「べつに、なんかカッコイイから」という返事で、

しばらく見守ることにしたのでした。


そもそもボクは、男の子の主語であると考えるのも

間違っている気がし始めました、とさ(^^)



田中みな実さん映画初主演となる

『ずっと独身でいるつもり?』


『おいしい家族』のふくだももこ監督が

産後初の監督作として選んだのが

様々な環境、生き方をする女性たちへの

応援と自由を願い作った作品に思えました。


原案の雨宮まみさんとお仕事をした時のことを思い出し

色んな人との付き合いの中で

色んな人の声が邪魔をして

自分自身の幸せに気付けない状況になる

年齢でもある30代中盤は特別だよな、

と映画から過去の自分と再会した気になりました。


どうなんだろうか。


女性の36歳は難しく、何故かというと

「自分は子供が欲しいか?否か?」

という問いに

否が応でも向き合う羽目になる。


だからその時、付き合っていた彼氏が居るなら

「この人と未来、家族を持ちたいだろうか?」

とか

「この人は私と結婚する気あるんだろうか?」

とか、考えるわけです。


しかも仕事でも微妙な年齢だった気がする。


未来、私は何者になりたいのか?


どんな仕事の仕方をしたいのか?


とか忙しい日々の中で考える年頃。


無敵だった過去と気付けばおさらばしてて

オバサンと言われることに躊躇し

女としては悩ましい30代中盤以降よ。


年下から好かれるのもこの歳くらいからかもしれない。


というよりその年頃になると自分と同い年、

もしくは年上のイイ男は、すでに人様の夫です。


子宮が叫ぶ、どうするアンタは?と。


それでも私はあの歳の頃はモヤモヤしながら

迷ってさまよって

強がって泣きっ面に蜂で

もう戻りたく無いけれど

自分の中では

えらく愛おしい歳だったと

確信している。


自分の人生だから誰かに決められたくないし

気持ちだって出会う人により変わるんだから

思いのままに生きたらいいじゃん。


幸せかどうかはそもそも自分が決めるもんだ。


と映画の中で街中を走る女の子を見つめながら

負けるなよ、とエールを送っておりました。


そうよ、映画のように職種とかじゃなくて

最高の笑顔でいられたらそれこそ幸せまとって生きている証。




「この原作で救われました」

と舞台挨拶で語ったのは脚本、監督をつとめた首藤凛監督。


好きな人の好きなものを取る、

好きな人の好きなものを奪う、

この言い回しの方が本来のテーマに沿っているかもしれない

綿谷りささんの原作を映画化した

『ひらいて』は10/22に公開されます。


山田杏奈さん扮するクラスの人気者・愛が片想いしているのは

作間龍斗さん演じるたとえ。


けれど彼には秘密の恋人がいて、それは芋生悠さん演じる同級生の美雪。


それを知った愛は美雪の全てを手に入れようとするのです。


ねじれた恋の形というセンセーショナルな物語は

俳優たちの演技と相まってラストまで惹きつけられ、しばらく脳から離れないものでした。



これは私が当時、カウンセリングの場で出会った

あるケースに少し近い部分があるので

秘密厳守もあり、話を混ぜて脚色して綴ります。


彼女は、一見、大人しそうなのに

恋愛面は異性に体を許しやすく

ある時、同性とも経験をしたというのです。


けれどそれは性的嗜好でも同性愛でもなく、

好きな人と好きなものを共有したいという思いからでした。


どう考えても遊び人の男と付き合っているのですが、

彼女は彼と離れたくなくて

ある時、彼から女同士の関係を見たいと言われたそうです。


彼女は彼とその女性を共有していると言っていました。


映画とはズレるのですが

果たして共有されているのは誰なのか。


ただ人は、好きな人が好きなものを好きになろうとする心理があります。


好きな人を真似たり、好きな人が好むものを好きになることで

好きな人に近付いた気持ちになったり

自分のコンプレックスを隠すことが出来たりするんですが

これを「同一化」と言います。


実は「同一化」って無意識に誰もが人生で経験している行動。


小さい子供が母親のものを欲しがったり

メイクの真似をしたりするのを見たことはありませんか?


そんな人間の秘めたる感情を掘り下げた作品が
『ひらいて』


あの時の彼女は今どうしているんだろうか。


ふと、思い出しました。












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