秋に出る『革命のファンファーレ ~現代のお金と広告戦略~』の原稿の手直しをしている。
早めに予約をスタートさせようと思って、先に発売日(10月5日)を決めたところ、担当編集者の袖山女史から、「西野さん、今週中に原稿をあげてください」と連絡が入り、今、涙と鼻血を流しながら、パソコンに向かっている。

さて、『革命のファンファーレ ~現代のお金と広告戦略~』の序盤は、前作『魔法のコンパス』の"おさらい"なので(ここを押さえておかないと本題に入れないので)、すでに内容を知っている人もいる。
知っていれば、読み飛ばしてもらってもかまわない。
どうせ、どこかで(誰かのブログとかで)、話の内容は表に出ているだろうし、僕のオンラインサロンでも散々言っているから、それならばいっそのこと、僕の言葉で書いた文章を、ここ公開しちゃいます。
『革命のファンファーレ ~現代のお金と広告戦略~』の第一章です。
身を削って、公開しているので、面白かったら、シェアしていただけると嬉しいです。
予約していただけると、もっと嬉しいです。
では。

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【革命の起こしかた①】
『今の時代を生きたいのなら、お金とクラウドファンディングの正体を正確に捉えろ』

 

 

《クラウドファンディングは金の成る木ではない》

 

絵本『えんとつ町のプペル』の制作費用は、「クラウドファンディング」で集めた。

説明するまでもないとは思うが、「クラウドファンディング」というのは、インターネット上で企画をプレゼンし、一般の方から支援を募るアレだ。

 

「はじめに」でもお話させてもらったが、『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングは、2度に分けておこなった。絵本の制作費を集める時と、絵本を知ってもらう為の個展を無料開催する時の2度。

2度のクラウドファンディングを合計すると、支援額が5650万4552円、支援者数は9550人。

支援者数は、当時、日本のクラウドファンディングの歴代最高記録だった。

 

これから資金調達の方法として、クラウドファンディングの戦い方についての話をさせてもらうが、話をする前に押さえておきたいポイントは"クラウドファンディングは金が成る木ではない"ということ。

僕はよくクラウドファンディングのサイトをチェックしているが、同じような企画でも、100万円集まる人と、1円も集まらない人がいる。

 

そして、もしかしたら、これは皆さんにとって意外な情報かもしれないけど、TVタレントのクラウドファンディングの戦績は、すこぶる悪い。

僕の親友であり、生物史上もっとも面白い生物である久保田君(ろサーモン)が、『衰退していく劇場に息吹を!』と題し、若手時代にお世話になった劇場の修繕費用をクラウドファンディングで募ったが、目標金額20万円に対して、集まった金額が8万1500円で爆死。過度のストレスにより、久保田君の頭髪はみるみる衰退していった。

彼は現在、頭頂部の毛が完全に無い理由を「メルカリで売った」と言い張るが、その実、クラウドファンディングの敗戦によるものであったのだ。

久保田君の場合は、それによって、"久保田味"が増して良いんだけれど、他のTVタレントさんはネタにもならず、ただただヒッソリと負けている。

 

一度、検索してみてほしい。

TVタレントとクラウドファンディングの相性は驚くほど悪いのだ

どうやら、「有名人だから、お金が集まる」というわけでもない。

 

「金が成る木でもないし、知名度に比例してお金が集まるわけでもない」となってくると、いよいよクラウドファンディングでのお金の集め方が見えづらくなってきたかとは思うが、大丈夫。

クラウドファンディングには、キチンと勝ち方がある。

 

 

《お金とは何か》

 

クラウドファンディングで勝つには、まずは教養として、

「お金とは何か?」

「クラウドファンディングとは何か?」

この二つの問いに対する答えを持っておかなければならない。

この答えは学校では教えてもらえない。

すべての職業の中で、経済から一番遠い場所で活動しているのが、社会を経験せずに職に就いた『学校の先生』だ。

受験に「お金」という問題が出ないもんだから、教える必要がない。学校の先生に一番必要のないスキルが「お金」だ。

ためしに、学校の先生を掴まえて「お金って何ですか?」と訊いてみるといい。ほとんどの先生が綺麗に泡を吹いて終わりだ。

元リクルートで、現在、奈良市立一条高等学校の校長先生に就いている藤原和博さんは、キチンと「お金」の話をしてくださるが(藤原さんの本、超面白いから読んだ方がいい)、残念ながら、そんな先生は極々一部。

 

