シドの1年7カ月ぶりの日本武道館公演が5月12日、13日の2日間にわたって行われた。2日目の『夜明けと君と』はあいにくの雨。だがそれをものともせず、たくさんのシドギャたち(シドファンの呼称)が日本武道館に集結した。

場内が暗転し、スクリーンに映像が映し出されると、外の雨音よりも激しい歓声が沸き起こる。1日目と違い、メンバーが下手袖より歩いて登場。マオが耳に手を当て、場内にあふれる割れるようなメンバーコールをもっと! とあおる。バンッと爆音が起こり、銀テープが舞う。2日目の始まりは『ANNIVERSARY』から。シドの10周年を記念して作られたアップテンポな曲をこの武道館のために、よりロックテイストにアレンジしたバージョンが披露された。メンバーは全員ロングの白いジャケットを羽織り、一日目の黒い衣装との対比が鮮やかだ。

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Shinjiが一斉に手を振り上げる観客を眺め、味わうようにギターをかき鳴らす。明希のなまめかしいステージングが今日もこの武道館という場所で光っている。ゆうやのドラムは1日目以上に力強さを増しており、メンバーの息が最初からぴったり合っているのがわかる。曲の終わり、一斉にあがる歓声に笑顔になるマオ。そこから一変して鋭い目つきになったマオが手を額に当てるポーズから『laser』へ。

七色の照明がさながらレーザーのように客席を照らし、ロックバンド・シドの真の姿がむき出しになっていく。明希は体全体を激しく揺らしながら、手拍子する観客との距離をどんどん縮めていく。Shinjiがレーザービームの中でくるりとまわりながら演奏する姿もとてつもなくキマっていて、今回のライブが演出からメンバーが細かく意見を出して作り上げた、というのがよくわかる。曲の世界観をこれでもかと盛り上げる演出が、今回のライブの特徴のひとつだろう。

続く『Re:Dreamer』では観客がかけ声を上げ、会場を一つにしていく。マオは客席をじっくりと見つめ、観客の温度を肌で感じながら歌っている。深く透明な低音ヴォイスが場内を満たしていく。サビを観客が歌い、熱気がこの武道館の中に納まりきらないほどに高まっているのを感じる。

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「大変お待たせしました!こんばんは!シドです!待ってた?」待ってたー!と大きなレスポンスが返ってきて「ありがとう」とはにかむマオ。「今日は『夜明けと君と』というタイトルなんですが、昨日と天気的に真逆ですね。傘持ってきてない人は売ってるらしいよ」としょっぱなからグッズの宣伝をするマオに笑いが起こる。

あたたかな一体感の中、始まったのは『cosmetic』だ。「もっとおいで」で手拍子する観客へ向けて腕を差し出すマオ。サビ前では観客がジャンプ。久しぶりのライブでもメンバーとシドギャとの息はぴったりだ。会場にいる全員でライブを作り上げていく、それがシドのスタイルで、ファンのレスポンスがあってこそ成り立つ“参加型”のステージを観客たちは今日も全身全霊で楽しんでいる。

続く『CELEBRITY』ではShinjiがエロティックかつコケティッシュなギターソロを披露。マオが歌い終わりにマイクに「チュッ」と音を立ててキスすると場内から大歓声があがった。『ドレスコード』では明希がゆうやと向かい合って演奏、マオの歌声には前日以上に艶と張りがあり、ヴォーカリストとしての風格と華やかさが増している。曲終わりに一斉にメンバーコールが沸き起こった。

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「超楽しいね!シドのワンマンライブは1年7カ月ぶりということで、すごく僕らも欲求不満でした!今日は欲求という欲求、ストレスというストレスをここに置いて帰ってください!」マオのこのMCから、メンバー全員がストレスをお題に話し始めた。
ゆうやは「ライブ前に気合入れようと思って大きい声を出して裏返ったとき」。ふだん大きい声を出すことがないから、と言うゆうやに「じゃあ今大きい声出してみて」と無茶ぶりするマオに変顔するゆうや、と変わらない無邪気なかけあいに客席もなごんでいく。

明希は店員さんを呼ぶボタンがない飲食店で、いくら呼んでも誰もこないのがストレスだと話す。「『すいません!いたわさ!』ってずっと叫んでも誰もこない」と言う明希に「すいません!って一回呼んでからにしたほうがいい」とマオがアドバイス。「でも基本ストレスはありません、昨日も今日もこれだけ観に来てくれる人がいて、ストレスなんてあるわけない」ときれいにまとめる明希へ拍手が。

