これから儲かる業界とそのピーク? 
未来に後悔しないために今、何ができるのか?
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2019年から2038年までの20年間について、象徴的な業界をとりあげ、それぞれ何が起きるか予想しうるものを具体的に書いた。

まず、目次を見てもらえばわかるとおり、「コンビニエンスストア」「自動車産業」「エネルギー」「インフラ」「音楽」「宇宙」といったものから、「AI」「終活」「教祖ビジネス」など、多様な範囲をカバーしている。

 本書の特徴は次のような点だ。

 ・統計・データをもとに書いている

 ・データ源を、できるだけ誰もがアクセスできるものとしている

 ・各年度で一つの業界を広範囲にとりあげている

 また、各年では、データからいえること、各業界の取り組み、これから売れそうな商品の予想、ビジネスチャンスを網羅するよう努めた。

 本書はビジネスパーソン全般を対象としている。現在では、ほぼすべてのビジネスパーソンが、将来の仮説を視座としてもたねばならない。いま属している業界から異業界に転職する可能性もあるだろうし、あるいは、会社の業態が転換するかもしれない。その意味で、さまざまな業界情報に触れる意味が大きくなっている。

 さらに、現在では、すべてのビジネスパーソンに企画力が求められている。固定化した仕事をこなすだけで終わりではない。次にはどの分野でビジネスチャンスがあるのか。一介の営業部員でも、経理部員でも、考えなければならない。

 本書は、それぞれの業界における傾向をできるだけデータから説明するよう努めた。さらに、できるかぎりデータ源も記載した。これは読者が再検証できるようにしたかったためだ。私がAと解釈した事柄でも、Bという違った解釈もできる。気になった業界については、周辺情報を含めて、ご自身での検証を勧めたい。

人生100年時代の自分の見取り図

 この手の未来予想には二通りあって「空飛ぶ車が街中を行き来しています」というものと、「年賀状は今後10年間でさらに減少していきます」というものだ。前者は変わりゆく現代をドラマチックに描くもの、後者は着実だが地味な変化を描くもの。

 これらの予想を、自分の仕事に役立てるとしてみよう。観念的で急進的な予想は、実務上の施策を想像するのが難しい。しかし、後者ばかりでもつまらない。そこで、本書では、五分五分になるよう努めた。実務家向け、かつ、読み物としても面白いようにした。

 私は、そもそも仕事で、やむなく、さまざまな会社の情報を集めたり分析したりせねばならなかった。そしてその後、メディアで短時間のうちに分析結果を報告するようになった。日ごろの業務で、多くの業界の人に出会ったり、インタビューしたり、毎日のように書籍を読んだりしており、本書はそれらをまとめたものだ。

 ところで、私はこれからの時代の特徴を次のようなフレーズで考えている。そして、これが、自分が属していない分野の知見も必要になってくる──つまりは、本書の意義だが──理由でもある。

(1)人生100年、会社10年
 ひとびとはこれから100歳まで生きるようになる。しかし、会社というプロジェクトの寿命は10年と短くなっている。一つの職業の寿命がひとびとの寿命よりも短くなったとき、ビジネスパーソンは複数のスキルを身につけなければならなくなる。

 もちろん、ほんとうにぴったり100年なのか、10年なのか、という長さは厳密には重要ではない。大切なのは、世界を俯瞰し、これから伸びそうな分野、縮みそうな分野を見極めて、自分なりの見取り図と戦略を描くことだ。

 100年÷10=10だからといって10ものプロフェッショナル分野を構築するのは難しいかもしれない。ただ、すくなくとも複数、異分野の知見をもっていれば、スキルの掛け算はできる。さらに、一つの会社ではなく、複数のコミュニティに属し、異なる発想を摂取しなければならない時代に私たちはいる。いま属する業界だけではなく、積極的に他業界の情報収集が必要だ。

(2)つまらないβ主義
 かつて、「リーンスタートアップ」が流行した。これは単純にいえば、商品を未完成の段階で市場に出し、顧客からのフィードバックを受けながら改善していくものだ。これはβ主義ともいうべき態度だ。

 しかし、これだけ市場に参入する企業が多くなってくると、むやみやたらに商品を発売してもうまくいかない。顧客の声を得るにいたらない。もちろん撤退すらその速度で繰り返していって、いつかは当てる多動力、出たとこ勝負力は重要だ。

 ただせっかく多動力を発揮するなら、同時に、勝負する領域についてデータを徹底的に調べ、仮説に基づいた未来予想をもって進むにこしたことはない。すくなくとも時代の流れに反していなければ、反応はある。努力は比較的に報われる。

 新規事業への参入時に、「既存の技術を応用したもの」「新規の技術を開発するもの」という軸と、「これまでの業界を攻める」「新たな業界を攻める」という軸がある。もっとも良いのは、「既存の技術を応用したもの」で、「新たな業界を攻める」ものだろう。成熟産業であるほど、イノベーションが進んでいないから、新たな技術でそれまでの常識を覆せる可能性が高い。その意味でも、他業界の動向は、ビジネスチャンス発想のきっかけになるだろう。

 こういった態度は、世界を激変させるような0→1を創造するわけではない。ほとばしる情熱でサービスを作ってニーズを新規創造するわけでもない。ある意味「つまらない」態度かもしれない。しかし、実務家や凡人にとって、経営・ビジネスとは負けないためのゲームだから、これは大事な態度だと私は思う。

(3)目指すは「何屋さんかわからない」仕事
 とはいえ、業界横断知識をもつことは、"つまらない"金儲けだけにはとどまらない。これからの価値創造は、そういった立脚点のふらふらした個人から生じるのではないだろうか。

 かつて、コンサルタントを名乗る私に、「カタカナ職業のひとは信用しないようにしている」とあからさまにいうひとに出会った。ぱっと何をしているひとかわからなければ、"うさん臭い"そうだ。

 私はなんの資格ももっていない。それは狙ったわけではなく、資格の必要性がわからなかったからだ。ただ結果からすると、カテゴライズされた価格テーブルに乗らなかった。「中小企業診断士」「社会保険労務士」「行政書士」と名乗ってしまうと、企業にとって、その士業に支払う価格レンジが決まってしまう。

 いや、価格テーブルなど、実は些末なことだ。知が多様に広がっていく世界──違う言葉で「複雑系」といってもいい──においては、ジャンルの横断、越境、溶解が必要だ。まわりを見てみればいい。現在、社会を切り取っているひとはどんな職業に当てはまるだろうか。一つだけに当てはめられはしない。

 科学者で、経営者で、アーティスト。写真家で、コンサルタントで、大道芸人。会社員でありながら、マンガを販売し、社会についてメディアで発言する──といったことが起きる。テクノロジーを感情で語ったり、世界のリアルな経済状況を旅しながら語ったりする。そんなハイブリッドな知が求められている。

 それは世界がもはや、一つの知からの堅苦しい解釈を忌避しているように私には思われる。

新商品創造にも、事業開発にも、異質なる観点が必要なのだ。目指すは「何屋さんかわからない」仕事といってもいいすぎではない、と私は思う。

 これから20年分、20の業界をとりあげる。

本書が、好奇心を満たすだけではなく、読者が変わりゆく世界に身を投じ、批判的な思考を通じて、これからの稼ぎ方、これからの闘争を遂行する起点になればうれしい。


(引用終わり)