月別アーカイブ / 2019年08月

 今回の映画のタイトルは「記憶にございません!」。

 作品タイトルはすぐに決まる時もあれば、なかなかぴったりのものが見つからないケースもある。「ザ・マジックアワー」は台本を書き始めた時、すでにタイトルは決まっていたし、「清須会議」はこれ以外のものは考えもしなかった。

「ステキな金縛り」の時は、ちょっと奇をてらい過ぎな気がして、もうひとつの候補だった「幽霊、都へ行く」とどちらがいいか、スタッフ全員に投票して貰った。実は得票数でいえば、僅差で「幽霊〜」が勝っていたのだが、結局僕の判断で「ステキ〜」に決定。あの投票はなんだったのか、という意見が噴出した。そりゃそうですよね。でも、たぶん「幽霊〜」の圧勝だったら、僕はそっちを選んだと思う。皆さん、ご協力ありがとうございました。 

 今回はかなり悩んだ。初稿の時に台本の表紙にあったタイトルは「魚夫の旅路」。一見、なんだか分からないと思うが、これは古い映画で記憶喪失の男が主人公の「心の旅路」(マーヴィン・ルロイ監督)という作品があって、それをもじったもの。「魚夫」は「トトオ」と読む。主人公の総理の名前だ。なにか付けておかないと落ち着かないので、とりあえず付けたもの。お世辞にもいいタイトルとは言えない。

 決定稿が完成しても、これといったものが浮かばず、こうなったらド直球に「記憶を失った総理大臣」で行こうと思ったこともあった。最後の最後にたどり着いたのが「記憶にございません!」。

 悪くないタイトルだと思っている。内容にぴったりだし、皮肉も効いている。なにしろ記憶に残りやすい。そしてこの映画がヒットすれば、以後、政治家達はこのフレーズを使いづらくなるはずで、ある種の抑止力にもなるではないか。

 ここだけの話、もうひとつ最終候補として残ったタイトルが「忘れたくても、思い出せない」。インパクトの差で「記憶に〜」に破れてしまったが、ちょっとフランス映画みたいで格好いいでしょ。実は赤塚不二夫先生の「天才バカボン」に登場するバカボンのパパの台詞の引用である。

 

 


 いよいよ完成披露試写会である。

完成披露試写会とは、完成した映画を皆さんにご披露する試写会という意味である、たぶん。

 それまでマスコミ向けの試写はあっても、一般のお客様に観て頂くのはこの日が初めてになる。だから完成披露試写会の当日は、いつもそわそわする。果たして皆さん、楽しんでくれるのだろうか。最後まで席を立たずに観てくれるのだろうか。監督としては不安と緊張が頂点に達する日だ。

 そのせいだろうか。今回は八本目の映画だから、完成披露試写会は今まで七回やっているはずなのに、ここだけの話、ほとんど覚えていない。そわそわがほぼ一日続くものだから、どんな場所でどんな人たちとどんなイベントを行ったのか、脳裏にまったく焼きつかないのだ。まさに記憶にございません状態である。

 唯一はっきり思い出として残っているのが「ステキな金縛り」の時。あの日は台風が東京を直撃し、会場がガラガラだった。あんなに淋しいイベントは人生初。でも、お客さんがほとんどいなかったので、こっちも気が楽だったのだろう。この日のことははっきり覚えている。

 役者さんも舞台挨拶があったりで本来は緊張するものだが、あの時は、主演の深津絵里さんも西田敏行さんも完全リラックス状態。少ない観客を前に僕は彼らと爆笑トークを繰り広げた。

 「こんな大雨の中、今日、ここに来て下さったお客さんの顔を、僕は一生忘れません」と僕は挨拶を締めくくった。拍手して下さった一人一人の皆さんの顔を、残念ながら今はまったく思い出せないが、感謝の気持ちは今も決して忘れてはいません。ありがとうございました。

 そうそう、あの時は宣伝活動の一環で期間限定のツイッターをやっていて、初めての経験だったから調子に乗ってしまい、「雨なのにリビングの窓を開けたまま出て来てしまいました。心配だ」とツイート。今頃、東京中の泥棒があなたの家を狙っていますよと、スタッフに脅かされ、慌てて削除したのを覚えている。これも懐かしい思い出だ。


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