12月24日(土)、六本木EX THEATERにて、ヴォーカリスト・SHINがファーストライブを行った。2015年4月29日にバンドを解散後、初めてファンの前に姿を現したSHINの熱く決意に満ちたライブの様子をレポートする。
あれから数カ月…。ついに、SHINとの再会の約束を果たす日が訪れた
みずからの人生を賭けたバンドが解散。人はかけがえのない証を失うと、次のステップを踏み出すまでに心を整理する時間や期間が必要になってくる。
SHINも、その経験を味わってきたアーティストだ。SHINは新たな活動の狼煙(のろし)を上げるために、たくさんの時間を割いてきた。彼は、歩みを止める気はなかった。むしろ、長く長く魂を燃やす音楽の場で輝くために最善と思える準備を重ね続けていた。
SHINがふたたび表舞台に帰ってくることを発表したのは9月初旬。そのときに告げたのが、12月24日(土)クリスマスイブの日、六本木EX THEATERを舞台に「約束」と題したファーストライブをSHINというソロ名義で行うことだった。
あれから数カ月。ついに、SHINとの再会の約束を果たす日が訪れた。会場を埋めつくした人・人・人、誰もが始まりの瞬間を心待ちにしていた。
「この世界でもう一度」応援してくれる仲間たちと未来を描きたい
舞台前面を覆った白い幕に映し出された澄み渡る青い空。映像は、再会の瞬間が近づくことを示唆するようにスタジオでのリハーサル風景を映し出してゆく。そして…。
チクタクと時計の針が時を刻みだした。ふたたび動きだした時間。その針の音と重なるようにドラムのハットがリズムを刻み始めた。会えなかった時間を取り戻すように。何よりこの日の再会を慈しむように、SHINは白い幕の内側からスケールあふれる、それでいて緩やかな演奏に乗せ、ゆったりと『2015.4.29』を歌いだした。
この日付は、SHINが前の活動を止めた日。あれから2年近くの時が流れていた。その間、彼が何を思い、どんな気持ちで「ふたたび会おう」と約束をした日を心待ちにしていたのか。それをSHINは『2015.4.29』に詰め込んでいた。スクリーンに映し出された歌詞とSHINの歌を追いかけながら、満員の観客たちは彼の告白にジッと寄り添っていた。
SHINはあのときに交わした約束を果たすため、ステージという自分らしく居られる場へ戻ってきた。この歌へ詰め込んだSHINの心模様に関しては、ふたたびSHINがライブや音源という形を通して思いを届けたとき、触れた人だけに感じてほしい。それくらいSHINは、「この世界でもう一度」応援してくれる仲間たちと未来を描きたかった。
待ちわびた時間を瞬時に埋めるには、互いに裸で求めあってゆけ!!
吠えるギターの音が場内へ響きだした。「拳で来い、TOKYO!!」 高ぶる感情のままにギターをかき鳴らし歌うSHIN。激しく躍動する『Jack the Ripper』だ。熱を持って駆けだした演奏が気持ちを震わせてゆく。場内から突き上がる無数の拳こそ、この日のSHINの思いへ対するみんなの返答だ。その気持ちを真正面から全身でしっかりと受け止め。いや、SHINはその気持ちさえも荒れ狂う音で飲み込んだうえで、熱狂を交わしあおうと満員の観客たちへ呼びかけた。
「まだまだぶち上がれるかー!! もっといこうぜ、おい!!」 轟音がフロアー中へ広がりだした。沸き上がる感情のままに、SHINは『DIRTY HURRY』をぶつけてきた。場内から突き上がる拳・拳・拳。その熱狂さえまだまだ物足りないのか、SHINは感情をむき出しに「もっともっと」と求めていた。これまで待ちわびた時間を瞬時に埋めるには、互いに裸で求めあってゆくしかない。それをわかっているからこそSHINは、荒々しく駆け続ける音を背に観客たちの気持ちへ熱を注ぎ続けていた。
「もう一度歩きだすよ」と呼びかけたその歌声には、確かな決意と優しさがみなぎっていた
