月別アーカイブ / 2019年12月

まずは1年間中村憲剛並びに川崎フロンターレを応援していただき本当にありがとうございました。

個人として総括をすれば2019シーズンは怪我を重ねてしまったシーズンで、その影響もありチームに貢献する期間が短く、非常に悔しい1年になってしまいました。

振り返るとなると、どうしても11月に負った大きな怪我、またそこからの手術・リハビリの印象が強く残ってしまいますが、シーズン序盤から中盤にも怪我に悩まされた時期がありました。

正直言うと、この時期の方が今よりも精神的に本当に厳しい時期でした。
今の怪我は受傷した時点で覚悟はできていたし、地道に日々を積み重ねて戻るしかないと腹を括っていたところもあるので、前向きに取り組む土台はできていましたし、実際にここまではとても前向きに取り組めています。
でも、この時期は今までのサッカー人生で経験したことのないような怪我の連鎖が続き、リハビリも設定した復帰時期が近づいてもプレーできそうにない時や100%で走れないのでアクセルを踏みたくても踏めない時があって本当に今まで通りサッカーができるのかという不安と危機感と焦燥感にまみれた日々が続きました。
本当にきつかったです。

ただ、その時期を乗り越えて4ヶ月ぶりにスタメン復帰して勝利を収めたアウェイのFC東京戦で、終了後サポーターのみんなの前に向かって行く時に眼前に広がった勝利に沸く歓喜のフロンターレサポーターの姿を見て共に喜べたその瞬間、ピッチこそが自分が一番生きていると感じられる場所であること、この職業を生業にしていることの充実感、満足感、プライド、喜びを猛烈に感じることができました。
これは17年間のサッカー人生で未だかつて経験したことのないものでした。

もちろん怪我をしないことに越したことはないと今でも思います。

ただ、その時期怪我に苦しんだり、悩んだり、不安になりながらも、もがき歩みを止めずに前に進んで乗り越えた時に得られるもの、見える景色はその期間を乗り越えた者にしかわからないとても価値のあるものだと思いました。

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またチームとしてはリーグ3連覇、カップ戦のタイトルを目指したシーズンでした。
結果的にはリーグは4位、ACLは予選敗退、天皇杯も敗退とみなさんの期待に応えられたシーズンとは言い難いかもしれませんが、クラブ史上初めてのカップ戦タイトルをルヴァン杯で獲ることができました。

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2017シーズンに初めてタイトルを獲り、2018シーズンにリーグ連覇をしたことで毎年タイトルを獲りたいという想いが強くなり、それを日常にするために日々のトレーニングの質を高くしていく。その積み重ねでフロンターレはより強くなっていく、その考え・思いは今でも変わりません。
ただ、それと同時に勝ち続けることはやはり簡単ではないと痛感するシーズンでもありました。
他のチームからの対策は更に厳しくなり、過密日程、怪我人の影響により毎試合メンバーが変わる中で勝ち続けることは容易ではありませんでした。
ただその苦しい戦いの中「カップ戦では勝てない」と言われてきたフロンターレがルヴァン杯を獲ったことはクラブとして大きな一歩、財産になったと思います。
このカップ戦を獲った経験と今シーズン出場機会を得て成長し続けた選手たちの経験値、チーム・個人で感じた悔しさは来シーズン必ず繋げなければならない部分だと思います。

サポーターのみなさんの熱い後押しは常に感じていますが、中でもルヴァン杯のタイトル獲得は最後まで諦めずに共に戦ってくれたみんなの力がなければなし得なかったと思います。
本当にありがとうございました。


