こんな仕事をしているとお客様からの差し入れで生鮮食品をいただくことがある。
たくさんいただいて食べきれない場合はスタッフさんにおすそわけするんだけれど、スタッフさんも食べきれない場合がある。
その場合、その生鮮食品はゴミ箱行き。
誰も捨てたくないが、捨てざるをえない。
劇場のゴミ箱には今日も食べ物が捨ててある。
僕は食べ物を粗末にすることが最も嫌いだ。
しかし、お客様からの差し入れをアリにしてしまうと、食べ物を粗末にする未来が確実に待っている。
なので、デビュー当時から“お客様”からの差し入れを一貫して断り続けてきたのだけれど、断ったら断ったで、
「差し入れは『気持ち』なのだから受けとれよ!」
「差し入れを受けとるのもファンサービスのうちだ!」
と、“差し入れた側の理屈”でもって、怒られてしまう。
要らないものを要らないと言えない世の中だ。
僕個人だけの問題ではない。
僕は阪神淡路大震災の被災者なんだけど、当時、ボランティアとして働いていた僕らの腕と時間を奪ったのは、全国から大量に届いた『千羽鶴』であった。
『千羽鶴』を片付けないことには、凍えている人達に豚汁を配ることも、毛布をかけてあげることもままならなかった。
次から次へと届いてくる『千羽鶴』に僕らは随分苦しめられた。
しかし、「お願いですから、千羽鶴は贈らないでください」と言っても、「お前らの為を想って折ったんだぞ!」「被災地支援を選り好みする気か!」と怒鳴られる。
東日本大震災の時も、熊本地震の時も、同じことが起こっていた。
どうして贈りもので人が苦しむようなことがあるのだろう?
一体誰が悪いのだろう?
何度も考えてみたが、結論、誰も悪くなくて、その原因は時代にあった。
モノが不足していた時代は、贈りものが相手の幸せに直結していたが、今はモノが溢れている時代だ。
僕らは自分の好きなモノを、好きなタイミングで、好きな分だけ手にすることができる。
したがって、持ち物はなるべくコンパクトにきて、なるべく、手は空けていたいと考える。
今の時代における贈りものは、時と場合によっては、相手の自由を奪う凶器となる。
この問題を解決しようと思った。
早い話、『お金』を送れば解決なのだが、しかし贈りものの本質は、そこに費やされた『時間』だ。
何を贈ろうか考えた時間や、そのものを買いにいった時間に、贈りものの本質がある。
「お金を送られると確かに便利だけれど、だけど、そこに時間がかかっていないら、ちょっとサミシイ」
この問題を解決するには、送る『お金』に『時間』を載せるしかない。
つまり、僕があなたにプレゼントする1万円札に、かなりの時間が費やされたことが可視化されれば、あなたはその一万円札を暖かい気持ちで受けとることができるだろう。
そこで、考えたのが『レターポット』だ。
僕が運営から1文字5円で「文字(レター)」を買う。
そして、便箋を選び(便箋によって文字単価が違う)、あなたに手紙を書く。
僕があなたに(単価5円の便箋で)500文字の手紙を書けば、“2500円分の500文字”が、あなたのポットに振り込まれる。
換金できるわけでもなく、これで何かが買えるわけでもない。
「そんなものを振り込まれたところで、一体何の得があるのだろう?」と考える人もいるだろう。
そう考えるのが普通だ。
ただ一つだけ見逃してはいけないのは、「レターポットを利用している人間は全員“文字単価”を知っている」という事実だ。
手紙を贈る相手は、500文字の手紙に何円かかっているかを知っている。
たとえば、あなたが、僕から貰った500文字(2500円分)を使って、友達に500文字(2500円分)の贈りものをしたならば、その瞬間、本来支払わなければならなかった日本円を支払わなくて済んだというわけだ。
出ていくハズの2500円が出ていかなかったわけだから、あなたは2500円を手にしたことになる。
僕らは状況に応じて通貨を選ぶ時代に立ち会っている。
円や、ドルや、ビットコインや、TSUTAYAポイントといった。
通貨は『保存』『尺度』『交換』という3つの機能を持っている。
逆に言うと、この3つの機能さえ持っていれば何でも通貨になる。
『言葉』は通貨になる。
まるでピンとこないかもしれないが、僕は「言葉で回る経済圏」を作りたい。
つい、さきほど『レターポット』のα版(お試し版)をリリースした。
さっそく、Twitterのトレンド1位を獲得した。
レターポットの基本精神は、ギブ&テイクではなく、『恩送り』だ。
普段、無償で与えている人にレターは集まる。
言っていることが何のこっちゃ分からない人もいると思うので、一度、使ってみてくださいな。
贈りもの革命です。
【追伸】
大きな震災などが起きた時は、運営の方で被災地宛のレターBOXを作って、そこに贈られてきたレター分の日本円を被災地に寄付します。
レターポットはコチラから↓
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こらは、西野さんの差し入れとはまた別の話ですが、保育所や幼稚園で先生は子どもに最後まで食べることを大抵強く求めます。子どもの本能は優れていて、鮮度や、安全性についてとても敏感です。まずいものは残します。
嫌いさとか好きとかはあとあとにならないと本当はわかりません。大人になってから食べれるようになるものも、ありますよね。
この、勘違いは西野さんのありがた迷惑の話とも共通しますが、人が子どもに違った信念を教え続けている限り、千羽鶴のことも押し付け差し入れも続くと思います。
肝心なのは相手のことを一番に考えることですよね。
僕も宮城ですが、千羽鶴問題、すごくよく分かります。勝手に来るボランティアもそうです。災害に関する研究でも、そこが問題になっています。そろそろ公のモノも動かす時期ではないでしょうか??
(部外者の物言い、すみません。。。)
署名や個人の活動を伝える、地方自治体は意外に動いてくれますよ。。。西野さんに丸投げスタイルで申し訳ありませんが、、、
レターポットで損害を受けた家や自動車は修理できないためです。
換金機能を無くすのは経済全体がレターポットで回っている(家や自動車の修理費もレターポットで支払える)状況となってからでも良いのではないかと。
ありがとうございます😊😊😊
あったかい気持ちで
生きていける
いいシステムやなあと思います❤️
実際使うのがたのしみです❤️💝💖👀✨