私は中学、高校と名古屋の学校に通っていた。

高校3年生のとき、先生が


「名古屋は終わってる」

と言った。

よく意味がわからなかった。







2年後、意味が分かった。






高校卒業後、私は大学受験をして東京の大学に通っていた。

20歳になる年の明けに名古屋の高校から、

成人式パーティーをやるので出席者は連絡をください、と手紙が来た。



私が通っていた高校はお嬢様校っぽい感じで、

大学生になってからも

「医者と弁護士集めた合コンやるよー☆出席者は連絡」

というメールがきたりしていて、

いやー私には意味分からんノリだわ

と思ってスルーしていたので、なにか一抹の不安感というか、

形にならない妙な胸騒ぎのような感覚があった。



パーティー当日


趣味で着付けをしている母に、紅型染めの素晴らしい振り袖を着せて頂いた。

そして晴れやかな気分でパーティー会場である

"キャッスルホテル名古屋"

へと向かった。



"キャッスルホテル名古屋"は名前の通り名古屋城が見渡せる羨望を売りにしたホテルである。


他地域の方には理解し辛い感覚かもしれないが、

名古屋人にとってはオーシャンビューならぬ名古屋城ビューが最高の贅沢とされているのだ。


そして会場であるメインホールには、

華美で豪奢な様を美徳とする名古屋人の感性、

DNAに刻まれた名古屋人の本能に従い、

煌びやかで高級な振り袖を身にまとい歌舞伎町のホステス顔負けの様相を呈する女性、400人が集い、

クンブメラーのガンジスを彷彿とさせるような彩りと混沌の渦、

名古屋人の情念の集大成とも言えるような一つの曼荼羅図が描かれていた。



会場に設置されたクロスをかけたテーブルに、続々とオードブルが運ばれていた。

海老フライやエビのにぎり寿司が華々しく盛りつけられている。

司会が乾杯の音頭をとり終わると、衆目の視線は赤いビロードのカーテンに向けられた。


「名古屋城のご開帳であります!」


この日のクライマックスのシーンであった。

厚いカーテンが左右に引かれると、自然と拍手がわき起こった。

そして観衆は海老フライをつまみながら金のシャチホコを心ゆく迄堪能したのだった。




ここまで分かりやすく見事に型にはまる名古屋…



「終わってるな…」



かつてピンとこなかった先生の言葉が心にしみた。