たった一人のあなたへ
あなたがおなかの中へ来てくれた時
わたしはとても大きなちからが湧いて来ました
あなたの産声を聞けた時、それ以上に泣いたのはわたしです。
小さな体からからは想像できないぐらいとても大きな産声でした。
その小さな体を隅々まで見渡して、
細い指先についている小さな爪もわたしにはその全てが愛おしかったのです。
何度もなんどもあなたの名前を呼びました
にっこりと笑うあなたはそれはそれはかわいくて、
わたしの人生全てをかけてあなたを守ろうと思いました。
でも・・
わたしはとても未熟でしたね。
いいおかあさんになりたかったです。
いつもにこっと笑っていられるような。
あなたが泣いていたらすぐ気付いてあげられるような・・
でも現実はとても難しくて、
髪はボサボサで部屋も汚くて・・
あなたが泣いているのをみて、わたしはもっと泣きました。
いい奥さんになりたかったのかもしれません
いつもおいしいごはんを作って待っていられるような・・
期待に応えられない自分がなんだか情けなかったです。
初めての子育てで、あなたに辛い思いもたくさんさせてしまいました。
いい子に育てないと自分が責められているような気がしました。
ダメな人間だと思われているような・・
あなたへ評価がわたしへ評価だと感じていました。
今思うと睡眠不足が続きまともな思考回路ではなかったと思います。
やっとまとめて寝られるようになる頃、あなたは脱走のプロになりました。
興味のあるもの目掛けて突き進み、買ったばかりのバリケードを難なく破壊し得意げにこちらを見ていました。
だから、もっともっとあなたにきつく当たってしまったのかもしれません。
ちゃんと育てなきゃ・・・
ちゃんとストローが使えるように・・
ちゃんとボタンが止められるように・・
ちゃんとお箸が使える等に・・
ちゃんとご挨拶ができるように・・
ちゃんと・・ちゃんと・・ちゃんと・・
立派な子供に・・
立派な母親に・・
幻の理想を追い求めていたのかもしれません。
そんなことどうでもいいから、あなたを抱きしめればよかった。
「ちょっと待ってて」
わたしが手を止めればよかった
「あとで見るね」
すぐ見ればよかった
永遠にこない「あとでね」を何度口にしたのでしょう
いつしか私はお酒に逃げるようになりました。
子育てしながら学生をし、帰宅すると真っ先にビールを飲み込みました。
あなたはいつもまっすぐな瞳でこちらをみて
「まんま」
っと両手を広げていました。
はっとしました。
このままでは、この子の記憶に残る母親の匂いがビールになる。
そう思いました。
それでもお酒を買うことを止められませんでした。
1日3Lほどのビールを流し込み、そのまま寝る
そんな生活でした。
家族の中で笑顔が減っていき、ある日わたしはあなたを怒鳴りつけました。
あなたはとても悲しそうな顔をして小さくなりパパに抱かれて違う部屋へ行きました。
涙がたくさん溢れて来ました。
このままでは・・家族がバラバラになってしまう・・
引っ越しをし、わたしはお酒を手放しました。
パパとお別れをし、二人と1匹の生活になりました。
「ままだいっきらい、あっちいけ!!!」
パパのいなくなったお家にあなたの声が響き渡りました
抱きしめると殴り、知ってる言葉全てを使って私を拒絶しました。
だから・・わたしは知っている言葉全てを使ってあなたがどんなに大切なのかを伝えました。
決して楽な生活ではありませんでした。
でも、あなたとわんこがいてくれたから、がんばれました。
あなたはその後いい子を演じ続けていたのかもしれません。
どこに連れて行ってもいい子でした。
2回目のお引越しで・・
あなたはようやく大爆発を起こしてくれるようになりました。
絶対かぁちゃんはどこにもいかんから、勢いよく爆発しろ
いつもそう構えていました。
あなたは安心して爆発できるようになったのかもしれません
わんこと同じぐらいのスピードで走れるようになった頃
あなたは爆発しなくても過ごせるようになりました。
いい子も、いい母親も幻だと気付いたわたしは・・
それを求めるのをやめました。
あなたに唯一求めたのは
かぁちゃんにだけは嘘をつくな
です。
いつでも本音でぶつかってこい
どんなに都合の悪いことでもかぁちゃんにだけは本当のことを言え
嘘があったら守ってあげられない。
あなたは誰よりもまっすぐにかぁちゃんにぶつかってきました。
それがよかったのかダメだったのかそんなこと・・わかりません
でも・・・わんこを見送るあなたが顔をぐしゃぐしゃにしながら大粒の涙をながし、
「ありがとうありがとう、あきらありがとう」と何度も言っているのをみて、
わたしなりの子育てができていたのかな・・と思いました。
あなたはとても素晴らしい子です。
だって・・わたしが産んだのだから
あなたが愛おしくてたまらないのです
わたしの子どもだから。
いつか、親の愛を疑い怒りを覚え悲しみに浸る時があるかもしれません、
決して望むような母親像ではなかったのは十分理解しています。
でも・・どうか覚えていて欲しいのです。
あなたはたった一人のあなたなのです。
もし他に兄弟がいたとしても、あなたという人間はたった一人です。
あなたのことが大切なのは、いい子だから頭いいから、みんなと仲良しだから・・そんな理由ではなく、あなたが他の誰でもないわたしの子どもだからなのです。
あなたがあなたらしく生きていてくれること
それが何より嬉しいのです。
誰かの望むような子にならなくたって
うまくいかなくたって、失敗だらけだって詫びる必要などありません
いつか私はボケてあなたのことを忘れてしまいます
何度もなんども呼んだあなたの名前を言えなくなるかもしれません。
それでも、今日この日にあなたのことをどれだけ愛おしく思っていたのか覚えていて欲しいのです。
たった一人のあなたへ。
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