話し始める前からマオの顔写真が入ったタオルで頬を拭いているShinjiに「くすぐったいからやめて」とマオ。Shinjiのストレスはタンスの角に足をぶつけたときと「シドのShinjiです」と初めて会った人にあいさつするとき、発音が言いづらいこと。「じゃあシドって10回言ってみて」とマオに言われて、素直に繰り返そうとするがすぐにかんでしまうShinjiを「ポンコツが増してる」と評するマオ。わきあいあいとしたトークタイムはいつまでも観ていたくなるが、次の曲紹介で客席から喜びの声があがった。

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ステージの上にぶら下がったたくさんの小さなライトがキラキラと点灯、始まったのは『星の都』だ。ブルーの照明の下、優しく、染み入る歌声を響かせるマオ。ゆうやが作曲して初めて採用されたというこの曲は、ファンにとっても大切で特別な一曲だ。マイクセットの前に座り、手を広げて観客の気持ちを受け止めるように歌うマオ。その歌声に寄り添うゆうやのコーラスも美しく、シドの持つポップであたたかい世界観が武道館を星々の光のように包んでいく。

続いて「もう1曲懐かしい曲を聴いてください」と演奏されたのは『マスカラ』。赤いライトがオーロラのようにゆらめき、楽器隊の情感たっぷりの音色が観客から現実感を奪い、夢の空間へいざなっていく。明希の投げキスが合図かのようにBメロへ。激しい音の転調がないぶん、歌の実力が試される難しい曲だと思うのだが、マオはどっしりと安定感のある歌声を聴かせてくれた。


スクリーンに映写機がまわるカタカタという音とビデオフィルムがまわる、どこか懐かしい映像が映し出され、一瞬の静寂…

「それはひどく突然で」

マオの深く透明な歌声から『ミルク』がスタート。ファンにとっては様々なライブでの思い出が詰まった人気曲だ。戻れない過去を懐かしむ男の悲哀を切々と歌い上げるマオの歌声と、何度聴いても新しさを感じさせるShinji、明希、ゆうやが奏でる音色には14年という年月を経たからこその厚みがあり、ミュージシャンとしても人間としても大きく成長したことを実感させられた。

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感動に満たされ、メンバーコールが沸き起こる場内へ、続けて明るくポップな『Room』が放たれ、武道館は夜明けに向かって走り始める。楽しさを全身で爆発させる観客たちをマオはステージのはじっこに座り込んで見つめながら歌っている。Shinjiはステージの真ん中へ。観客の振りと会場いっぱいに広がるマオの歌声がハーモニーを起こして、会場全体がひとつのステージへと変貌していく。

「懐かしいね! アルバムをめくっているみたいな感覚でライブを一緒にやれてるよね!」と満面の笑顔のマオ。ゆうやに話を降るが、「Yes,I do」とふざけて高い声で繰り返すゆうやに「話になんない。話になるの明希だけだよ。これからシドをまとも組とポンコツ組に分けようかな(笑)」とマオ。アットホームな空気のまま、ライブは後半戦へ。

こぶしを振り上げた明希のかけ声を合図に始まった『Graduation』で会場は全員がこぶしを上げ、一糸乱れずひとつに。マオと明希が肩を組む姿に歓声が上がり、Shinjiのメロディアスなギターに聴き惚れる観客の姿も目立った。Shinjiと明希も向き合って演奏し、ビジュアル的にもバンドのグルーヴ感を感じさせてくれた。観客の声の大きさに「すごいなー!もっとちょうだい!」とマオが満足そうに叫ぶ。

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「もう一発いくぞー!お前らの得意なアレいくぞー!」マオの不敵な笑みから『Dear Tokyo』へ。観客の咲きとコーラスが会場を華やかに彩り、全員でのジャンプで武道館が揺れた。マオとShinjiが寄り添って歌ったり、Shinjiと明希が一緒にステージ中央で演奏したり、弾けるようなゆうやの笑顔が見られたりと、メンバーが皆、この瞬間を心から楽しんでいるのが伝わってくる。「その手の中 その手の中には可能性が腹を空かせてる」では観客がシンガロング。明希がベースを頭上にかかげてかき鳴らしながら、いたずらっぽい表情を見せ、マオの「本当に会いたかったよ!」の叫びにキャーッと悲鳴に似た歓声があちこちから起こった。


