野崎弁当です。
先日2022年11月15日、MeseMoa.11thシングル『イイコノママデ』が発売されました。
今日はそのカップリング曲として収録された、野崎弁当のソロ曲である『この先36号線』のお話です。
今回、有難いことに自分自分で作詞をさせていただけましたので、どのような気持ちで歌詞を書いたのか、少しだけ触れていきたいと思います。
この曲については諸々の事情があり、一番最初にタイトルを決めました。タイトルを先に決めた後に、このタイトルからイメージを膨らませ、どんな曲にしようか考えを巡らせ、そこから詞を書いていった訳です。
タイトルにある「36号線」とは、北海道に実在する国道の名称です。
(Wikipedia)
北海道札幌市を起点とし、千歳市や苫小牧市を経由しながら室蘭市まで至る大きな国道です。36号線沿いではないですが、起点のすぐ近くには観光名所の時計台があったりします。テレビ塔のある大通公園を横切る道でもありますね。
通称「サブロク線」などとも呼ばれており、札幌市民など、この国道が通る場所の住民にとってはとても馴染み深い道です。
千歳市を通るということで、新千歳空港のすぐ横を走る道でもあります。
もし札幌から新千歳空港に向かう場合、高速道路を使わない場合は必ず通る道になりますね。
また、僕が20代の頃に働いていた場所は北海道の十勝という地域ですが、休日は東京などでのむすめん。の活動に充てていたため、十勝から新千歳空港へと至る道をよく使っていました(もっと近くの帯広空港は便数が少ないためスケジュールがあまり合わなかったので……)。
その十勝から新千歳空港に向かう場合は、高速道路の千歳東ICを降りた後に国道337号に進むため、実際には国道36号は通りません。
ですが、新千歳空港に向かうまでのその一瞬、国道36号の上を横切ることになります。
ちなみに、新千歳空港に向かわずに千歳市街で降りると、札幌へ向かう国道36号に接続していったりしますね。
この先36号線。
僕が進む先には、いつも必ず国道36号線という道がありました。
たとえ36号線を通らなくても、必ず僕の行く先にはその道がありました。
馴染み深い36号線に「繋がっている道」を、何度も何度も通ってきました。
36号線に続く道を走っていたあの時のことを、あの時見た景色のことを思い出して、それをイメージして詞を書いてみよう。
こうして、タイトルと大まかな方向性が決まったわけです。
イメージは僕の経験や見てきた情景から膨らませましたが、この歌の主人公は必ずしも僕である訳ではありません。
僕の見てきた景色を軸にしてはいますが、僕に限らず誰しもが主人公になれるような歌にしたつもりです。
『この先36号線』の主人公は車を走らせる以外何もしていません。
情熱を発することも無く、かといって反省や後悔をするでもなく、
「今走っている道は、あと何回走れるかわからない」
そんなことを頭のどこかで分かっていながらも、特段味わって噛み締めることもしていません。
ただただ、車を走らせているだけ。
特別な出来事も起こっていません。
『イイコノママデ』のように、そこに恋愛がある訳でもない。
大きな事件が起こる訳でもない。
激しい感情の起伏がある訳でもない。
漠然と、ただ前に進んでいるだけ。
いつもと同じ、見慣れた日常の繰り返し。
逃げ水のような僕。
逃げ水は、誰かが追いかけないと成立しない蜃気楼だけれど、
たくさんの夢を乗せた飛行機は、僕に目もくれず背中を向けて飛んでいく。
僕という存在が、まるでこの世界に一人取り残されているかのように、更に曖昧なものになっていく。
この歌にはたくさんの要素があって、
それは、毎週のように北海道と東京を往復していた頃の野崎弁当であり、
当たり前にそこにある日常の尊さでもあり、
孤独であり、
諦念であり、
弱さであり、
哀しさであり、
寂しさであり、
ちっぽけさでもあります。
そういったたくさんの要素がある中で、僕がこの歌に対して一番最初に込めた思いは、
「前向きじゃないことへの肯定」です。
今までに世に出ている「野崎弁当を象徴する歌」は何だろうと考えたときに、まず思い浮かぶのはやはり僕のMeseMoa.でのセンター曲『New Sunshine』や、二番煎じとのユニット曲『Don't Look Back』なんじゃないかと思います。
前向きな力強さのある曲で、僕自身、とても好きな曲たちです。
でも、きっと、その前向きさが、力強さがしんどくなる時が、時にはあったりするのだと思います。
「空っぽに変わりそうになって、初めて気づくんだ」
そんなことはわかっている。わかっているけど。
じゃあ何かしなきゃダメなのか?
思いを巡らせなきゃダメなのか?
自分は自分なりに、今を必死で生きている。
それだけじゃダメなのか?
それだけでもいいんだと思います。
前向きなのが辛いときは、横を向いても下を向いてもいいんだよって言ったりします。
でも、横すらも下すらも向いていなくても、
ただそこにいるだけで、
それでいい時だってあるんだと思います。
「何もしていなくたって、何もできなくたって、前向きじゃなくたって、それでいい時だってある」
そんな思いを、歌に込めたいなと思いました。
そうすることで、きっと誰かに寄り添えて、誰かを救える気がしたので。