月別アーカイブ / 2013年12月

【事前アナウンス】

このポエムは『立て替えで長年住み馴染んだ住宅がものの時間もなく破壊されていく過程』を極めて主観的、もしくは群像的に描いたものですが、事前アナウンスしないと絶対に伝わらないと思ったのでご説明させて頂きました

【以上でございます】






苦いコーヒーが格別に口からたれている
家が42分で潰れていくのをつぶさに観察している
お隣に縄梯子をかけている
よろしゅうございますか?私がイエスと答えたらあなたはすかさず「yes」
あ、あ、あ、今まさに、今まさに、あ、あ、今まさに、あ、まさに、今、まさに
天井から吊るされていたシャクヤク。窓際のニューホーミングクレンザー
だめだめ。やっぱりもどしてくださいお願いします。金はないけどなんとかして
金はないけどなんとかして
金はないけどなんとかし
金はないけどなんとか
金はあいけどなんと
金はないけどなん
金はないけどな
金はないけど
金はないけ
金はない
金はな
金は

窓に亀裂、シロアリの避難、お隣で犬がベーコンにされている。母屋から離れたプレハブから泣き声。
あっ、おばあちゃんまだ生きてたの、すごい生命力。
「ところでこちらの更地には何をたてるのでしょう」

クリオネが大量に湖に浮いている。

網のようなものですくって片付けるもどんどん涌く。しょうがないので矢継ぎ早に餅焼き網で炙るも、ほぼ水だからなくなっちゃう。全然食べるところがない。全然食べるところがない。どっかいっちゃう。



このアパートは最悪だ。



家賃は安いが一階がカレー屋なので常日頃カレーの匂いに苦しめられ風呂に入ってもすっきりの一切がなし。ネパール人が、いつでもカレーを食べにこいという。カレー屋に座すとナンをお代わりするかしつこくきいてくる。しつこい。あげくのはてにお代わりしたナンも含め全て金を取る(妙に高い)部屋に戻り10回強くジャンプをした。このたびカレー屋が潰れると聞いた。ピ〜ス。店に行くときゃつが今度こそタダでカレーを食わす空になるまで食べろというのでそうする。食べ終わるとネパール人が燃えている。死にそう。どうにも熱いと思ったが香辛料の作用ではなかったのか。なるほど。さっきから「ボーボー」五月蝿い理由も合点した。人が、燃えているが今までの匂いの苦しみを思うと衝撃とすがすがしさが釣り合ってそんなに心が動かないので腰を据えて様子を観察。皮膚が逆立って変色していく過程。ネパール人は何か言いたげに口をパクパクさせていたがそこから泡が溢れだして動かなくなった。三日後カレー屋はなくなった。新しい店ができる気配がないので今ではカレー屋の空き物件に住んでいる。



思い出の縁側が今音を立てて、あの庭に転がっている茶碗は父が生前に陶芸教室で絵付けをしたoh!!犬の、ベーコンいかがですか?完成間近でございます。閉じ込めたおばあちゃん介護無理投げ出し。家族の団らん。




あの土間には見知らぬ猫がよく来ておりました。三本足の猫でございます。それでも、うちはずいぶん辺鄙な場所にありますから主人も子供も猫をずいぶんかわいがってキュウリのぬか漬けやらクリームシチューのあまりやら与えてなつかせていたんです。けれども、ある時長男が手水場で猫の足を一本見つけて。それ以来気味が悪くなって猫が家に近づこうとしても追い出していたのです。それでもみゃあみゃあいいながら家に入ろうとしてくるものだから主人がホウ酸ダンゴをたくさん買ってきて家の周りにずらりと並べてしまいましたの。そうして2、3日もしたら、家の周りのホウ酸ダンゴはほとんど食い荒らされていてしまって、猫もすっかり見かけなくなりましたわ。それはよかったのですけれども、三ヶ月後に主人が事故にあい片腕をなくし、その三ヶ月後には長男が事故で両足を失って、またその三ヶ月後には次男が右手以外全て失いました。さらにその三ヶ月後、長女がダルマになってしまいました。それから今日で三ヶ月目に入ります。




わたくし、なんだか生きた心地がしませんの

本日はこのぼさついた髪の毛をなんとかせん、と美容院に予約を入れることにしました。



私は行きつけの美容院といったようなものがありません。



もう何年も昔のことなのですが国分寺の美容院をいきつけにしていたことがありました。当時は定期的に予約を入れ、美容師さんも同じ方にお願いをしていたのですが、ある日電話をかけると「件の美容師さんは寿退社のためもういません」と言う旨を伝えられました。「ああじゃあフリーと言う形でお願いします」と伝えてカットをお願いしたのですが、その時担当した美容師が「普通はやめる前に担当の客にはやめると伝えて担当の引き継ぎとかをやるんですけど、そういったことはされなかったんですか?おかしいなあ、なかったんだ担当の引き継ぎ」とかいうようなことを言われてなんだそれはよく事情も分からないようなことを言われておかしいなあとか言われても困るし何なんだ、と混迷。気まずさもあり担当の件がうやむやになったまま帰宅し、次回もよくわからないのでまたフリーでお願いしたのですが、施術中に「担当さんとか決めてお願いした方がいいんですかね?」とさりげなく話したら、もうなんともいいしれぬ緊張感というか、指名が欲しい、喉から手が出るほど欲しいという念をグッとこらえながらいかにもさりげなく「そうかもですね〜^^」とあらぬ圧、プレッシャーが背後から迫ってくるではありませんか。
それ以来私はなんとなく美容師の担当とういうシステムが苦手になってしまいあのような「圧」を覚えるくらいだったらもう毎回違う美容室へ行った方がマシ、という結論に達しましたので、髪を切りたいと思ったときはまずなんとなく場所(最寄り駅)を決めて、その後数字を5、とか適当に思い浮かべてググり、5番目に出てきた美容室に電話をして予約をするとかいうようなことをしているのですその都度その都度。少し気に入れば2〜3回くらい通うこともありますが、基本的に固定するというようなことはないのですなんとなく。