また今シーズン限りでフロンターレを去る選手がいます。ショータ、あべちゃんはフロンターレをここまでのクラブにしてくれた選手たちと言っても過言ではありません。どんな時でも前向きな声をかけ続けてくれたショータ、常にチームが勝つために周りに声をかけ続け、プレーで見本を見せ続けてくれたあべちゃん。2人は本当に本当に頼りになる選手たちでした。2人の存在なしではタイトル獲得は無かったと思います。
本当に感謝しかありません。
毎年のことですが、この時期はとても嫌な季節です。今でも2人がいなくなるのは信じられないですし、正直とても、とても寂しいですが2人にはそれぞれの道で成功してほしいと心から願っています。
本音の本音を言うと復帰するまでの過程と復帰した時に一緒にプレーできないのは本当に寂しいですが…。

苦しいシーズンではありましたが、実りもあったシーズンだったと思います。
タイトルが獲りたくても獲りたくても獲れないシーズンがとてつもなく長く続いたことを考えれば、毎年ひとつずつタイトルが獲れている今の状況は隔世の感がありますが、それは勝てなかった時期の経験を無駄にせず、ひとつづつ積み上げてきたことでもたらされたものであることは間違いないと思います。ただ、今のJリーグを取り巻く流れは速くそれにプラスαしなければ勝つことのできないリーグになってきていることもまた間違いないと思うので、今シーズンの経験・悔しさを繋げて来シーズン共に戦う新たなスタッフ、選手たちと目標に向かって頑張りたいと思います。

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最後になりますが、改めて今シーズンも1年間熱く支えていただきありがとうございました。
怪我をした後に掲げてくれたビッグフラッグ、チャントは一生忘れません。
いつもみなさんの声が突き動かしてくれます。
またあそこに戻るんだと改めて強く思いました。ありがとうございました。
来シーズンは少なくとも最初の数ヶ月は試合に絡めることはないので、その立場でチームにどう貢献できるかをしっかり考えてチームの為に自分のやれることを頑張りたいと思います。
みなさんの前に戻ることをモチベーションにして。

本当に1年間ありがとうございました。
良いお年をお迎えください‼︎

中村憲剛

こんばんは。

先日、ANAさんの社内向けセミナーにパネリストとして招待していただき、生意気にも150人のANAグループ各社の社員の方の前でお話をさせていただきました。このセミナーはANAさんの指針の一つである「努力と挑戦」をテーマに社員の方の行動が社会とどのように繋がっているのかを意識する、考える機会とするためのセミナーでした。

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なぜこのようなセミナーに呼んでいただいたかというと。

今年の7月のホーム大分戦にて、川崎市、大分市に在住の発達障がいのあるお子さんとそのご家族のみなさんを等々力に招待して試合を観戦してもらうというイベントを行いました。


その時の詳細はこちらをご覧ください。

このイベントはANA、JTB、富士通、(以下敬称略)Jリーグ、川崎市そして川崎フロンターレの各企業と行政とJリーグが協力して実施したものなのですが、今回はその時の話をイベントに携わった川崎フロンターレの一選手としてお話をするためにこのセミナーに招待していただきました。

このセミナーの詳細はこちらをご覧ください。

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セミナー内では、この取り組みについてまとめた映像が流れました。映像では当日の子どもたちのスタジアムでの楽しそうな顔を見ることができ、また各社が担当とする分野でどのような取り組みがされたのかを見ることができました。

僕自身は大分戦当日はピッチでプレーし、その姿を子どもたちに観てもらい、大分戦の次の日に行われた麻生グランドでのサッカー教室で子どもたちと触れ合いました。
後日また試合観戦に来たいという感想を聞きとても嬉しく思ったのですが、映像を見た時に、各企業だけの力では難しく成し得なかったかもしれないものが、多くの方の協力の元このイベントを成功させたいという想いが繋がり、そのために各々担当する分野、得意とする分野でサポートし合うことでそれが大きなパワーとなりその結果、普段なかなかサッカーを見たくても見られない発達障がいのある子どもたちやご両親にスタジアムでのサッカー観戦やサッカーをプレーすることを身近に感じてもらう機会が作れたこと、子どもたちの笑顔が見れたことを本当に嬉しく思いました。

Jリーグは今「シャレン!」という形で、Jリーグをより開いたコンテンツとしてもっとJリーグを活用して様々なイベント、取り組みができるようにしようという取り組みを行なっています。

