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スパイダーネットは残り5分を残してなんとか成功し、皆で喜びの遠吠えをしたあとはすっかり疲れきっていた。

夕飯も少ししか食べていない。
実はこの日最大のワークがまだ残っていた。

『アパッチの要塞』

真っ暗な森の中で、お互いの陣地にある獲物(タオル)をかけて戦うバトル。
クースティックというスティックが勝敗のカギを握り、クースティックと尻尾を持っているメンバーが一緒じゃないとタオルが取れない。
(クースティックは先攻後攻で互いに持つが奪い取ることも可能である)

もちろん尻尾取りも生きてて、尻尾を取れば尻尾の数×2人分のご飯が食べられる。
タオルを取れば全員が夕飯を食べられる様になっている。

時間は30分を2回。
パックのメンバーの他にスタッフの方が3名陣地を守るキーパーとして入った。

暗闇で顔を隠すためにお互いにメイクをする。
炭で顔の何箇所かに線を入れると闇に溶け込む。

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先攻はこちらのパックになった。
お互いの陣地までは約50メートル。
暗闇の中で、目を凝らし、体を低くして相手に見つからない様に進む。
万が一出会った時は、一触即発で取っ組み合いのバトルになる。

ちょうど次の日が満月で、月明かりが眩しいくらいに明るく夜の森を照らしても、木の陰に隠れて息を潜めれば何も見えなくなる。
時折誰かが進む、ガサガサという音以外は静かだった。
初めての体験に恐怖を感じた。
誰に会うかわからない。
隣に、前に、後ろにいる陰が敵か味方かもわからない。
物音にビクッとなり、たくさんの目が前から横から後ろから自分に向いている様に感じる。

しばしの取っ組み合いで尻尾を取られたのは実は味方だったことを知ったけど気を取り直して向き合ったところで残り10分の合図がした。
あっという間に30分は経つ。この進み具合だと陣地にすらたどり着けないと悟り、近くにいる敵を片っ端から尻尾を持っている仲間と取って行くことにした。
さっきのパックバトルで要領は大体つかめている。敵と判別したらあとは全力で押さえたら良いと思った。

そうして1回目のアパッチが終わった。

2回目のクースティックは向こうにあるので、まずはこちらは全力で陣地を守る事にした(いくらか気は楽な気がする)
今度は2人組を作って進んでいく。
前回よりも要領がつかめているし、2人で進むというのは安心感があった。
そうして1人の尻尾を奪い、あっという間に敵と味方が混在したフィールドで、最大の恐怖が襲った。
木の裏に私は隠れていたけれど、つい先ほどまで尻尾を奪った相手が近くで背を向けている。
そして右側にも左側にも敵がいた。

私はまだ尻尾が付いている、でも、それはばれていないし、もしかしたら自分の存在すらばれてないのかも…
仰向けになって、陰に身を隠し、自分の息遣いだけが聞こえる様だった。

戦争を知らないけれど、こんな感じなのかもしれない、と思った。

相手の尻尾をもしかしたら取れるかも…
そうして5分くらいが経ち、相手が動いた瞬間を狙って飛びついた。
(ただ、それが実はまた味方だったことを次の瞬間に知る(笑))

尻尾を取られるとあとは好きな様に動けるからちょっと気が楽だった。
とりあえず陣地を守ろうと向かうと、出会った同じパックの1人が早口で囁いた。
「クースティックはこっちが奪ってる、それを持って1人が先に行ってるから一緒に向かっていけ」
その言葉を聞いて相手に気づかれない様に早足で陣地まで向かう。
幸いにも相手のパックは誰も気づいておらず、陣地にはキーパーの3人しかいなかった。

先に向かった味方と話し合ったが、実はクースティックを持っているメンバーは尻尾を取られているので、尻尾を持っているメンバーが2人いないと尻尾を奪えない。
尻尾を持っているメンバーは1人たどり着いていて、あとの1人を待っているところだった。

そうして5分ほど過ぎただろうか。
メンバーがたどり着かない限りこちらは何もできないので、周囲を回っていたが、もうダメかと思った時に、まさに救世主の様に最後の1人がたどり着き、クースティックを付け替えた。

5人のメンバーが集まり、向こうのキーパーが「集まりだしたぞ」と味方に指示を送る。

その時の感覚は今でもありありと思い出せる。
誰かが行くぞと言い出したわけでもない、アイコンタクトも無く静かに、でもパックの気持ちは明らかにひとつだった。
誰かの一歩を皮切りに、気がつくと全員で走り出していた。
いま、行くしかない、と誰もが感じていた。
陣地までは約5メートル。
私ともうひとりがまずキーパーに飛びつき、手足の自由を奪ったところで「取った!」の声がほぼ同時に聞こえた。

ピンクパックが、クースティックを取り返し、タオルを取ったのだ。
皆のワオーーンといつまでも遠吠えがこだましていた。
この時の達成感やチームで一緒にやり遂げた感覚はきっとずっと忘れないと思う。

目に見えざるものの力を私は時折信じている。

人智を超えた経験はこれまでにも何度かあった。
1年前、火のワークで、私の番の時だけ風がピタッと止み、火がロープに纏わりついて焼き切った時のこと
寄り添いワークでリスが教えてくれたドングリの在り処
そんな時は何かに導かれる様に自分のレールが目の前にあり、ただそこに乗っていけばいい。

今の仕事の始まりも、いま住んでいる場所も、何かに導かれる様にその運命に従った。
その感覚を知っているから、何となくわかる。
どの風に乗っていけば良いのかを。
私ができる事は、ただ願いを空にオファーリングする事で、そうすると必要なものを教えてくれる。
それは決して楽しい、嬉しい事ばかりではないけれど、確実に自分が成長出来るものだ。

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皆で暖かい夕飯を食べながら、今回の出来事を振り返る。
言葉を使わず、お互いの動きから意図を察して動くこと。
暗闇の中で自分を見失わないこと。
自分と群れを信じて生きる。
なんとなく感覚がつかめた。

クロージングでピンクパックのアルファが言った言葉がある。
「皆で協力して物事を達成し、そのあと皆で美味しくご飯を食べる。それが日常であればいい」
本当にそう思う。
そうやって昔から人は生きてきたのだから。

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