最近、というかそもそもライフワークにするつもりですが、ずっと二十代の起業家とディスカッションする機会に恵まれ、ときにはちょっとだけ出資させていただいたりもしているので、「こんなとき自分だったらどうするか」と考えざるをえない場面が日々溢れています。
十九歳のときに大学を中退し、ウェブサイトの制作受託から始まった自分の起業キャリアですが、いまの経験値をもとにゼロから起業するならこう考えるかな、という雑記をまとめてみました。自分はものすごい飽き性なので、次々にいろんなことをやりたい気持ちもありつつ、「世界一のメンズコスメブランドをつくる」という目標をあらゆるステークホルダーにコミットしているので、せめて深く考えることでやったつもりになって消化しておこうという気持ちもあります。
M&AやIPOを経験したことがない男の言うことだという前提でお読みいただき、もしこれから起業する、したばかりだという誰かの参考になる部分があればうれしく思います。

-どんなことをやりたいか
いい年こいて恥ずかしいことを言うようですが、ぼくは世界を変えるようなめちゃくちゃカッコいい事業をやりたいと一貫して思っています。
じつは、いまやっている事業もそう考えて始めましたし、創業から6年のあいだもずっと思っていることです。日本からAppleやRedBullみたいな超クールなグローバルブランドが生まれたらめちゃくちゃカッコいいし、世界が変わると思いませんか?
もし、ぼくがいまの経験を引き継いだまま新しく事業をつくるとしても、この条件だけは外せません。どれだけ最初から儲かるプランを思いついても、ドメスティックに限られたアイデアなのであれば、それ以上検討を進めることはないでしょう。

-どうやって事業を決めるか
たくさんの先人に何度も語られていることですが、とにかく成長産業に張ること。
成長産業にひもづいたプロダクトを出すこともそれはそれで競争が厳しいだとか当然のハードルはありますが、とにかく「注目している人間がたくさんいること」自体がオーガニックユーザーやパブリシティ、投資家を招いてくれる重要なポイントなのです。
対して、斜陽産業でのリプレイスを狙う事業も成功しないとは言いませんが、投資家や優秀な人材ほどマクロトレンドを勉強して自分がベットするべき領域を決めているので、超イケてるチームでガンガン市場開拓! 話題沸騰! という結果を出しづらいものだと考えます。
ここまでの内容を踏まえて考えると、グローバルの家具市場が伸びているか調べたうえで、キラーIKEAを目指した家具D2Cとかは考えられるかもしれません。日本をフックにするなら、グルメ系もいい気がします。そう考えるとやはりBAKEさんはすごかったなあ。笑
フィットネスも世界中で一般化してきているので、Pelotonライクなサービスもいいかも。
そのあたりから絞ると思います。
正直、ピュアなウェブサービスは、もうアメリカと中国を押しのけて巨大プラットフォームをつくることが事実上できないと思っています。

-自己資金ゼロからどうやってチームアップするか
よほどの仲間が見つかっていなければ、最初はひとりで起業します。
共同創業者がいたこともありますが、ビジョンが一致していても、ちょっと逸れたところにある雑務のふりわけや資本政策あたりでトラブることはどうしても可能性として残るからです。
まずは事業計画書を徹底的につくります。10万円くらい自由にできるお金があれば、外注してプロダクトの仮グラフィックも用意します。
初めて会う若者を評価するときに、投資家の判断材料はとても少ないものです。物腰、ロジック、センスをなんとか読み取ろうとして、うーんまあなんとなくこんな感じのタイプかな、とあたりをつけることくらいしかできません。そのため、事業計画書はとても大事なものであり、コードを書けない起業家はなおさら、文章と図だけで構成されたワクワクさせる気がないスライドを用意することは罪だとすら思っています。センスを見せつけてやります。そのセンスに自信がないのなら、ファジーな領域を選ぶべきではありません。

投資家はアポがとれた皆様と徹底的に会いますが、自分の場合気をつけることとして、誰からもポジティヴなコメントが返ってくるプレゼンだったら悪い傾向だなということです。「こういう事業、ありだと思ってたんですよ」なんて言われたらもう最悪。まったくオリジナリティがない、プロダクトとしてトガってもいない無難なプラン。男性化粧品事業をはじめるときも、いいねと言ってくれる相手は皆無でした。
別の観点からいうと、たとえば10人が出資してくれるとなったとき、泣く泣く3人を選ばなけらばならない。できるだけシナジーを望める投資家にしよう。そんな状況が苦手なのです。9人に断られ、ひとりだけ賛成してくれたとき、そのひとりに損も恥も与えないよう死力を尽そうと誓います。
エンジェルが固まったら、かならずデットも引きます。会社の残高と同等くらいの借り入れは難易度が低いし、最近では連帯保証がいらない方法も増えているはずなので、恐れることはありません。借金はするな、みたいな意見を聞くこともありますが、国がお金を貸すから新規事業をやってくれと言っているのですから、堂々と借りるべきだと思います。

初期メンバーに関しては、雰囲気だけで決めます。適当という意味ではありません。未経験でやる気だけあるタイプだろうと、超ハイスペックな職歴だろうと、カラーに合わないと思ったらやめておくし、合えば多少雑に採用するでしょう。企業カルチャーをあとから反対側に修正することにエネルギーを使いたくないからです。

-PMFを果たすまで
プロダクト・マーケット・フィットを定義することは難しいのですが、ひとことで言うと「あとは踏むだけ」な状態のことだと理解しています。
だいたい想定しているシンプルな機能を実装していて、ユニットエコノミクス(とくにChurn、LTV、CAC)がtoCなら数千ユーザー、toBなら50社くらいで検証されており、5-10人ほどで月次500-2,000万円くらいのケースが多いと思っています。
ここまでを資金調達から6ヶ月以内に達成してつぎのラウンドに進みたい。事業を決めて即登記したのが1月だとすると、2月末にはエンジェルラウンドをクローズし、5月にはローンチ。8-9月あたりでユニットエコノミクスが見えてくるころです。いまの自分でもゼロスタートならこんなものかなと思うので、1社目の起業でこの水準を超えているかたはもはやトップ10%くらいのスタートを切っていると思って間違いありません。
一方で、さまざまな要因に阻まれ、立ち上がるまでは時間がかかることが大半だといっていいでしょう。このとき、心が折れるまではピボットも延命のための受託もサブ事業もやらないほうがいいと思っています。別のことをやると、そのことに対しても真面目に向き合い、いざというときなかなか離れられません。やはり、当初のプロダクトにあらゆるリソースを割くべきであり、ダラダラと過ごして人件費に資本が食われないよう圧倒的なスピード感で手数を打っておく。その結果、キャッシュアウトが見えブリッジファイナンスも叶わなかったから撤退というのであればそれはそれで潔いと思うし、次のチャレンジに進めるという点ではポジティヴなはずですから。

なんかとりとめのない記事になってしまいましたが、ぼくがまたやるとしても考えることは本当にこんなもんです。
BULK HOMMEをはじめるときなんて7年も前ですから、比較にならないほど荒かったのでしょう。
数年後に読み返して、おれは恥ずかしいレベルのことを言ってるなあと思っていたいものです。