「まったく記憶にございません」は、映画「記憶にございません!」の挿入歌ではありません。映画の中では一度も流れません。言ってみればイメージソングでございます。

 サントラのCDを出すに当たって、何か特典のようなものを作りたいとプロデューサーに言われた。そこで僕が提案し、中井さんに一曲歌って貰うことに。

 中井さんの歌が上手いのは、分かっていた。僕の作演出による「日本の歴史」というミュージカルにも出演している。彼にとって初めての経験だったが、舞台狭しと歌い踊るその姿は、新しいミュージカルスターの誕生を感じさせた。

 そんな中井さんに今回僕は、植木等さんのような曲を歌って欲しいと思った。目指すのは、「スーダラ節」「ホンダラ行進曲」といったハナ肇とクレージーキャッツの楽曲。ボーカル植木さんの伸びやかな歌唱が耳に残る昭和の名曲だ。僕は青島幸男さんになりきって詞を書き、音楽の荻野清子さんは名作曲家荻原哲晶さんにオマージュを捧げた。

 僕と中井さんは同い年で、「ハナ肇とクレージーキャッツ」にはまった最後の世代。お互いにとって、植木等さんはレジェンド的な存在だ。中井さんは、令和の植木等を目指して熱唱。こうして出来上がったのが「まったく記憶にございません」だ。

 サラリーマンの悲哀を歌った内容だが、中井さんのあっけらかんとした歌声が耳に心地よい。令和も平成もまったく感じさせない、昭和テイスト満載の一曲。実は僕もかけ声で参加しています。ここだけの話、僕は植木さんの盟友、谷啓さんの抜けた感じを意識してみました。忘年会、年末の季節。宴会ソングとしてもお勧めなので、ぜひ皆さんも歌ってみて下さい。

 出来ればこの曲で、中井さんに紅白歌合戦に出て欲しい。植木さんのように真っ白なスーツで浪々と歌って欲しい。その時僕も、谷啓さんのポジションで、ついでに佐藤浩市さんも呼んでハナ肇さんになりきってもらい、応援に駆けつけたいと思います。 

「まったく記憶にございません」は映画のサントラに収録されています。公式HPでMVも観られますよ。