ある画家の僕物語13
締め切り直前、ある問題が発生した。
公募展の出品規約にこう書いてあったのだ
要額装
つまり額縁の付いていない作品は受け付けませんという事で、額の用意が無い人用にとレンタルの額縁の価格表が併記してあった。
当たり前に1万円を超す額縁のレンタル代、作品の送料をケチるほどの金欠なのだ、レンタル額にそんなお金を払えるわけもない…
締め切りまでももう時間はない、さてどうしたものか、、
色々と思惑を巡らせるなかで、
狭いアトリエには不釣り合いのごつい木製ベッドのフレームがふと目に留まった。 「…使えるかな、これ。。」 前々から少々大きすぎると感じていたベッド、よく見れば額縁に使えそうな立派な塗りが施されているではないか。
人は追い込まれると思わぬ発想が生まれるものなのである…笑
これといった躊躇もなくフレームの破壊をすすめていく姿は誰かに見られたら正気を失ったのかと心配されたかもしれないが、スクラップアンドビルドの結果思いの外それらしい額縁に仕上がった。
だがしかし、ここで再び問題が発生したのだ。
大の大人を支えるベッドフレームだけあって、兎にも角にも重たいのだ。
最寄り駅までは約2キロ、これを一人で運ぶ事は到底不可能に思われた。
試行錯誤の末、フレームの端にキャスターを付けて駅まで運ぶ事にした。だが、2キロの道のり、やはり一人では不安、急遽オタクに手伝ってもらう事にした。
ぶつぶつと小言は言っていたが、結局は手伝ってくれるのだから、根はきっといい奴なのだろう。
搬入当日、全ての準備は整った。先ずは安全に電車に乗るまでが最初の難関、恐る恐る道路に作品を転がし始める
ごろごろごろ
よし、出だし順調、これならオタクはいなくても良かったかも知れない、そう思い始めた矢先だった、
道路の舗装が悪くなった事で突貫で付けたキャスターの雲行きが怪しくなり始める、、 頼む、何とか駅までもってくれ!
まだ駅は先だ、ここで君が倒れてしまったら、僕らはこのベッドフレームで飾られたゲキ重の作品を全く鍛え上げられていない4本の腕で運ばなければならない!
頼む…!! という願いも虚しく間も無くキャスターは根本からひしゃげ、結局3月の春の気配もまだ遠い寒空の下、二人で汗だくになりながら東京都美術館に搬入をしたのも今振り返ると良い思い出と言えなくもない。
最大の被害者は間違いなくオタクで、そもそも日当など払えるはずもなく、上野名物の「みはしのあんみつ」が彼の細やかなバイト代となった。 …
改めて今度何かお礼でもしておこう…
入選の通知が届いたのはそれから二週間ほど経ってからの事だった。
新作追加、ライブペインティング作品も出品中です☆
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