この日のメンバー紹介では、ゆうやの、指を舌でなめあげ、渋くカッコつけて見せようとするが途中で笑いだしてしまう姿に会場中が笑顔に。そのあとにカメラに向かって投げキスしてキメる明希を見て、「あっちが本物!ゆうやは偽物!」と厳しい(?)評価を下すマオ。Shinjiは前日に続き、謎のくねくねポーズを披露。「あと10回やって!」とこれまたマオから厳しい指令がとんだ。

「そろそろ恥ずかしいんだよー」と言いながらも「マオにゃーん」と呼ばれてうれしそうなマオにハートを奪われた観客たちも、続く『循環』で再びお祭り騒ぎの空間に身を投じていく。会場中がくるくると回る中、マオは明希がステージ下手へ歩くあとを追いかけ、明希の肩に手をかける。明希はその状態のまま客席へウインク。最後はマオ、Shinji、明希の3人がステージ中央にぎゅっと集まって演奏、キラキラしたシドサウンドがラストへ向けて加速していく。

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「このままラストいけるかー!」マオの叫びから『one way』へ。客席にも照明がつき、明るくなった場内でこぶしを振り上げ声をあげる観客とメンバーがひとつに。「いつか  振り返ったとき 恥じぬよう 泣かぬよう  目の前の闇は糧と言い聞かせ  笑え」この歌詞を今、実感を伴って理解できる気がする。ゆうやのダイナミックなドラミングで本編は終了。
決して楽な道ばかりを歩いてきたわけではないバンドだからこそ、シドが積み重ね、乗り越えてきた年月を体で感じさせる演奏だった。


アンコール後、ゆうやのドラムから『バタフライエフェクト』がスタート。長い脚を大きく広げ、骨太な音を鳴らすShinji、激しく頭を振りながら重厚なドラムを叩くゆうや、目線ひとつで観客を釘づけにする明希、そしてマオの揺らぐことのない真っ直ぐな歌声。一日目以上に狂気をはらんだ正統派のロックサウンドが展開され、今のシドの実力のすべてが遺憾なく発揮された。

そのまま息つく暇もなく『吉開学17歳(無職)』へ。炎が爆音とともにあがり、ラストへ向けて、マオが声のかぎりシャウト。武道館に生まれる狂気に観客たちは引きずり込まれていく。V系ロックのカッコよさ、それはここにいる者たちの感覚をぶっ飛ばし、理性を失わせ、かじかんでいた心を解放することでカタルシスを体感させる。一度この感覚を知ってしまったら、きっと容易には抜け出せない。

曲の終わりに盛大に火柱があがった。

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「吉開は楽しいね。初めて聴いた人は変な偏見持たないでね。たまにああいう感じになるけど成長だから(笑)」楽しげなマオのトークから、恒例のグッズアピールタイムへ。マオに「RAIN & YOU」のTシャツの話をふられるが、おかしなスイッチが入ったらしいゆうやは何も話さず指を唇に当て、ウィンク。「ネギッピー今日は持ってきてないの」と聞くマオに「ここに入ってる。元から大きいからわかんないと思うけど」と下ネタで返すShinji、とこの日もシドらしいアットホームなトークで楽しませてくれた。

そしてライブはいよいよ本当のラストへ近づいていく。『嘘』『V.I.P』と続くヒット曲に狂喜乱舞する観客たち。「続けていくぞー! ラスト行くぞー! 出しきっていけ!『夏恋』!」キラキラしたサウンドが場内いっぱいに広がり、メンバーも観客も弾けるような笑顔だ。シドとファンとの絆を感じるかけがえのない数分間となったが、曲が完全に終わる前にステージは暗転。


スクリーンにメンバーの過去の様々な映像が映し出され、突如、告知の文字が浮かび上がった。8月にNew Single『螺旋のユメ』の発売、9月に3年6か月ぶりのアルバム発売、そして待ちに待った全国ホールツアーの日程が発表されると、場内は歓喜の声に沸いた。