「みんなの顔が見れて、今日は何よりも嬉しいです。言いたいことがあり過ぎるくらい時間が経ったんだけど。ようやくこの言葉を胸を張って言えます、ただいま!」
その言葉を受け、場内から熱狂を持って響いた「お帰り」の声と拍手。その反応を確かめたうえで、SHINはふたたび語りだした。
「本当に待たせてしまったね。動けるのならすぐにでも動きたかったけど、自分が納得のいかない状態で戻ってきたって誰が喜ぶんだと思い、長く時間をかけてしまいました。その間、何度も苦しんだけど、みんなの顔を見たらすべてがチャラになるくらい救われました。
僕が今日伝えたいのは、抱いた夢がうまく行くかはわからないし、その間たくさんつらいことや苦しいこともあるけど、自分の信念を折らずに頑張り続けたら、僕がふたたび帰ってこれたように絶対に幸せってあるんだということ。これからの活動をもって、それを僕がみんなに証明していくから。次に届けるのは、苦しみの中にいた時期、少しだけ気持ちが強くなれたときに書いた歌です」
流れだした『WEAKEND』は、確かな強さを秘めたミッドメロウな歌。みずからの気持ちを確かめるように、言葉のひと言ひと言を噛みしめながらSHINは歌いかけてきた。SHINの歌声には、心をグッと後押ししてゆく力がみなぎっている。次第に躍動していく歌と演奏は、彼自身が絶望の底から光を求め立ち上がる姿のようにも見えていた。なんて闇の中へ光を差す歌だ。「もう一度歩きだすよ」と呼びかけたその歌声には、確かな決意と優しさがみなぎっていた。
椅子に座り、SHINはアコギを手にした。「みんなにどうしても会いたくて、でも会えなくて。そんな日々が続いてたけど。それでも『きっと僕の歌や言葉ってみんなの側にある』 そう思いながらみんなのために書いたのが、「僕を信じて」という花言葉をタイトルにしたこの歌です」 そう語ったあとに、SHINはアコギを優しく鳴らし、満員の仲間たちへ呼びかけるように『YELLOW CROCUS』をたった一人で歌いだした。
失った悲しみを埋めようとしていた日々を懐かしむように、SHINは沸き上がる気持ちのまま歌いかけていた。「かならずまた会えるから この声が枯れるまで」 心の慟哭(どうこく)を歌に乗せSHINはアコギをかき鳴らしては、会場中に歌を羽ばたかせていた。
失った悲しみを埋めようとしていた日々を懐かしむように、SHINは沸き上がる気持ちのまま歌いかけていた。「かならずまた会えるから この声が枯れるまで」 心の慟哭(どうこく)を歌に乗せSHINはアコギをかき鳴らしては、会場中に歌を羽ばたかせていた。
何もかも忘れ、ここから始めていけばいい。そんな気分だ
「まだまだ声出していけるよな、ぶちのめしてやるぜTOKYO!!」 躍動するドラムビートが腹にズンと重く響いてきた。後半のステージを彩ったのは、重い演奏を荒れる感情のままにぶつけてゆくSHIN流のラウドロックナンバーの『diluculo』。重厚な演奏だ。サビでは思いを力強く高らかに歌いあげてゆく。なんて魂を熱くさせる楽曲だ。この歌は魂のみならず体まで熱く震わせていた。
重い衝撃を抱いたまま演奏は『PARADOX』へ。身体をズンッと黒く染め上げる音の衝動。熱した歌声は、興奮という震えを起こしていた。演奏が進むごとに『PARADOX』は表情を変えてゆく。「飛べ!!」、SHINがマイクを手に舞台を右へ左へと駆けだした。ラウドな音に身を預けながらSHINは飛び跳ね続けていた。時にはモニターへ足をかけ、今にも客席へ飛び込まんばかりの勢いを持って、SHINは満員の仲間たちと熱い触れ合いを交わし続けていた。
「一緒にいい景色を作ろうぜ、TOKYO!!」 その言葉を合図に、荒ぶる演奏が光を携え走り出した。『RESTART』が連れ出したのは、触れた人たちの心を開放してゆく風景。いつしか会場中の人たちが拳を空高く突き上げ、熱狂へ連れてゆく演奏に身を預け、SHINと一緒に熱く心で抱きあっていた。なんて魂を解き放つ歌なんだ。何もかも忘れ、ここから始めていけばいい。そんな気分だ。
