毎晩呑み歩いている私だが、他人の色恋沙汰や噂話や他人の悪口で呑む酒ほど不味いものはない。
酒の肴は決まって、次に仕掛ける仕事の話、そして、『他人の肯定』だ。
上手くいっている人を徹底的に肯定し、その人が何故上手くいっているのかを分析し、自分の活動に還元したい。
全ては自分の為だ。

ここ最近の自分の持ちネタは世界的なヒットとなった『PPAP』のヒットの理由だ。

PPAPは面白い。
ただ、ここでキチンと定義しておく必要がある。
僕らがPPAPの「どの部分を面白がったか?」だ。

取り上げられるのは、いつもこうだ。

・「ジャスティン・ビーバーがシェアした」
・「世界的に大ヒットしている」

そう。僕らはPPAPが巻き起こした"現象"を面白がっている。
かつてない規模で拡散した"現象"を面白がっている。
インド人が「♪アイハブアペ~ン」と踊っている、その"現象"を面白がっている。

ただ、そこじゃない部分を面白がっている人がいる。僕の場合だと友人のギャルだ。
PPAPの世界的ヒットの前前前夜に、まだピコ太郎の「ピ」の字も知らないギャルにPPAPを見せたところ、「アイハブアペン~」で爆笑をしたのだ。

アッポーペンとパイナッポーペンが「んん!」して、『ペンパイナッポー、アッポーペン』が完成した瞬間は腹が千切れるほど転げ回っていてエロかった。
とにもかくにも、メチャクチャ笑っていたのだ。

あらためて。
まだPPAP童貞だった頃の僕らは、そこで笑っただろうか?
「ジャスティンビーバーがシェアした」という情報を仕入れる前に、そこで笑えただろうか?

いいや、僕らがPPAPを面白がれるようになったのは、もっともっと後だ。
僕らは「世界的にヒットしている」という情報込みで、面白がっている。
つまり『理屈』で面白がっている。 

ただ、そのギャルが笑った時は情報なんてない。
ギャルは『理屈』ではなく、そのエロい『身体』で笑ったのだ。
『身体』で笑う人がたくさんいたから(すでにヒットしていたから)、結果、ジャスティンビーバーに届き、シェアされ、世界的ヒットとなり、『理屈』で笑う僕らに届いた。
この順番だ。

ピコ太郎さんの見事さは『身体』で笑えるモノを理屈で作ったというところにある。

ここからは御本人確認をとったわけではないので、あくまで僕の分析ですよ。

PPAPにはモデルがある。
過去に、同じように『身体』に訴えかけて大ヒットした曲を下地に再構築している。

それがこれだ。

「日本最古のラップ」と言われている川上音二郎の『オッペケペー節』。
明治時代に誕生し、パリ万博や欧米公演でも喝采を浴びた大ヒット曲だ。
『オッペケペー節』は散々っぱら体制側をラップ調でディスった後、メロディーにのせて、こんな文言で締められる。

「♪オッペケペッポー、ペッポッポー」

破裂音、そしてリズムまで、まったく一緒。

「♪ペンパイナッポー、アッポーペン」だ。


オッペケペー節は日本人のみならず、日本語が通用しない海外でも見事に通用した。
つまり『理屈』ではなく、『身体』に反応する音であったのだ。
日本人の『身体』に「5.7.5」が反応するように、あのリズムに乗せた破裂音は、どうやら100年前から人間の『身体』に刺さっている。

これね。
たまたまじゃなくて、ピコ太郎さんが"狙いにいっていたら"スゲー面白いんだよね。
ただ、僕、ピコ太郎さんとお会いした時は、決まって長時間話し込んじゃうんだけど、あの人なら狙いにいっている気がするな。
芸人をやっていて、しかも音楽に精通している人が『オッペケペー節』を知らないわけがない。

だとすれば、恐ろしいプロデュース力だよ。
「オッペケペー節を下地にしよう」という発想が面白すぎる。
マキタスポーツさんとかも、この辺、メチャクチャ上手いんだけど、こういう編集は「面白い」としか言いようがない。
カッコイイ先輩だよ、ホント。