歓声の鳴り止まない観客の前に、メンバーが再登場。始まったのは『光』だ。あまりにもファンの心境を理解した憎い演出にたまらず涙する観客たち。ブルーのライトの下、マオの声は限りなく伸びやかで、そのまなざしは穏やかだ。ここに来るまでに彼はたくさんのものを超えてきたのだと思う。

「生きる意味とか一晩中 考えてつかまえたものは 朝が来たら忘れちゃうほどの 小さい僕らの光」

歌詞がここにいる観客全員の人生にリンクする。森で見つけた泉のように優しく、透明な歌声に、体も心もあたためられていく。
生きることは楽ではない。それでも、明日を迎えたいと思える理由があれば、人はどんなことでも乗り越えられる。それが愛なのか夢なのか、仲間なのか、わからないけれど、ただひとつ、今わかるのはこの場所がファンにとっての居場所であり、生きる意味なのだということだ。メンバーの自信と慈愛にあふれた表情はすでに先導者のそれだ。涙するように目に手を当てたマオは、自らの体を抱きしめる。メロディーは徐々に終わりへ…。

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「どうもありがとう!」静まり返った客席へ、絞り出すように声をかけたマオは力を出し切ったのか、マイクスタンドの前にしゃがみこんだ。

Shinjiが「ありがとう! いつも感謝してます!」と告げて去り、明希がマイクを通さずに叫んで捌けていく。「最高だったね。この時間がずっと続けばいいなってくらい、気持ちいいね」というマオの言葉を受けて、ゆうやは「こんなに大勢の人が見てくれているっていうのはね、普通じゃないよね。こんな普通じゃないことを、普通かのように僕らはこれからもやっていきます。それにはここにいるみなさんが必要なんです!」と力強く宣言。深くおじぎしたゆうやと握手しようとしたマオを、ゆうやはぎゅーっと固く抱きしめた。

そしてひとりになったマオは、泣き出してしまいそうな表情で耳に手をあてて見せる。マオコールを力のかぎり叫ぶ客席へ「ヤバイ、すごい気持ちよかった! 最後の『光』は今まで何回も歌ってきたけど、今日の『光』はまた忘れられない『光』になりました。『夏恋』でラストってだましてごめんね。モテる男はサプライズが得意です!」とチャーミングな笑顔を見せた。

「正直、久しぶりすぎて、武道館にみんな来てくれないんじゃないかって不安もあった」と感情を正直に吐露するマオへ、客席から大きなマオコールが降りそそぐ。「俺たちは幸せ者だし、毎日毎日、みんなに感謝してます。アルバムめちゃくちゃかっこいいの作ってるから、期待してて! 最高の1枚にするから! また会おうね!」

最後に武道館がはじけ飛ぶのではと思うほどの大歓声の中、マオが唇に指をあてる。静まりかえる客席へ向けて、

「愛してます!」

深々とおじぎしたマオへ、止まないマオコールが響いた。

この2日間のライブは、観る者にこれほどまでに幸せにあふれた時間があることを改めて教えてくれたライブだったように思う。ステージに広がる情熱や愛情、怒りや憎しみ、後悔…人間の感情がむき出しになったそれは、夢を見せる空間でありながら、決して現実離れせず、絶妙なバランスを持って観客を満たしてくれた。
ファンと一緒に苦しみ、悩み、立ち向かってくれる。それがシドというバンドなのだと思う。『夜更けと雨と』『夜明けと君と』というタイトルどおり、少しずつ暗闇から抜け出していく感覚を会場にいた誰もが感じたのではないだろうか。悩みもつらさも包み込んで浄化していく演奏、それは音楽家としての力量の大きさと、惜しみない努力を続ける4人の音楽への真摯さの表れでもあった。

さあ、これからが本番だ。シドが魅せてくれる夢の時間を、心ゆくまで、思う存分に味わおう。

(撮影/今元秀明/MASANORI FUJIKAWA、取材・文/藤坂美樹)

◆SET LIST◆

01.ANNIVERSARY
02.laser
03.Re:Dreamer
04.cosmetic
05.CELEBRITY
06.ドレスコード
07.星の都
08.マスカラ
09.ミルク
10.Room
11.Graduation
12.Dear Tokyo
13.循環
14.one way

En01.バタフライエフェクト
En02.吉開学17歳(無職)
En03.嘘
En04,V.I.P
En05.夏恋
En06.光

1日目「夜更けと雨と」のレポートはコチラ

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