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(家の中から「ゴキブリ」を完璧に追い出す方法はある)

 2015年10月、広島市中区流川町のメイドカフェなどの入った雑居ビルが全焼し3人が死亡した火事で、ゴキブリを駆除するために1階のゴミ置き場付近で「アルコールスプレーをまいたうえ、ガスバーナーを使用していた」ことが捜査関係者への取材で判明したと、各報道機関が報じている。


 普通なら殺虫剤を使うところだが、なぜ「焼き殺そう」なんて発想が生まれたのか? 


そのぐらいゴキブリが嫌いだったのか? 

あるいは、いくら駆除しても絶滅しないゴキブリに業を煮やしたのか……。


 ネズミ算ならぬ「ゴキブリ算」を知っているだろうか?

 チャバネゴキブリを例にしよう――。

1匹のメスゴキブリは、約1カ月ごとに卵を1つ産む。

この卵には平均40匹のゴキブリの子どもが入っており、産卵から2週間で孵化、成虫になるまでに1カ月がかかる。


 最初1匹だったゴキブリは、半月後には「1匹+40匹」で41匹。生まれたこどものうち半数の20匹がメスだったとすると、その1カ月半後には800匹が誕生。800匹の半数の400匹のメスがまた卵を産んで……と繰り返したとき、なんとスタートから5カ月後には32万匹が誕生することになる!


 「1匹見たら30匹はいると思え」の教訓は甘い。

一度でも巣を作られてしまえば、「家の中はゴキブリだらけ!」ということにもなりかねない。


 だが、「家の中のゴキブリは全滅できる!」と断言する男がいる。『ゴキブリ退治に殺虫剤はつかうな!』の著者・大久保柾幸氏だ。


「ゴキブリゼロ」を達成する3つのこと

 大久保氏は、1997年に福岡市で厨房向けゴキブリ対策サービスを行う「アースウェル株式会社」を設立した。以来、殺虫剤を散布しない施行を続けており、効果の出なかった案件はひとつもないという。

害虫駆除業者としてのノウハウは独自に構築・実践してきたもので、過去の業績とともに「ゴキブリゼロ」の言葉にも絶対の自信をもっている。


大久保氏が提言するゴキブリを全滅させる基本は、「掃除・環境改善・防除処理」の3つだ。


①掃除:日常行う「目に見えるところ」の掃除ではなく、家具の裏などの「目に見えないところ」のゴミや汚れを取り除くことで、ゴキブリの餌や隠れ場所をなくす。


②環境改善:ゴミや食材の保管場所を変えたり、家具などを掃除のしやすい配置にするなど、ゴキブリの生活圏を狭くし、行き場を失わせる。


③防除処理:行き場をなくしたゴキブリを確実に駆除する。


 この3つの方法の重要度を比率にすると「掃除:3」「環境改善:6」「防除処理:1」。

これが実行されていれば、駆除はもちろんゴキブリ繁殖の予防も可能だという。


 本書『ゴキブリ退治に殺虫剤はつかうな!』では、ゴキブリの生態を熟知したうえで、より詳しく掃除や環境改善の仕方を紹介している。

タイトルの通り、「殺虫剤を使わずに」害虫を一掃するための手順や方法は、非常に具体的だ。

一般家庭をエリアごとに分けて図解していてわかりやすい。

ゴキブリ対策を始めよう!と思い立ったとき、本を開けばすぐに始められる。


 また、プロの視点から、粗悪な「安くて早い」駆除サービスが横行している理由を述べ、業者を選ぶ際の注意点までも列記している。

そう、実際の話、駆除業者にとっては、ゴキブリが一掃されてしまうと仕事が減ってしまう。

ある程度、時間が経ったくらいで、駆除したはずのゴキブリが再び現れてくれないと、商売にならないのだ。

 自力であれ業者に依頼するのであれ、この1冊がゴキブリ一掃のための参考書となるはずだ。


最終目標は「食の安全」

 ところで、著者の大久保氏は実は「大のゴキブリ嫌い」だという。

見るのも嫌な害虫を退治する仕事を、なぜ始めたのか?

 金融会社に就職し社会人となった彼は、当時、世間の注目を集めていた孫正義氏と会談するという僥倖に恵まれた。

このとき、22歳。孫氏は彼に「世の中の役に立つ仕事をしてください。そして、その業界でナンバー1になってください」とアドバイスしたという。

 孫氏の語った人生設計をモデルに、いずれ起業をと考えていた大久保氏は、28歳の頃、レイチェル・カーソン著『沈黙の春』を読んで強く心を揺さぶられる。

『沈黙の春』は、農薬が自然に及ぼす危険性を調査し、警鐘をならす内容で、アメリカでは半年で50万部も売れた本だ。

 そんな折、彼はネズミやゴキブリ対策のため、レストランなどの厨房で定期的に殺虫剤が撒かれている事実を知る。

殺虫剤での駆除は、短時間・少人数で行うことができる。

しかし薬剤の効果は、厨房はもちろん食器や食材にまで影響する。

そんな厨房で作られた料理を食べたくはない。


 殺虫剤を使わずに衛生管理ができる方法はないか? 


さまざまな文献を調べた大久保氏は、ついに農業の分野に「総合的病害虫・雑草管理(IPM)」という農薬を使わない手法を見出した。


 「病害虫の防除に関して利用可能なすべての防除技術を利用し、農薬(編集部注:殺虫剤)だけに頼らない適切な手段を総合的に講じる防除手法」であるIPMを、厨房の害虫対策に応用し、環境認証や衛生管理の手法までを融合させた体系を構築・発展させていく。

具体的なIPMの方法は、ケースバオケースであり専門的になってくるので、ぜひ本書で確認して欲しい。

 そうして、孫氏のアドバイスである「世の中の役に立つこと」と「薬剤に頼らない害虫対策」とを結びつけ、「これを一生の仕事にしよう!」と覚悟を決め、31歳で会社を興した。


 大久保氏の会社は、厳密にいえば「害虫駆除業者」ではない。「環境改善サービス・衛生管理コンサルティング」という意識で業務を行っている。

そして、彼の最終目標は、「食の安全」だ。殺虫剤に頼らない害虫駆除で環境を変えれば、衛生的な厨房で安全な食べ物が調理できる。そこで働く人たちも、もちろんその店へ食事に来るお客様も安心を得られる。

 この手法によって他の害虫対策にも変化が起こり、人々の健康被害の防止、食の安全・安心、ひいては地球の環境保全までつながると、大久保氏は考えているのだ。

彼の夢は、「ゴキブリ対策で地球を守る」。

会社名「アースウェル」も、その夢からつけられたもの。


小さな厨房の環境整備からつながる世界への視点が、この本を読むことで広がることを、彼は願っている。


(引用終わり)