『東京藝大物語』を書くとき、なにしろ元になっていることがあまりにも強烈でおもしろいので、そこから離れまいと固執することが問題になった。


 フィクションには、現実と別の文脈やリズムがあるのだ。


 それで、編集の西川さんや柴崎さんのアドバイスもあって、ある程度フィクションのところを入れた。


 全体の20%くらいだろうか。しかし、鮮明に立ってくるエピソードのほとんどは本当である。大竹伸朗さんのハイキック事件とか(笑)。


 自分の拙い経験をふりかえっても思うのだけれども、「自伝的小説」と呼ばれているもののうち、内容のどれだけが事実で、どれだけがフィクションなのだろう。


 物語には物語の生理があって、事実の方を自分の生理に合うように変えてくるのだ。


(クオリア日記)