中心を外さずに。第92回。
仮想通貨(cryptocurrency)で、一つ直観に反するのが、その発行量で、すでに数千あると言われているけれども、ICOを重ねていくと、原理的にその総数に上限があるわけではないから、たとえば数万、数十万の仮想通貨が発行されたとき、それは一種のハイパーインフレになると思われる。
実際には投資が集まる通貨とそうでない通貨が出るだろうから、市場原理で淘汰される、という理屈もなりたつが、人気のあるものからないものまでロングテールで存在するという状況が、決済手段としても持続可能なのかどうかは疑問だ。
ブロックチェーンで、維持のためのプルーフオブワークに基づく貨幣の配分も、ビットコインのように逓減する設計になっているのは上のハイパーインフレ回避という意味では理解できるが、しかしそれだと採掘のインセンティヴも逓減する。
ICOもそうだが、創始者ないしは初期の参加者の方が得をする構造になっている点が、仮想通貨のメリットであると同時に設計上の大きなリスクである。
つまり、ブロックチェーンというイノベーション自体は興味深いし可能性を感じるが、インセンティヴやフェアネスという視点から、認知的に設計の最適化を十分に行っていないという印象がある。