吉野家の役員を務めている人間にもかかわらず、有料の社会人向け講座で下品なジョークを飛ばし盛大に世間から批判と非難を浴びたということが先日ありました。ただ、本気で怒っているのは吉野家の社員と株主で、世間の人々は内心その役員の追放劇を面白がっていたり、あるいはどうでもいい、日本のオッさんなんてそんなものじゃん、と感じているはず、私はそうです。ちなみに私はコロナの世の中になって以来営業外回りを一切していませんので(顧客の多くが医療関連なので)、昼食をさっと済ませたいときにたまに行っていた吉野家はじめ牛丼屋にも長らく行っていません。
この話で引っかかるのは、その講座の受講者がわざわざその発言をネットに上げて世間に広めたという行為です。有料の講座でこのクォリティには納得がいかない、お金返せ、とその場で抗議するのはやって然るべきでしょうけど、暴言を耳にしたからといって日本中に言いふらすのはやりすぎではないでしょうか。国会で議員が問題発言するのとは違う、アナタがポンコツ講師によるポンコツ講座なんかに高いお金を払って腹が立っただけの話、各種メディアの力を使ってまでやっつけるべき対象なのか、大企業である吉野家のその役員はかなりおかしいですがこの社会のメディアスクラムによる一斉非難も少し危ういのではないかなと私は思いました。
吉野家という企業について私が思うのは、もっとテレビなどのメディアと上手く付き合っていたのにな、ということです。20年近く昔のことですが、狂牛病により米国産牛肉の輸入が止まり、それに伴い米国産牛肉を使っていた吉野家が牛丼の販売をやめました。吉野家は米国産牛肉でないと美味しい牛丼が作れない、豪州産や国産ではダメなんですとか言ってましたけど、本当は米国産が一番安いだけのこと(国産の方が不味いなんてないはず)、それを逆手に思い切り被害者の立場を取って悲劇の牛丼屋というストーリーを作ったんだと思うんですよね。で、米国産牛肉が輸入再開しめでたく牛丼が再開した日、吉野家には開店前から待ちきれないお客さんが列をなしています!ということをテレビ局は挙(こぞ)ってニュースとして報じました。牛丼なんてそんなに食べない私はなんじゃそれと思いましたが、そして翌朝の新聞には吉野家の全面広告、そりゃあ吉野家にはテレビも協力しますよね。…そんな協力関係にあった吉野家とマスコミだったのに、今回の吉野家のメディアからの責められっぷりはその関係性の変化を感じました。外食産業はマスコミにCMという献金をしておかないといけないという教訓を得たことでしょう。
でも実は私としては吉野家の「炎上」なんてさほど興味はないんです。というのも、全国的には大きなニュースになってないですが、私がよく買い物に行く旦過市場が、火事で大変なことになってしまいまして今後が心配、本当にたかが牛丼屋の吉野家なんてどうだっていいんです。旦過市場の「炎上」の方が心を痛めている人は多いはず、ニュースとして本当に報じるべきことはどっちの「炎上」か、マスコミの皆さんに聞きたいところです。