23日、ハンファはキム・ソングン監督が退任し、イ・サングン投手コーチが監督代行を務めることになりました。

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これについては24日付けの日刊スポーツさんの「ワールドベースボール」内の「韓話☆球題」に記したのですが、本件について尋ねられることが多いので、それに加筆しまとめる形でいくつか記したいと思います。

◇キム・ソングン監督(以下、キム監督)
74歳。歴代2位の監督通算勝利数を誇る名将で、2015年からハンファの監督に就任。これまで下位チームの再建役として各チームをポストシーズンに導き、SKでは3度の韓国シリーズ制覇を果たした。チーム強化のために全権を掌握し、徹底した取り組みをするのが特徴。ハンファが7球団目の監督就任だが、そのすべてで球団との不和によりユニフォームを脱いでいる。

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ハンファイーグルス
2007年のポストシーズン進出を最後に低迷を続け、この2008年以降、5度最下位に沈んだ。打開策としてキム監督待望論が持ち上がり、2015年シーズン、キム監督との3年契約をスタートさせた。

◇2015年から昨シーズン終了まで
キム監督就任初年度、前半は劇的な逆転勝利が続きファンが急増。観客数が前年に比べ約4割増えるなど、その後も話題を集める人気球団となった。球団はFA選手や大物外国人選手の獲得に惜しみなく投資。3年連続最下位からの脱却とポストシーズン進出を目指した。しかし2015年の成績は6位。翌2016年は7位で上位争いに加わることはなかった。またキム監督が指揮を執るチームでは必ず取り沙汰される、投手陣の酷使への批判が集まった。

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【写真】ハンファはこの3年間で人気球団になった


◇昨秋からここまで
近年の韓国は現場とフロントの役割分担が明確になっているチームが好成績を残していることから、ハンファも昨秋から球団のゼネラルマネジャー的役割を果たす球団団長にパク・チョンフン元LG監督を据え、キム監督の権限が一軍の現場運営に限られることを明文化した。現在の順位は9位。

◇退任に至った経緯
キム監督は一、二軍の入れ替えの対象となる選手を直接見て判断したいという考えがあり、二軍選手の一軍への練習参加要請を要請するも、球団は二軍の選手は二軍のシステムで活動しているとし繰り返し拒否した。
今週21日の試合後、キム監督が一部選手の打撃練習を実施しようとするも、球団側がそれを認めず、キム監督は球団の意向は承服出来ないと辞意を示した。

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【写真】19日は深夜にソウル遠征からバスで本拠地・テジョンに戻った後、試合開始7時間半前の午前11時から特打を実施。若手の他、ロサリオ、チョン・グンウらの主力も参加した。

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◇退任発表に至るまで
球団はキム監督の辞意表明という、予測された流れを静かに進めようとしたが一部報道で「キム監督更迭」と報じられ、その火消しのため23日午後、「監督の辞意を受け入れるか協議中」という公式発表を行った。同日は監督不在のまま試合を行い、試合が9回を迎え、メディアの記事が試合結果であふれるタイミングを計って、球団は監督の辞任と代行監督の発表を行った。球団の体面を繕う姿勢が濃く表れた退任の報だった。

◇まとめ
「徹底的にやらなければ強くはならない」というのがキム監督の持論。一方の球団は長期的視野でチーム運営を考えた際に、過度な練習が選手の疲弊へとつながるという憂慮があった。この考えはどちらも正論だと思うが、それを両立させることは難しい。
キム監督の処方は劇薬で副作用を伴うことが多い。球団はそれを理解した上でキム監督を招聘したが、この2年では結果が伴わなかった。そして昨秋、組織として方針転換を図った。その時点から監督の退任は予見されていた。

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【写真】びっしりと細かい字で書きこまれた、キム監督の手帳(2012年撮影)


■全体を通して
キム・ソングン監督とはかつて長時間に渡り、幾度もお話を伺う機会があり、現場で接した機会も多いので、監督の考え方を理解している方だと思います。監督が長い時間練習を徹底して行う理由に、「韓国の選手は一流選手を除くと自覚に欠ける者が多く、管理しなければならない」と監督は言います。当日の練習スケジュールを伝えるのが直前だったりするのも、「前夜に遊んでしまわないため」。選手、そして練習に付き合うコーチ、スタッフみなしんどいのですが、勝てばその苦労もすべて吹き飛ぶため、その喜びを味わったことがある人はキム監督についていきます。

一方で球団の考えも至極当然だと思います。結果が伴ってこそキム監督のスタイルは認められますが、結果が出なければそれは正しい行動とみなされません。それが勝負の世界なのでしょう。または「前時代的な発想」という判断になります。ハンファはキム監督が指揮を執ったチームで初めて、在任中ポストシーズンに進めなかったチームとなりました。

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【写真】今年2月、WBC韓国代表合宿に訪れたキム監督(写真右)。イ・デホ選手が「監督、きょうハンファのキャンプは練習休みなのに、なんでユニフォーム着ているんですか?」と尋ねると、「朝から選手に練習してきた」と話し、イ・デホ選手は苦笑。

74歳のキム監督、一般的に見れば現場から退く年齢です。しかし隠居するような方には思えません。次はどんな姿でグラウンドに現れるでしょうか。



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