今から20年前、私が20代後半に勤めていた会社は地図の出版社で、本社は東京でしたが関西の営業所に所属し、私は書店を回って主に道路地図を売り込む営業をしていました。まだカーナビが普及しておらず、地図自体に需要はありましたが、なんせその出版社の地図は人気がなくて、売れやしない、でも会社は売上を立てろという…ならばとやっていたのは出版物ならではの特性を生かし、古いのを返品してもらって新しいのと入れ替えて見せかけの売上一丁上がり、虚しい仕事でした。
そんな仕事でしたが、東は岐阜から西は兵庫まで、だいたい新幹線のルート沿いエリアを私は担当してました。営業は主に車で移動でしたが、移動中はいつもラジオのAM局を聴いていました。CDやFMは聴けない営業車でしたが、仮にそれらが聴けたとしても、たぶんAM局のラジオ番組を聴いていたと思います。なぜなら関西圏のAMラジオ番組は面白かったんですよね。そんなAMで私が1番面白いと思っていたのは、上沼恵美子のこころ晴天、という番組でした。大阪のおばちゃんの飾り気のないおしゃべりがそのまんまというのがむしろ新鮮に感じる、オモロい人やなあ、関西風に言うとそんな感じでした。辛口や毒舌が嫌味にならないという雰囲気が上沼氏にはあるんですよね。関西圏以外の人にはあまり馴染みがない人かもしれませんが。
時は流れ、私も勤め先が変わり住まいも変わり、東京ではラジオをさほど聴く機会もなく…そして独立し比較的気ままに働けるようになり、事務所のパソコンでラジオを聴きながら仕事をすることもあります。いまラジオはラジコというアプリで聴いています。月額350円払っていますが、これで全国のラジオが聴け、そして最大のメリットはリアルタイムではなく後から聴けること、つまりCMとか交通情報とか聴かなくてよいパートは飛ばせることです。
そしてなんと、上沼恵美子のこころ晴天は今でも番組が続いてまして、私はまた聴いています。上沼さんも歳を取ったなあと思いつつもオモロいおばちゃんには変わりないですが、ちょっと時代の流れについていくのがしんどそうで、本人も冗談めかしてはいますがもう引き時やわ、なんて言っています。そんな上沼氏ですが、このたびネットでも出ていましたが、そのラジオと他のテレビ番組で共演していたお笑い芸人と何やら揉めてしまい、その彼が番組を降板してしまいました。ラジオを聴いたことがない人はこのトラブルをむしろ楽しんでやいのやいの言うでしょうが、ラジオ番組を楽しんでいたリスナーとしてはただ寂しくて悲しい、仲の良かった人間同士が離れてしまうのを見ることは辛いものですね。形あるものは必ず無くなると言いますが、人間関係もまた形あるものの一つに過ぎないのか、私たちの人生は無くなってしまう虚しいものばかりなのか…そんなことを考えました。