こちらを見つめているおばあちゃんの瞳を見て、わあ、綺麗だなあ、と驚いたのを鮮明に覚えてる。

記憶や思い出、何も分からなくなっても、それでもおばあちゃんの目は、あまりにも澄んでいて、そのたった2つだけが、病室のたくさんの中で、どれよりも綺麗だった。
それは本当に、驚くほどだった。

涙がこみ上げてくるほど、綺麗な瞳だった。

私の目はおばあちゃん譲りかなあと、そのときに思った。
ただの遺伝。先天的な。
わたしとおばあちゃんは全然違う。
おばあちゃんみたいに美しくない。
されど遺伝。


何年も前のはなしですが。
大好きな映画を作る人に、何度目かに会いに行ったときのこと。
覚えてないだろうなと思ったら、
「覚えてるよ。ダイヤモンドの瞳の桜子ちゃん」
と言われたことがあった。

驚いた。
息をするように詩的な言葉を吐くひとだったけど、それにしてもあたりにも不意打ちで、喉元まで出てきたのは、
いいえ、わたしのなんて偽物です。
そんなに綺麗なものじゃないんです。
みたいな言葉だったけど、もちろん言えなかった。


瞳の綺麗なひと。
綺麗だなあと思う。

「おめめちゃんきれいよ。」

"綿の国星"という漫画の、この台詞がかわいくて、好きで、きれいなおめめちゃんを見ると、まねして言いたくなってしまう。

おめめちゃんきれいよ〜


ふとした、何気ない瞬間に、遠くを眼差すその瞳や、もっと奥まで、見つめようとする瞳。
その瞳には何をうつしているの。うつしてきたの。

この間、おじいちゃんの瞳を見て、ふと、綺麗だなあと思った。
動物の赤ちゃんみたいに、濁りなく澄んでいて、きらきらしていた。
おばあちゃんを思い出した。

見つめようとすればするほど、反射してきらめく。

目の前のそのきらめきを、逃すことなく宿していて。





2020.5


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