私は昔から吹奏楽に携わっている。

有難いことに私の住む地域のローカルケーブル放送では吹奏楽のイベントを頻繁に撮影・放映しており、そこでいつも本番がある度に自分や友達の演奏を見返していた。

いつもの如く、自分の反省がてら映像を見返し、ついでに他の出演グループの映像を見ていたときだった。

当時、男子中学生だった私はそこで、男子中学生に一目惚れをした。

中学生のぎこち無い演奏の中でドッシリと安定感のあるベースの音が聴こえる。他の奏者とは比べ物にならないほど洗練された音だ。

…なんだこいつ。ただもんじゃねぇ。

カメラが高音域、中音域…ジワジワと順に映していく。味わったことのないワクワク感が高まっていく。

普通なら少し聴く気が失せてしまうほどの演奏だ。しかしバンド全体を司るベースが安定しているおかげでドンドン聴き入ってしまう。

中音域、低音域…順に映し出されていく。妙な緊張感が高まっていく。

そしてついにベースが画面に映った。

…どちゃクソかっこいい。

完全に一目惚れだ。これを一目惚れと言わずして何というだろうか。

タイトな音だけでなく、ビジュアルにも惚れてしまった。舞台の上に立つ数十人の女子の中に凛とした佇まいのスタイリッシュボーイ、紅一点ならぬ黒一点と言うべきか。一人だけ美しさが異空間だった。

…ベーススキルに加え、スタイルも良い。

"天は二物を与えず"とはよく言ったものだ。与えてんじゃねぇか二物。ふざけんな、私にも分けろよ天。何してくれとんねん天。

と、まぁ荒ぶった私だったが徐々に冷静さを取り戻し、ある考えに辿り着いた。

…友達になりたい。

この感情が恋愛感情であるかどうかはさておき、どちらにせよまずは友達にならないといけない。とにかく情報収集だ。同じ県に住む同い年の吹奏楽部員。きっと同じ舞台に乗る、同じイベントに参加する機会が来るに違いない。

次の日の部活で私は、コントラバスパートの友達にこの旨を伝えた。通っていた幼稚園が同じで仲の良い友達だった為、快く協力してくれた。

そして機は熟した。次の吹奏楽イベントに彼の中学校も参加する。私は打楽器パートであるため、コントラバスパートとは舞台裏でも接点がない。

とにかく名前と出来れば連絡先を、と友達に頼み、イベントに参加する。自ら会える機会は無いものかと伺っていたが全くその機会はなく、集中しろと怒られてからは全く周りを確認することができなかった。

ソワソワしながら終演を迎え、帰り道。

── あの子、〇〇って言うんやって。

Oh!友達!! Nice!友達!! 幼馴染みたいなもんだから普段は何とも思わねぇが、今この瞬間ばかりは女神に見えるぜ。Thanks!友達!!

…ほんで、〇〇って名前カッコ良!!!
天は既に三物目をお与えになられていたのだ。不平等な世の中だぜ。

やっと名前を知れた私だったが、流石に友達は連絡先を聞き出すことはできず…かつ今回以降はしばらくイベントがない。

名前だけ知っても会う機会がなければ打つ手無し。学校も調べたところ割と遠く、行ったとしても口実が無いためきっと軽蔑され、友達になるどころか不審者扱いされてしまうだろう。

彼の名前をガラケーのメモに記し、私はいつかまた会える機会をそっと待つことにした。

しばらく時は流れ、熱も冷めつつあり、彼のことを幻覚だと思い始めたある日のこと。

…私は彼との予期せぬ再会を果たす。


[次週:男子中学生にラブレターを渡した男子中学生]

かみんぐすーん。

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