野矢茂樹さんの『哲学な日々』(講談社)に、子育てについての記述があります。

世間では子どもは「ほめて育てる」とよく言われます。

しかし、著者はそれを完全に否定し「ほめるのではなく、共に喜ぶ」ことが重要だと書いています。

_var_mobile_Media_DCIM_104APPLE_IMG_4505.JPG

また、「ほめて育てる」ことに弊害があることは、過去のるいネットの投稿でも紹介されています。

では、著書から全文を引用します。


ほめるのではなく、

 「ほめて育てる」と、よく言われる。
確かに、ほめられるとやる気が出る。

だから、子どもを伸ばそうと思ったなら、ほめることはとても効果的である。
しかし、「ほめて育てる」という方針は根本的にまちがっている。

 ほめられて育った子が、ほめられるためにがんばるようになる。
そしてそこから抜け出せない。

これが最悪のシナリオである。

例えば、一人暮らしをしたとしよう。
もしほめられるためにがんばることしかできないならば、誰もほめてはくれない部屋の掃除など、がんばる気にはならないだろう。

部屋がきれいになるとうれしい。
このささやかな達成感があるから、掃除をする。

何かを為すときには、そのこと自体がもたらす達成感こそが、その行動の原動力になるのである。

この、自分自身の内側から生み出される駆動力を、「ほめられるためにがんばる」という行動原理は奪ってしまう。

 ほめる者はほめられる者よりも優位に立つ。
だから、ほめられたいと思う気持ちは、自分よりも優位の者を求めることにつながる。

子どもは大人たちを出し抜き、追い越していかなければいけないのに、ほめられようとして上目づかいになり、ほめてくれる人に自ら進んで隷属しようとする。

ほめて育てようとする人たちは、おそらくは無自覚のうちに、そうして子どもを支配しようとしている。

 では、どうすればいいのか⁈
ほめるのではなく、共に喜ぶこと。
何かがうまくできたなら、一緒に喜んで、子どもが感じている喜びを増幅する。

そうして、その子が自分の内側から感じる喜びを引き出してあげるのだ。
 
 何かを為したことがもたらす喜びが、ほめることによって、ほめられた喜びにすり替えられてしまう。
もっと子どもの内側から沸いてくるものをだいじにしなくてはいけない。

 振り返って、私たち大人はどうか。

今も自分の内側から、泉はこんこんと湧いているだろうか。

(引用終わり)