「僕の音楽人生を全部賭け、もう一度だけみんなと一緒に日本武道館を目指したい。絶対に連れていくから、みんなも約束です」
「本当に幸せな時間をどうもありがとう。他の誰のためでもなく、僕自身と僕を好きでいてくれるみんなのために何かできないかなと思って書いた曲たちが、初めてのライブからみんなと一つになることができて。しかも、みんなが楽しそうな顔をしてくれて本当に嬉しいです」
「こんなに長い間待っててくれたみんなを連れて、僕はもっともっと挑戦していきたい。今はそんなふうに思います。これも僕からの約束です。僕の音楽人生を全部賭け、もう一度だけみんなと一緒に日本武道館を目指したい。絶対に連れていくから、みんなも約束です。みんなをあの場所に連れていきたいなと思って書きました」
力強く宣言した後にSHINは『TERRITORY』をぶつけてきた。心壊れそうになりながらそれでも明日を求める意志を、彼は雄大なスタジアムロックナンバーに変え、満員の観客たちのハートへダイレクトに伝えてきた。SHINが伸ばした歌という掌で、一人一人の気持ちをしっかりわしづかみにしていった。
一人一人の心の扉を開けるように暖かな思いを持って
やまない熱狂の声を受け、ふたたびSHINは舞台に姿を現した。この日はクリスマスイブ。SHINがファンのみんなにクリスマスプレゼントとして歌ったのが、映画『美女と野獣』のテーマ曲『Beauty and the Beast』。SHINは優しく爪弾かれるアコギの演奏を背に、一人一人の心の扉を開けるように暖かな思いを持って『Beauty and the Beast』を届けてくれた。なんてロマンチックな歌なんだろう。場内の誰もが、その歌声にジッと聞き惚れていた。最高のクリスマスプレゼントをありがとう。
「みんなと一緒になりたくて作った曲です」 最後の最後に、みずからの魂を込めた『RESTART』をふたたび演奏。光を集め疾走する演奏に飛び乗り、SHINも観客たちもこの瞬間を笑顔で楽しんでいた。勝手に頭上へ突き上がる拳や、自然と跳ねる身体の躍動を受け止めながら、きっと誰もがSHINと一緒に歩む未来を描いていたに違いない。
その道をSHINと共に作らないか?! 日本武道館へと続く道を…
この日、このライブこそが、SHINがリスタートを告げる最初の場。「必ず日本武道館に連れていくから、もう1回ついて来てください」と語ったように、ここが、新たな夢を形にするための始まりの場。
SHINの物語はまだ幕を開けたばかりだ。これから彼が日本武道館という夢に向かってどんな物語を描いてゆくのか…。まだ彼が切り開いた道はデコボコだ。でも、一緒に慣らしながら新しい道を描いていけるのも事実。その道をSHINと共に作らないか?! 日本武道館へと続く道を…。
SHINの物語はまだ幕を開けたばかりだ。これから彼が日本武道館という夢に向かってどんな物語を描いてゆくのか…。まだ彼が切り開いた道はデコボコだ。でも、一緒に慣らしながら新しい道を描いていけるのも事実。その道をSHINと共に作らないか?! 日本武道館へと続く道を…。
◆SET LIST◆
1.2015.4.29
2.Jack the Ripper
3.DIRTY HURRY
4.WEAKEND
5.YELLOW CROCUS
6.SE
7.diluculo
8.PARADOX
9.RESTART
10.TERRITORY
-ENCORE-
EN1.Beauty and the Beast
EN2.RESTART
(取材・文/長澤智典)
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