お金の正体を知らずに、お金を集められるわけがない。

クラウドファンディングの正体を知らずに、クラウドファンディングで勝てるわけがない。

 

ウダウダ語るのも面倒なので、結論を言う。


「お金」とは信用を数値化したものだ。


魚を100匹売りさばいた時に「この人は魚を100匹売りさばいた信用のおける人ですよー」という『信用証明書』が貰える。

その後、自転車が欲しければ、自分が持っている信用証明書と自転車を交換してもらう。

言うまでもないが、この信用証明書の名前が『お金』だ。

 

信用証明書(お金)の形は、貝殻から始まり、貨幣になり、紙幣になり、クレジットカードという"数値"になり時代に合わせて変化してきた。

最初は稀少な素材で信用証明書が作られて、信用証明書の価値は素材そのもの(貝とか金とか)の価値とイコールであったが、「稀少な素材がなかなか見つからねーよ」となって、希少でも何でもない素材が硬貨に混ぜられるようになり(これを「改鋳」っていうんだぜ!)、「つーか、硬貨って重くね? 持ち歩くのに便利な紙にしね?」とか誰かが言い出して、信用証明書の"素材そのもの"の価値は綺麗サッパリ無くなった。

昔は1万円が1万円で作られていたが、現在、1万円札は約20円で作られている。

 

このように形や素材の価値はコロコロ変われど、信用証明書(お金)を介して交換されているものは今も昔も変わらない。『信用』だ。

お金とは「信用を数値化したもの」である。

 

クラウドファンディングとは何か?》

 

次にクラウドファンディングの正体について。

こちらもウダウダ語るのも面倒なので、結論から言うと、"クラウドファンディングとは信用をお金化する為の装置"だ。

同じ企画でも100万円集まる人と1円も集まらない人がいるが、両者の差は、企画者の信用量の差に他ならない。

この線で考えると、TVタレントとクラウドファンディングの相性がすこぶる悪い理由が説明できる。

 

《人気と認知の違い》

 

TVタレントのギャラの出元はスポンサーだ。

スポンサーが広告費(番組制作費)を出し、その一部がタレントのギャラとなっている

お金の出所がスポンサーなので、当然、タレントに求められるのは好感度だ。

好感度を獲得しにいくためには、たとえばマズイ料理を食べても「美味しい」と言わなければならない。嘘をつかなければならない。

10年前なら、視聴者は、その料理の味を確認することができなかったので、タレントは嘘をつき通すことができたが、今はTwitterのタイムラインや「ぐるナビ」で、テレビ画面に映っている料理の味が筒抜けになっている。

嘘が、嘘としてカウントされる時代になってしまった。

 

スマホ登場前後で時代は明らかに変わったのに、以前の方法論のままテレビに出続けるということは、嘘を重ねなければならない場面に出くわしてしまうということ。嘘を重ねれば、当然、信用は離れていく。

そのタレントが辿り着く場所は『人気タレント』ではなく、『認知タレント』だ。

お金を払ってくれる人を「ファン」とするのなら、人気タレントにはファンがいるが、認知タレントにはファンがいない。信用がないからだ。

 

先日、とある番組のクラウドファンディングの特集で取材に来られたディレクターさんが「なんで、西野さんはクラウドファンディングで1億円以上も集まるんですか?」と訊いてこられたので、「信用があるからじゃないですか?」とお返ししたら、「そんなに好感度が低いのに?(笑)」と返ってきた。アホをこじらせて来春まで寝込めばいい。


『好感度』と『信用』、『認知』と『人気』は、それぞれまったく別物だ。

 

ちなみに、『TVタレント』と『クラウドファンディング』の相性はすこぶる悪いが、『アーティスト』と『クラウドファンディング』の相性はバカみたいに良い。良すぎる。

基本、ギャラの出元がスポンサーでなく、お客さんからの"ダイレクト課金"で生活を回しているアーティストは嘘をつくメリットがないので、当然、信用度も高い。

こんな感じの説明で、TVタレントとクラウドファンディングの相性が悪い理由をご理解いただけただろうか?

 

あらためて。

お金は信用を数値化したものであり、クラウドファンディングは信用をお金化する為の装置だ。

この二つが理解できれば、「クラウドファンディングで勝つためにやらなければならないことが何なのか?」その答えは、もう出ていると思う。

 

信用を勝ち取ることだ。

  

『えんとつ町のプペル』を作る為には、資金調達が必要で、資金調達を成功する為には、信用を勝ち取ることが必要だった。


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