月別アーカイブ / 2019年06月

ある画家の僕物語19



グループ展の出品が決まり、控え目に言っても僕は有頂天だったと思う。



文章で書いているとなんだかトントン拍子に物事は進んでいくが、大学に入り2年半、父が亡くなってから2年が経っていた。



自慢ではないが僕は大学時代、飲み会というものに参加した事がない。

何故なら殆ど友人と呼べるような関係の人間がいなかったからで、一年の最初の頃こそ声をかけてくれる人間もいたが、後半になりそれぞれのコミュニティがぼんやりと出来上がると誰も僕には声をかけてくる事も無くなった。全く寂しくなかったと言えば嘘になるし、友人が欲しくなかったわけでもないが、プロになれるかどうかの不安を誰かに吐き出す事に時間を使うよりはその不安を自分の中で飼い慣らす事に時間を割く方が重要だったし、何より制作に没頭するには孤独は何よりも重要な条件だった。



少しかっこつけた表現をすれば、当時の僕は死にものぐるいで描いていたのだ。



2年といくばくかの時間闇雲にもがいて辿り着いたスタートラインが銀座の外れの外れ、薄汚れた雑居ビルの一室だったとしても

その時間が無駄ではなかったという現実が僕を救ってくれた。



何も知らなかったせいもあるかもしれないが、

不思議とグループ展の出品に対しての不安は無かった。



グループ展までの準備期間は2カ月、点数は2点。



そしてよくわからない保証金は5万円だ…笑



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ある画家の僕物語18

事務所の奥に消えたAさんは暫くするとお盆にアイスコーヒーを二つ載せて戻ってきた。

応接用のテーブルというには若干粗末なクオリティのテーブルにコースターを敷くこともなく無造作にグラスとクリープが置かれた。

Aさんはそれに口をつけるよりも先に再びタバコに火をつけ深く煙を肺の奥に吸い込んだ。
僕の顔にかからないようにという配慮なのだろうが、煙を吐き出す度に口をへの字に曲げて斜め上に煙を吐きだす仕草は今でも何故か良く覚えている。
断片的に残るかつての記憶の中でもさして重要とも思えないAさんについての記憶だが、それでも少し考えると、それは彼女の最も彼女らしい仕草の一つだった。

Aさんの提案は「グループ展」に参加してみないか、というものだった。

我々画家の展示形態はざっくり分けると
・個展
・グループ展
の二つに分けられる。
個展は言わずもがな一人の作家の単独の展示なのに対し、グループ展は2人から始まり多いものだと数十人あるいは百数十人なんてものまであったりする。

お笑い芸人の世界で例えると「個展」は冠番組を持つような事で「グループ展」はひな壇に呼ばれるようなものだと考えてもらえばいい。

若手のうちはひな壇やコンクールで結果を積み上げ、いずれ勝ち取らなければいけない冠番組を夢見て実力を蓄える姿は芸人も画家もさして変わらない。

そんな基礎教養とすらもら呼べないような些細な事も当時は理解していなかったが、自分の作品を売りプロのキャリアをどうにかしてスタートしたいと思っていた僕にとってはAさんの提案はまさしく待ちに待った、思い描いていたチャンスそのものだったのだ。

迷う事無く二つ返事で是非出品させて欲しいと返す僕。

すると先程まで僕の目を見据えながら喋っていたAさんが急に僕から目線を外し、よそよそしく取引条件を話し始めた。 「学生の作品を扱うのはこちらとしてもリスクがある、、だから保証金を5万ほど事前に用意して欲しい…」
もごもごと口ごもりながら喋るAさんから提示された条件に驚きはしたものの、それでも僕も藁をもすがる想いなのだ、やっと見つけたプロへの入り口かもしれない場所でのチャンスとよくわからない保証金5万円を瞬間的に頭の中で天秤にかける。

やはり出した答えは
「やらせて下さい」
だった。 ※ギャラリーNとAさんの名誉の為に追記するが、僕物語15で画廊、ギャラリーの仕組みについて書いたように、貸し画廊と委託画廊の境界はきわめて曖昧で、委託画廊でも賃料を払えば展示をさせてくれる場所は多数存在する。その場合大抵10万〜の高額な賃料が発生する。
ギャラリーNのAさんのようにさして金にもならない若手作家を取り扱うとなると常にギャラリーの台所事情は楽ではなかったはずで、多少若手作家からピンハネしたとしてもギャラリーが存続する事で若手の登竜門としての機能を果たす事は確かに大きな意味があった。

それに一筋縄ではいかない美術界という場所の入り口に、一筋縄ではいかないヘビースモーカーのおば様が門番のように鎮座しているというのも、それはそれでなんだか象徴的なことだったよなとも思う。

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