月日は平成から令和となって3年の時が流れる。

三ノ宮駅近くの喫茶店で紅葉と桜が入り浸っている。

あの日から少しずつ現代に馴染んできたが、決して忘れることの出来ない戦争への想いを何とか遺そうと本を制作中だ。

何せ、広島や沖縄ならともかく岡山に関する資料は少なく、大学生となった紅葉は専攻分野とは別に図書館でそういった類いの書物を読み漁っている。

そこへ龍一と英人がやって来る。

「遅い!」

桜が叫んだ。

「わりぃ」

「女性を待たせるなんてどういう神経をしてんのよ!」

桜は龍一と英人に文句を言っている。

最近になって若葉と呼ばれるとつい反応してしまいがちで自分の名前を忘れてしまうのではないかと畏怖している。

「紅葉も何とか言いなよ!」

「紅葉じゃなくて若葉だろう?」

英人は訂正する。

紅葉と呼ぶのはこの世で龍一と桜の二人だけである。

「紅葉でも若葉でもなくてババァでいいだろう?」

龍一に紅葉は彼の足を踏む。

「いっ!」

「アンタだってその内ジジィでしょうっ!」

四人は喫茶店を出ると暫く高架下の商店街を歩いていく。

途中、樋口唐揚げ専門店でアツアツの唐揚げを買う。

「最近コロナで売上が伸び悩んでて助かるよ!」

涼子の息子で店長は声を掛ける。

「弱気になるんじゃないよ!」

奥の今から涼子が出てくる。

「私が店を切り盛りしていた方が辛いことはいっぱいあったわい!

「母さん!」

「時に兄さん?」

涼子は龍一に問いかける。

「はい?」

「そこの女とはもうヤったのかい!」

龍一は吹く。

「母さん!」

息子は止めに入る。

「アンタと和恵さんのことじゃないからいいじゃないかい!」

「夜な夜なヤってます」

何故か桜が答える。

「桜ちゃんっ!」

紅葉は叫ぶ。

「相変わらず賑かな人ね」

そこに幹子が現れる。

「いらっしゃい!」

息子は挨拶する。

「弥生のばあちゃん」

「マダムがこんな小汚ない店に何しに来たんだい?」

「母さん、いい加減にしてくれ!」

主人の墓参りついでに涼子の店で夕御飯のおかずを買いに来たんだけど失礼かしら?」

「そんなことはないっす!」

息子は幹子に謝る。

「能天気な華子はうまく付き合えたが、幹子とは死んでも相容れん!」

「それは多分来世もじゃないかしら?」

涼子と幹子は睨み付ける。

この二人は暫く大丈夫だろうと安心する紅葉。

「行くぞ」

龍一は紅葉の腕をひいて彼らはまた歩き出す。

「仲本さん。またウチに来てお話しましょう」

幹子はあの時と変わらない笑顔を見せる。

「はい」

紅葉は振り返り、一礼すると二人に背を向ける。