月別アーカイブ / 2005年05月

その優しさに媚びる必要はない。

体をなでられる事だけを求めてしっぽを振る犬、やつは俺よりもずっと孤独だろう。優しさと温もりだけのために全てをそそいで潤んだ瞳で人間を見つめている。

一人で歩いていこうと覚悟を決めれば孤独も孤独じゃなくなる、自分の体を取り巻く皮膚がぶ厚くなる。

優しさに媚びなくてもいいんだという事が心に分かった時にはじめて本物の優しさに出会える心の準備ができる。

君を失いたくないんだと失う事を恐れる恋愛がどれほどその心を孤独にするだろうか、臆病にさせるだろうか。

優しさにすがりついてはいけない。
本当に孤独から救われたいのなら。
本当の愛を見つけたいのなら。

一人その場に立ってみて
自分の足元を見てみればいい。
一人でしっかりと大地を踏みしめているか。震えずに歩いていく力がそこにあるか。

東京へ行った。
この2週間、テキサスからの友達、Micah をつれて地元四日市、名古屋、京都、東京を旅して回った。
テキサスで短大を卒業してこれから俺の本当の戦いが始まるこの国をたそがれる暇もなく毎日めまぐるしく旅をしてきた。
明日、テキサスに戻る、そしてNYに移り住み、また俺の修行が始まる。
日本に住むことは俺にとって向こうで暮らすよりも簡単で、言葉だって考えることもなくスラスラでてくるし、容易なことだった。 それを改めて再認識した。
けれどここは俺がずっととどまるべきところじゃないと思った、留まっていちゃいけないと思った。
世界ではめまぐるしく時が流れている。
俺と同じ日本人達が世界で骨身を削って働いている、夢を追いかける男達、恋に落ち、国を去った女達がいる。
俺はここでノコノコしていちゃいけない、そう思った。
俺の田舎ではいつもの通り何の変化もなく平和な暮らしが続いていた。 嬉しかったけど俺はこの波に飲まれるにはまだまだ若いし、一人で旅をする力がある。 この力が果てるまで、アメリカだけじゃなく世界を旅して真実を探していかなければいけないと思った。 

ただ旅がしたいんじゃないんだ。
旅をすることの孤独を知りすぎているから、ただ旅をしたいと憧れるだけの少年にはもうなれなかった。
旅を続けなければいけない、という課題を背負っている自分がいる事を確かに感じた。

愛知万博に行き、あまりにも世界を知らなさ過ぎる自分をとても小さく感じた。
今、俺の視点は広いアジアの空を見下ろした飛行機から眺めたようなところにある。
世界のなかでも大都会の東京でさえもそこからは小さく見える。360度球体の地球、その中の、この小さな国の小さな自分だけれど世界を見渡して生きたいと思った。

東京ではまるで人々がまるでアリのようにせわしなく行きかいあっていた。無数の数え切れない見知らぬ人たちがそれぞれに何かを求めて集まっている街、東京。
人の空気は冷たく、一度すれ違った人は、人ごみの中でもう二度と会えないほどの人の群れ。 
寂しい街だった。
1年後、ここで住む俺にとっては、その期待を裏切られたような、寂しさと、ここで暮らす自分の未来に虚しさを感じたけれど、俺は進んでいかなければならない。
その先、こんな小さな日本ごときでうなだれている自分では見知らぬ国々を渡ってはいけないから。

友達が就職活動で周りに遅れをとっているとか、給料、社名を気にしながらあせり、戸惑い、必死になっているのを知って俺は確かにあいつらとは違う世界に来てしまったんだと思った。 
高校の教室にすわっていたあの頃までは同じ俺達だったのに…。
知らなくてもいい事を知りすぎたのか、ここまで遠くを見渡すことなく、小さな世界で揉まれ続けていればよかったんじゃないかと、ふと自分の道を確かめようとしたけれど、もうすでに遅かったし、結局、後悔をしている自分が自分の中にいないことに気がついた。

いつも寂しい。いつも孤独。友達は欲しいけれど、そこでずっと馴れ合っているわけには行かない。

明日俺、この家をもう一度後にする。
一年後、この家に帰ってくるまでもうしばらく、一人でもがき苦しみにいく。

この苦しさをほんの少しでも分かってくれる暖かい人に俺は出会っていつか恋に落ちたい、そう思った。

隠さなければいけない感情なんてない。
ただ、自分が感じた事がすべて。
どこまで正直さをさらけだしていけるか。
もっとも勇敢な人は自分の心をさらけだすことを恐れない人。

心に宿った感情は自分のありのままの思い。
他人の視線が怖くてやってられるか。

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