今から250年ほど前の江戸時代。藩が重い年貢を課し、夜逃げが相次ぐ宿場町・吉岡宿で、町を救おうと一発逆転の大勝負に出た男たちがいた! “藩に大金千両(=現在の価値で3億円)を貸し付け、利息を巻き上げる”──バレれば打ち首必至のこの計画、果たして吉と出るか凶と出るか!?

そんな実話をベースにした、中村義洋監督映画『殿、利息でござる!』が、5月14日から全国で公開になります。物語の中心人物のひとり、千坂仲内(ちさか ちゅうない)役の千葉雄大さんに撮影秘話をうかがってきました!

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――映画は宮城県が舞台ですね! 千葉さんのご出身は宮城県多賀城市ですから、故郷での撮影だったんですね。

そうなんです。



――そういう意味でも、作品への思い入れがおありでしょうね。ストーリーの中には仙台人らしさが出ているなと思う部分はありましたか?

この映画の中で描かれている人物たちは、慎みを大事にしているんです。仙台の人は割とシャイで、よく言うと奥ゆかしいので、そこは仙台人らしいのかもしれないですね。



――確かに、映画の登場人物たちは、そんなにベラベラしゃべるタイプではない感じで描かれていますね。

そうですね。僕はライブに行くのが好きで、地元でも行っていたんですけど。やっぱり来てくれるアーティストさんもよく、仙台のファンはおとなしい、っておっしゃってました。「シャイボーイ」「シャイガール」と言われました。確かに上京してきてから、ライブに行って、盛り上がり方が違うなぁと思いました。県民性なんでしょうね。



――撮影場所は吉岡ですか?

宿場町自体は山形で撮ったんです。宮城では、僕が嘆願しに行くシーンで、実際の日本家屋をお借りして撮影したり、要所要所を撮っています。



――実際にロケをされてみて、改めて地元の魅力を確認した部分はありましたか?


建物を見て懐かしいとか、思うことはあまりなかったんですけど、エキストラの方々が東北の方が多くて、方言を話されていたのは懐かしかったです。



――映画は江戸時代の実話『穀田屋十三郎(こくだや じゅうざぶろう)』を元にしていますが、このお話はご存じでしたか?

オファーをいただくまでは知らなかったです。でも、宮城の話ではあるんですけど、日本人はみんな、慎みを持って生活していたと思うんです。今は時代が変わって、割と何でもあけすけになって、揚げ足を取るような世の中になっていると思うんですけど。そんな中でも自分のことを横に置いてでも、人のために一生懸命に頑張ることは、きっと誰にでもできることなんじゃないかと思うんです。この映画でそういう気持ちになっていただけたらいいなと思います。



――オファーがきたときのお気持ちを教えてください。 

中村監督はもともとすごく好きな監督だったのでとてもうれしかったです。ご一緒する役者さんたちも自分がずっと見てきた方たちばかりで、光栄でした。役柄的には台本を読んだとき、すごく難しい役だと思いました。時代背景だったり、「大肝煎(おおきもいり)」という身分のことを考えると、千坂の行動は理解ができるんですけど、最初は共感できなかったですし。感情をあけすけに出すような役柄ではなかったので、その加減は撮影に入ってからも難しかったです。監督から「そこはちょっと抑えましょう」とか「ここは本当に感動してしまって大丈夫です」とか細かくアドバイスをいただいたので、助けていただきながら演じました。 



――千葉さんは時代劇に過去にも出演されていらっしゃいますが、今回新鮮だった点はありましたか?

撮影しているときにはあまり思わなかったんですけど、試写を見てくださった方に、「こういう一面もあるんですね」と言われたりしました。僕の今までの印象とは違っていると思う方がたくさんいらっしゃって。役柄が今までになかった役だったというのはあるのかなと思います。



――具体的に難しかった点などはありましたか?

百姓の役なので、身分の高い人と接するときの頭の下げ方だったり、着物での歩き方だったりというのは、教えていただきながら演じました。


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誰かのために一生懸命になれる気持ちは、自分も持っていたいです

――千坂は若いですけれど、「大肝煎(おおきもいり)」ということで、立場的にまわりの百姓よりも上ですよね。そのあたりの難しさはありましたか?


パンフレットの紹介文には「純真な百姓」と書いてあるんですけど、そこまで純真でないなと思いました。人間っぽいですし、心の揺れ加減で、ちょっと別人みたいに見えるシーンもあります。もちろん同一人物として演じているんですけど、そのシーンシーンでの感情を大事にして、他の人と同調するとき、反発するときやふてくされるところなど、演じ分けることを意識しました。



――演じるのに迷ったシーンはどこですか?

一番緊張したのは、村のみなさんの前での口上のシーンです。決まったことをお知らせするシーンなんですけどみなさんがすごく真剣に僕の言うことを聞いてくださるので、緊張感がとてもありました。



――千坂という役を演じてみて、終わったあとに感じたことや、そのあとの生活で意識するようになったり影響を受けた部分はありましたか?