詳しくはこちらをご覧ください。

もちろん、これまでもJリーグはいろいろな形で多くのイベントを開催してきたとは思いますし、僕自身も参加させていただいてきましたが、今回のように選手としてJリーグとだけではなく、Jリーグと多くの企業との連携で行われたこのようなイベントにより深く参加できたことで、サッカークラブそしてJリーガーとしてプレーをすること以外の新たな可能性の一端を示すことができた気がしました。

サッカークラブ、そして所属する選手が試合を開催し、プレーで魅せることはとても大事で、優先順位として何よりも一番上に来ることは当たり前だと僕も思います。

ただ、プレーで魅せることと同じくらいにサッカークラブ、プレーヤーとしてもっとできることがあるんじゃないか。
フロンターレに入って17年経ちますが、これまで多くのイベントや取り組みに参加して地域や多くの方と繋がることでフロンターレに関心を持ってもらい、サポーターが右肩上がりに増えていく過程を一番近くで見てきた人間として強く思うようになりました。

そういう活動を続けてきたフロンターレが評価されたことで今回のセミナーにフロンターレの選手代表として招待して頂いた訳ですが、共にパネリストとして参加したJリーグの米田理事、富士通の田中さん、ANAの近藤機長からのお話を聞いて、改めてフロンターレがこれまで取り組んできた活動は間違っていなかったのかなと思いました。そういう意味で本当に嬉しかったです。

また、同じ想いを持った各企業が枠を取り払い共に取り組める今回のようなイベントが今まで以上にもっとたくさん増えていけばより多くの方にJリーグを楽しんでもらえるし、また協力していただいた企業の方にもJリーグ、Jクラブ、Jリーガーの可能性を見出して頂けるのではないかとも思いました。

今、Jクラブは全国に55クラブあります。
各クラブがそれぞれで地域貢献活動や社会貢献活動を行っており、地域の企業とコラボレーションしてより独自性のあるイベントを開催するニュースを見る機会が増えてきています。
全部が全部は難しいかもしれませんが、これからもJリーグ、Jクラブが多くの企業のみなさんとコラボレーションして地域を笑顔に元気にできるイベントがたくさんできたら良いなと、それを55クラブが各地域でできたらサッカーで日本を元気にできるなと、単純な中村憲剛はそう思ってしまいました。

各クラブの地域への関わり方、考え方はそれぞれでしょうし、それが簡単なことではないのは百も承知しております。

でも、入団したクラブが地域を盛り上げるために、何事もやらないよりやってみようという発想の川崎フロンターレというクラブで、そこに17年いるためそういう発想の選手になってしまい(苦笑)、そういう発想のクラブ、選手でコツコツ活動を続けた結果その活動が評価され今回のような素晴らしいセミナーに招待して頂き、参加したことでJクラブ、Jリーガーの新たな社会への関わり方の可能性を勝手に見出してしまったのでそう思わずにはいられません。

それに何より自分が参加することで喜んでくれる人がいるということ。
サッカー選手としてプレーを評価されることは最大級の喜びですが、プレー以外でもサッカー選手としての価値を認めてもらえるなんてこんなに嬉しいことはないです。

これからもみんなを笑顔にできる活動に参加できるクラブ、選手でありたいなと改めて思いました。

今回このセミナーに招待して頂いたANAの関係者の皆さま、パネリストのみなさま、貴重なお時間を本当にありがとうございました😊
楽しかったです‼︎


中村憲剛


川崎フロンターレYouTube公式チャンネルにて、中村憲剛選手のインタビューが掲載されています。ぜひ、ご覧ください。

■媒体名
川崎フロンターレYouTube公式チャンネル

■掲載ページ
川崎フロンターレ「中村憲剛が伝えたいこと」

■掲載日
2019年12月21日(土)

■内容
サッカー人生で初めての大きなケガ、手術。
リハビリや入院生活を通して、中村憲剛が今伝えたいこととは。

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