月別アーカイブ / 2020年10月


 ランニングをしていたら、公園で、小さな女の子が、おかあさんといっしょにいた。


 女の子がしゃがみこんで、「どんぐりたくさんある!」と言っている。


 そのうちに、女の子がうれしそうに飛び跳ねて、おかあさんのところに駆け出した。


 「ねえ、ママ、三角のどんぐりあったよ! 三角形のどんぐりだよ!」


 「まあ、すごいわねえ。」


 おかあさんはそう応えたけれども、もうひとりのママ友と笑っていて、女の子のどんぐりをちゃんと見ていない。


 そのうち、女の子がまた声を上げた。


 「あっ、石だった。三角のどんぐりだと思ったけれども、石だったよ。」


 少し、きまり悪そうな女の子。


 そうか、石だったのか。



 ぼくは少しスピードを上げて走り抜けた。


(クオリア日記)





 ランニングしていたら、交差点のところで、右手を高く上げて手首のところだけ振っているおばあさまがいらした。


 何をされているのかな、と思った。


 ひょっとしたら、横断歩道の向こう側に知り合いがいて、「こっちこっち」とやっているのかなあ、と思った。


 そのうち、信号が青になって、人々がわたりはじめた。


 ご高齢の女性ふたりが、手を振っているおばあさまの方に歩き始めた。


 そのうち、比較的お元気そうな女性が、かなりご高齢の女性に対して、わたりはじめてすぐに、「もっとはやく歩きなさい!」とびっくりするくらい鋭い声でいった。


 言われた女性の方は、おぼつかない足取りで、ゆっくりと、しかし着実に歩いておられる。


 横断歩道を半分わたったところで、少し休んだ。青の高さが短かくなっている。


 はらはらしたけれども、なんとか二人は渡り終えて、手を振っているおばあさまのところにきた。


 ああ、よかった、あの二人に手を振っていたんだ、と思った。


 ところが、二人は一向に手振りおばあさまに話しかけない。


 関係なかったのかな。


 おばあさまは、ずっと手を振っている。


 右手を高く上げて、手首のところだけ、一生懸命、確固とした意思を持って。


 幹線道路は、車がまた流れ始めた。


 ぼくはなんだかいたたまれなくなって、再びランニングを始めた。


(クオリア日記)


 走っていると、公園などで、ときどきワンちゃんがほえかかってくる。


 そんな時、ひもが引っ張られてめいっぱいになっても、とどかないでそれ以上いけない。


 小さなワンちゃんだと、それでも、いっしょうけんめいひもをのばしてこっちに来ようとする。


 この前ふと思ったのは、あのようなとき、ワンちゃんはひもがピンとのびてそれ以上これないことをわかった上であえて勢いよくやっているんじゃないかということ。


 ワンちゃんの気持ちを考えると、ひもつきわんわん競技のような気がする。


(クオリア日記)

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