ところで私は結構カットが好きです。いや、好きというか、わりとこまめにカットをしないと、染めてもいないパーマもなしの「素毛」は尋常でないほどの「社会不適合感」「引きこもり感」「こなれていない感」「やる気ない感」「地味感」「ダサ感」「空気読めなそう感」等のバリュアブルな 感 を醸し出しますのでもう、やむ を得ずでこまめなカットにより最低限度の社会に混じらせて頂く通行手形を頂戴しているといった次第であって、少し目を離すとすぐに「ウワッ、このスニーカーこんなに汚れてたんだ…現象のヘアーバージョン」のような現象が勃発する事態を避けているのですよ。した。

少し話がそれてしまいましたが、上に記した法則により私は「担当」というしがらみからの自由と言う一点のみに最大限の価値を重んじるというスタイルでの頭髪美容を心がけているのです。頭髪美容一つでここまでの葛藤が生じる精神構造に何かしら難があるのでは…という問題定義がしばし頭をもたげようとします。私はその芽を踏みにじりシティーライフに身を投じているのですが、このスタイルには二点の問題があり、一つに通う美容院を特定しないという性質上毎度毎度チャレンジが発生すると言う点、もう一つは予約時の面倒みがやや強い、という点です。

前回美容院を予約しようとした際、にわかに後述の問題に解決の光が差し込みました。
ホットペッパーの画面にこういった記載が見られたのです。

「当店は予約制ではありませんのでお時間のある際にご自由にお越し下さい」








           ご自由








なんという甘美な響きでしょうか。美容院と言うのは心地よいサービスや清潔感オシャレを提供してくださるという素晴らしい利点がある一方、あまりに多くのしがらみがオシャレという光に濃い陰を落としているのが常でありました。
そのしがらみを拭い去る響き








           ご自由







ご自由。

ご自由という翼を背にオシャレという太陽に飛び立つイカロスとしてのわたくし。

私は意気揚々と、美容院に混雑が見られないことが想定される時間帯を考慮した上でカットへとおもむいたのでした。

ただ、一点誤算がありました。私が羽ばたこうとしていた視線の先に在した太陽はおしゃれではなかったのです。いや、太陽なんてなかった。


駅から徒歩二分。これは不動産やが表記するマジカル徒歩時間ではなく実体としての二分でした。ロータリーを超え、激安スーパー向かいの雑居ビル。曇天。薄曇りの空気に、雑居ビルはいっそう淀んで見えました。一階のテナントは、曇りガラスで中の様子はよくわかりませんが、どうやらフィリピンパブ、軒にはキャバレークラブの看板が連なっております。エレベーターのドアが唐突に「ガイン」と音を立てて閉まる。目的の階にてエレベーターを降りると、無機質な床に材木の破片が散乱していました。磨りガラスのドアからジャージを着たおばさんが出てくる、右ポケットにしまったタバコとジッポライターを取り出しながら…

なぜこの時点で引き返さなかったのか。最大の失敗がここにあります。原因は私自身の抱える「未練」でした。

「どうしても自由でありたい…」

この未練が逆説的に私から判断能力、ひいては本質的な自由さを奪い取っていたのです。自由に目がくらんだ…まさかそんなことにまで欲を絡めてしまうなんて、つくづく人間は業の深い生き物だと痛感せずにはいられません。一度望むものを手中に収めたという幻想に浸ると、欲と言う快楽に取り込まれた脳が他の可能性や視点を墨塗り教科書のように塗りつぶしてしまうのです。
私は盲目に曇りガラスの取っ手に手をかけました。スキンヘッドの中年男性が虚ろといった顔つきでいました。私に一瞥をくれると、言葉もなく右の手のひらを傾けて席に誘導するのでした。ここに至ってとうとう私は自分自身の過ちと、自らが欲に目がくらみ謝った判断を下したと言う事実を自覚するに至りました。ああ、やってしまった。



スキンヘッドはいかにも飾り気のない朴訥なおやじと言った感じでつまり飾り気がない、思ったことがすぐに顔に出る性質、つまりざっくばらんな印象を全身全霊でもって醸し出していたのですが、彼のざっくばらんはこのように訴えかけていました




「シャンプーめんどくせえ…」




まさか、と思われるかもしれません。理髪を生業に生きる人間としては生きる糧の一つであるし、ここは仕事の現場なのにも関わらず。ニュワーな感覚を浴び、かつてない規模のフリーダムに私は尊敬の念を抱きました。彼の姿勢を尊重しつつ、早く帰りたい、この場から離脱したいという打算も込みで、さりげない風を装いながら「あっ、そういえばシャンプーはなしで大丈夫です」と伝えると、彼は「はい」とごくシンプルな返答、そして初めてわずかながらに好意のニュアンスを口の端に零したのでした。

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