この物語は慎みがありながらも、奮闘した男たちのカッコイイ物語だと思うんですけど、みんな百姓としての生活がある中でやってるんですよね。その生活がある中でも自分たちのこれからのために一生懸命頑張れたというところがすごいなと思いました。僕自身、自分の家族に何かできているかと考えてみたら、何もできていなくて、自分のことだけでいっぱいいっぱいになっていると思うんです。誰かのために何かをしよう、という姿勢はすごく必要だと思ったし、何かやっていきたいなと思うようになりました。



――役どころとしては、千葉さんはベテラン俳優のみなさんの上に立つ役ですよね。そのあたり、演じているときの緊張感やとまどいはありましたか?

演じる前にはすごく緊張しましたし、こんなそうそうたるみなさんに僕が、というところで恐れ多いと思いました。でもやり始めてからは、あまり考えなくなりましたね。撮影と撮影の合間はやっぱり緊張しましたけど。



――みなさんとは撮影の合間にお話したりできましたか?

そうですね。泊まりがけで撮影していたので、撮影が終わってからごはんに連れて行っていただいたり、そういう時間はありました。



――特に憧れていた俳優さんはいらっしゃいましたか?

みなさん憧れの方々ですけれど、妻夫木さんと1対1でお話をしたときには、何してるんだろう、自分、ってすごい客観的に見てしまっている自分がいました。相談に乗っていただいたり、カラオケに2人で行ったりさせていただいたので、今お名前をあげたんですけど。聴く音楽が似ていて、気が合う感じだったんです。



――この映画はお上に立ち向かう、というのがひとつのテーマですけど、千葉さんご自身は目上の方にはっきり意見を言えるタイプですか?

理不尽なことだったら言います。でもたいていのことは黙って聞いて、飲みこんで、あとから愚痴を言います(笑) 今回の撮影ではそういうことはぜんぜんなかったですけど。



――監督からもアドバイスをいただきながら撮影された、ということなので、いい現場だったんでしょうね。

そうですね。ちょっと(演技が)ダメだったかな、というときでも、撮影が終わってから僕のところに来てくださって、いろいろお話を聞いてくださったり。「さっきは言わなかったけど」とかそんなふうにアドバイスをくださったりしました。そういう機会がない現場もあるので、すごくありがたかったです。



――監督とは密にコミュニケーションが取れたんですね。

そうですね。僕が何か言うというより、とりあえずやってみて、そこで監督が思ったことをあとから言ってくださるという感じでした。千坂が感情的になるシーンを撮る前には、こそっとグッとくることを言ってくださって本番に臨めたり、そういう空気作りをしてくださる方でした。監督だけでなく、スタッフの方も面白い方が多かったので、楽しい現場でした。


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軸がブレない自分でいたい

――今回の役柄を演じるにあたって、覚悟したり、ふだんとは違う心づもりになったりしたのでしょうか?

今回、自分のイメージとは違う役をやらせていただいて、この先、今までとは違った役をいただいたときの心づもりみたいなものがすごくできたと思います。見かけから「この人はこういう人だよね」というイメージでくくられるのはあまり好きではないので、僕の役柄の幅が広がって、別の役でも試してみたいなと思ってくださる方がいて、役をいただけたら、受けて立とうという気持ちはすごくあります。



――監督から言われた言葉で、印象に残っている言葉はありますか?

映画が完成してみんなで見終わったあとに「(千坂)仲内、気持ち悪かったね」って言われて。そういう役だったと思うので、うれしかったです。



――お話の中で印象に残っているセリフはありますか?


瑛太さんが僕に言うセリフで「あんたはどっちを向いて仕事してるんだ? 侍がえらいか?」というのがあるんですけど、もしかしたら自分にもそういうブレているところがあるのかもしれないと感じました。軸がブレないようにしたいなと思いました。



――千葉さんご自身は俳優というお仕事をどういうモチベ―ションで、誰に届けたくて仕事をしていらっしゃるのでしょうか?


身近なところで言うと、家族が一番大きいと思います。やりたくてやっている仕事なので、自分が一番楽しんでしまっているんですけど。ふだんできないことができるし、会えない人に会えるし、そういう面ではすごく恵まれているなと思うので、ありがたい、という気持ちは大切にしたいです。でも、まだ何も定まっていないですね。これからいろいろと変わっていく中で、死ぬ前に「楽しかったな」と思えればいいなと思います。



――ご家族は千葉さんのお仕事を応援してくれていますか?

そうですね。仕事を始めるときにも反対は一切されなかったですし。今も出演作に対して、細かく感想をもらったりはしませんけど。「あれ見たよ」とか「新しい仕事決まったら教えてね」とか言われたりはします。前のめりに見ていてくれるのはうれしいですね。



――羽生結弦さんとの共演シーンも話題ですが、いかがでしたか?

殿の役が羽生さんだということを誰も知らずに、撮影のときにサプライズで登場されたんですけど、予想もできなかったです。たたずまいがすごくキレイで、美しいなと思いました。羽生さんは「宮城の宝」と呼ばれていますよね。僕も宮城出身なんですけど、宝は殿に譲ろうかなと思います(笑) 撮影のあと写真を一緒に撮ってもらいました。何か僕、握手会に来たファンみたいになってました。



――とても貴重な映画になりましたね。ありがとうございました!

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『殿、利息でござる!』 公式サイト


一つ一つの質問にまっすぐな瞳で答えてくださった千葉さん。俳優というお仕事に、真剣に向き合っているのがわかるまなざしでした!

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現代人にも生きるヒントをくれる映画です。
それでは、また。

(撮影/奥田耕平、取材・文/Mikity)