田中圭さん。去年上演した「江戸は燃えているか」で初めてご一緒した。骨太な中にほど良くブレンドされたチャラさ。それが第一印象。一見、格好いいのかよくないのかよく分からない人で、稽古場でもどちらかといえば、いじられキャラ。ところが格好いい芝居をすると、相当に格好いいので、やっぱり格好いいのだろう。前日のお酒が祟って、ぱんぱんにむくんだ顔で皆の前に現れたことがあった。さんざん共演者にいじられた挙げ句、稽古が終わる頃には見違えるようにすっきりし、涼しい二枚目顔で帰って行った田中圭。つまりはそんな人だ。

 公演中に女優さんの一人が体調を崩してしまい、僕が急きょ代役を務めることになった。その時、舞台上でもっとも頼りになったのが田中さんだ。戸惑う僕をうまく誘導し台詞に詰まると、アドリブでフォローしてくれた。それでいて自分の芝居は完璧にこなす。僕は演技をしながら、(この人に一生付いて行こう)と決意したくらいだ。

 「彼に警官の役をやらせたい」と思ったのは、その頃。愛嬌のある「頼れるお兄さん」顔の田中さん。絶対に警察官の制服が似合うと思った。まだ映画の台本も完成していない時期「どんなに出番が少なくても、僕の映画に出てくれませんか」と頼んだら、「もちろん出ますよ」と言ってくれた。その後、「おっさんずラブ」が始まり、瞬く間に忙しくなったが、彼はきちんと約束を果たしてくれた。

 当初は冒頭だけの登場のはずだったが、熱いけど不満だらけのこの警官、田中さんが演じることを前提に考えたらもっと活躍させたくなってきた。そこで後半、再登場させることに。現場では、田中さんがさらに肉付けしてくれて、警官大関は、プロットの段階からもっとも成長したキャラとなった。

 記憶を失った黒田総理が路上に座り込み、野次馬に取り囲まれる。そこへ現れた大関。携帯をかざす人に「撮ってくれんなっつーの」と一喝。ここだけの話、この台詞は田中さんのアドリブだ。この一言の中に彼は、警官大関の職務熱心さ、そして暖かさを表現した。言葉はぶっきらぼうだが、なんとも優しい「撮ってくれんなっつーの」。

 田中圭、いい役者さんです。