この春、いろんな予定が世の中からなくなりました。私個人でもいくつかありますが、その一つ、4月上旬に妻(社長)の実家の皆と潮干狩りに行くつもりでした。その潮干狩り場所は長崎県諫早市の小長井(こながい)といいまして、これまで何回か行ったことがあります。おもに採れるのはアサリなんですが、魚介類のことに興味がある私、その潮干狩り場が大人1人1000円と有料であること、周囲にアサリを育てているらしき区間があることから、ここのアサリの素性が気になって最近少し調べてみました。
諫早市と聞くと、かつてニュースや新聞を賑わした諫早湾干拓事業の話を思い出す方もいると思いますが、あの映像で大きな印象を残した、ギロチンなどと呼ばれた鋼鉄の板はもうなく、いまは土手のような感じになっていて、道路が走っています。…その干拓事業に最後まで反対したのが実はこの小長井の漁協です。干拓事業の是非についてはもはやよくわかりませんが、諫早湾干拓により有明海の魚介類が珍しい種類含めて各種沢山死んでしまい漁業に悪影響を招いたらしい、という漠然とした認識が日本に定着しました。私はこの干拓のひとつの誤りは、川を堰き止めて干拓地とそれに伴う調整池を造ったことではないかと思います。有明海にはいくつもの干拓地がありますが、川を堰き止めた例は他にないはずです。海を埋め立てることも自然の大きな改変ですが、川を堰き止めるのは技術的に出来るからといってやり過ぎ、生物への影響が大き過ぎると私は思います。そして干拓地で作られているのがトマトやキュウリだとか、それがどんなに美味しくても、いろんな問題起こしてまで作る作物だったかと誰しもが疑問に思うでしょう。
ただしですよ、諫早湾干拓が行われたのは1990年頃、有明海への人間による工事類としては後発のもの、つまりそれまでにも有明海に面する佐賀、福岡、熊本でも干拓したり工事したり、田畑から河川経由の農薬の流出、海苔養殖業のやり過ぎ等、魚介類の生存へ悪影響をもたらすことをいろいろ人間はしています。有明海がいよいよ悲鳴をあげはじめるタイミングで、諫早湾干拓が行われた、それを政治家やマスコミが騒いで問題を殊更に大きくしてしまったという…つまりは有明海をさんざん痛めつけた挙句に有明海を守ろうなんて、遅過ぎるんですよね、私たちは。
結局、干拓によりアサリの生育・漁獲にも悪影響があるとして、小長井漁協はアサリ養殖業において補助金を行政から受け取っています。つまりこの潮干狩り場のアサリは天然そのままではなく、このあたりで天然に獲れるアサリの稚貝を補助金により小長井漁協が大事に育てており、それをまた私たちがお金を払って潮干狩りというレジャーを楽しんでいるわけです。こう考えると私たち人間は、これまでずっと他の生物の生息地を荒らしては保護したり、人種差別をしてはデモしたり、政治家がお金の力で選挙を勝とうとしたりしてはやり直したりしています。そして結局は根本的解決には至らず、そのうちまた同じあやまちを繰り返す…せめて私は悪いことをする側にはならないでおこう(現代人は環境問題においては誰しも無罪とは言えないでしょうが)と思うとともに、小長井での潮干狩りは今後ちょっと複雑な気分、現代は何事も白黒はっきりとしないものだなと思わせられました。