【コラム】スポーツナビさんに寄稿したコラムというか資料レポートが掲載されています。
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大谷翔平のメジャー挑戦を考える 日ハムが示した韓国の実例とは?(スポーツナビ)

アジアシリーズ2012が終わり、来年3月にはWBCが控えています。
シーズンオフということもあり、今後、ちょっと刺激的なタイトルの記事に
目を引くことも多いかと思います。

日韓両国で報じられる、
「韓国メディアでは…」、「日本メディアでは…」と書かれた記事には、
時折、ボタンの掛け違いがあったりして、幾度もそれに直面してきました。

そうなる過程について、
先日のアジアシリーズを例に記してみようかと思います。
まぁ、こんなことをつらつら書くのもブログらしいところということで。

先日7日の午前、アジアシリーズの前日練習を終えた、
巨人の原監督と阿部、澤村両選手がプサンサジク球場の会見場で、
記者陣からの質問に答えました。

原監督に「サムソンとロッテについてどの程度知っているか?」との
質問が韓国の記者さんからあり、原監督はこう答えました。

「戦力分析は今日、明日で知識を入れます。
私が知っているのは、サムスンにイ スンヨプ選手がいることはよく知っています」。

というものでした。原監督は「よく知っています」に力を込め、
日本語で聞くと、
「スンちゃんがいることはもちろん知っているし、活躍しているようですね」という
雰囲気にも取れる表現でした。

国際大会ではこれを通訳担当者が他言語に訳します。
この時、通訳をされたのは卓越した日本語を話す韓国の方だったので、
この内容も当然ながら正確に訳されました。

その後、この会見の内容が、ある韓国メディアで記事になりました。
タイトルは「原監督、サムソンはイスンヨプだけ知っている」。

記事のタイトルの大半は(当方が説明することではないように思いますが)、
書いた記者さんではなく、編集するデスクでつけられるようです。

インターネットを通して記事を配信することが当たり前になり、
タイトルで興味を引くというのは、テクニックのひとつですよね。

当方も女性有名人の「ノーバン始球式」によく目を奪われます(笑)
先日は「消化剤で道路一面白い泡」というのを「面白い泡って何?」と思い、
記事に目を通してしまいました。

さて、ややこしくなるのはここからです。
当方、この会見終了後、サジク球場から約30キロ離れた、
サムソンが練習を行う、ロッテの二軍施設・サンドン球場へ移動しました。
そこで、会見場にはいなかった、韓国のある記者さんが、
サムソン・ペ ヨンス投手との雑談中、こんなことを言っていました。
「原監督はサムソンではイ スンヨプしか知らないってよ」。

まぁ、「ペ ヨンス投手がどんな反応をするかな?」というのも込みの会話ですが、
既に間違って伝わっています。

そこで当方はその場で韓国記者陣に会見の様子を伝え、
彼らは当該の記事を読み直すと、
「文頭に会見のコメントはあるけど、それが誤認だったんだね。
そしてその後は記者の主観に関するものだね」とのこと。
彼らは原監督が話した内容の意図を理解しました。
その後、韓国側での誤認は収まったように思います。

一方、日本では「韓国メディアで原監督の発言が歪曲して伝えられている」と
報じられたようです。

確かに歪曲して伝わりました。でもそれは「一部の韓国メディア」であって、
大半の韓国メディアが歪曲するまでには至りませんでした。
その「一部」と「大半」をよく確認することが、読み手には必要かもしれません。

大会期間中、原監督はそういった誤解が生じないように、かなり配慮した発言をし、
加えて世界の野球界を考えた言葉を繰り返していました。
その姿に韓国の知人記者たちは「原監督、男前だ!」とみなファンになっていました。
韓国メディアが原監督の魅力にハマったというのは、
日本ではあまり伝わっていないかもしれませんね。

なかなか難しいことですが、国際大会では言葉のチョイスが重要になります。
誤解をきっかけに険悪になったり、闘志に火がついたりとか。
(とはいえこれだけ国際大会が増えると、両国選手間に交流もあり、
バチバチした感じにはなりにくいですが)

しかし、それにとらわれすぎて、無難なことだけを言うのもつまらなくはなっちゃいますが、
「記者会見」のような席ではやむを得ないように思います。

一方で勘違いが面白い結果を生んだこともありました。

パースヒート(豪州)戦終了後の会見で原監督は、翌日の対ロッテ戦について聞かれ、
「細かいデータは入っていません。
できればここにいる担当記者に教えて欲しいという希望を持っています」
と答えました。

これを通訳さんは「ここにいる“ジャイアンツ”の担当記者さんに教えて欲しい」と訳しました。
「ジャイアンツ」。そう、巨人もロッテもジャイアンツ。
当方、原監督は巨人の担当記者さんに向けて言ったのかな?と思ったのですが(違うのかな)、
これを聞いた韓国のロッテ担当記者さんたちは「おまえ言え、おまえ言え」と背中を押し合い、
ある若手記者が大声で「変化球をたくさん投げてください!」と言いました。
すると原監督は「参考にします」と言い、場内に笑いが起きました。

もちろんこれらのやり取りはウイットの範疇で、
翌日先発の澤村投手は「真っ直ぐ中心の投球」で勝ち投手に。

こんな言葉のキャッチボールはなかなか面白いです。

以上、あれこれと書きましたが、
日本も韓国も、それぞれで報じられたタイトルに、
瞬間的に目くじらを立てることなく、冷静に読むことと、
それが多くの意見なのか、一部なのかを判断することが必要かもしれません。

まぁ、面白がるだけならどう解釈してもいいと思いますが、
それで他者を巻き込むのは、ややこしくなっちゃいますからね~。




2017-5


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室井 昌也

論創社
2016-12





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室井 昌也
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2014-11-18